映画『星の旅人たち』をみる
これ最高の作品でした。
どれくらい最高だったかというと、この作品をみるためにアマプラ年額払ってもいいレベル。
もうちょっと落ちついてから冷静に検討したいけど、Blu-rayが欲しいです。
流血なし、暴力(ほぼ)なし、性描写なし。
もうそういう過剰さ、いらないんですよ。
ちょっと頑固な初老紳士がひたすら仲間たちとヨーロッパを旅する。
おだやかな展開のなかにも旅あるある満点で、いつかサンチャゴの道を歩いてみたくなる。旅したくなる。日本でいうとこのお遍路さんか。歩きでまわりたくなる。
劇中にも話にあったけどパウロ・コエーリョ著『星の巡礼』ってこんな風景だったんですね。
学生時代に『アルケミスト』で感激して、そのあと読んだ『星の巡礼』はもっと埃っぽくてグレーな世界のイメージでした。
わりとスピリチュアル系の話でしたね。
黒犬が主人公をずっと追いかけてきて、黒犬が何かの象徴なんですよね。悪魔とか。
黒い犬ってそれまで実物にあまり遭遇したことなくて、『星の巡礼』を読んだ後、当時の恋人の家に遊びにいったら、真っ黒のラブラドールがいてめちゃくちゃ怖かった。
しかもその子がお利口過ぎて、玄関⇔リビング何度もスリッパを得意げに運ぶんですよ。スリッパよだれだらけで。
で、ご褒美のおやつをねだるときに尻尾ブンブン振って、それが僕の足に鞭のようにバシバシ当たってさらに怖かったです。
そのワンコは不吉どころか、めちゃくちゃいい子でした。
旅がテーマといえば『イントゥ・ザ・ワイルド』。ネタバレ注意。
あの作品は90年代のアメリカ。インテリの青年が父の不倫、両親の不和のなかで育ってこじらせちゃって、資本主義このヤローって脱物質主義でアラスカ目指すんですよね。
主人公の放浪は親への反発もあって、彼が大学卒業後ふいと消えてしまう。
両親は息子が心配で心配で段々おかしくなるんだけど、息子はそんなこと知らずにアメリカメキシコほっつき歩いて冒険を楽しんでいるという。
でも結局、アラスカへ向かう途中、毒草を食べてしまい死んじゃう。
イントゥザワイルドは何度もみたんだけど、やっぱり今まで子目線でみていて、主人公よりに感情移入していました。
が、今回の『星の旅人たち』は親目線なんですよね。
40過ぎた息子が突然学校やめて世界を旅し出した。
開かれた世界をみたいのと同時に、親への反抗もあったっぽい。
でもサンチャゴの道の冒頭で嵐に巻き込まれて息子は亡くなる。
その連絡を受けてカリフォルニアの父は即ヨーロッパへ。
息子のリュックを背負い、遺灰となった息子とともに800キロの巡礼の旅を歩き出す。
初老の父は寡黙でちょっと偏屈で、でも旅のあいだずっと、ずっと息子を想っているんですよね。いたるところに今は無き息子の幻をみる。
親の愛ってありがたい。
この映画をみながら自分を振り返って両親に対して特に何もしてあげられてないけど、とりあえずこの年までなんとか生きてこれましたよと。
それだけでも孝行なのかもしれない。勝手に押し付け孝行息子な気持ちになりました。
僕は親にはなれなかったけど、親として子どもを育てている人、もうほんと親の愛は偉大です。尊敬です。
ドカンバコンズゴーンっと、少年ジャンプみたいな音が飛び交う作品よりも、ゆったりと黙々と巡礼の旅を歩きつづける寡黙な作品のほうが、時として雄弁。感想書く文字数もふえる。
幾つになっても旅に行きたくなる作品です。
into the wild、アマプラでも他サブスクでもみれない。いつまで経っても。
サブスク解禁になってって聞いたことありません。
Amazonのレビューをみると、この作品も熱烈なファンが非常に多い。
僕は当時、映画館でみて、全身がカッと熱くなって、その後レンタルでみて、ディスクユニオンで中古DVD買って、今でもときおりみています。
こういう熱量高めだけど万人には刺さらない作品は廃盤になる前にはやめにソフトを購入しておいたほうがいい。
いまサブスクでみれたとしても油断しないで買っておいたほうがいい。
じゃないと、いつまたみれなくなるかわからないから。
そのことをinto the wildから学びました。
内容自体は厨二病っちゃ厨二病なんだけど、旅の解放感や大自然の描写、そしてヒトは賢くても自然を前にしちゃあっという間にくたばっちゃう、そういうことひっくるめてうねりになって全身に飛びこんでくる、そんな作品です。