夢百夜(14) ヘビ女を追いかける赤いバイク。香港島ビクトリアハーバー方面へ。黄金のトラムを追いかけて。
(けさみたとれたての夢です。2分でよめます)
ヘビ女がテレビに出ている。
黒髪で真っ白な肌。
目は切れ長でわずかに微笑みながらインタビューを受けている。
彼女は「定期的に真っ白な大きなヘビに飲みこまれてます」と、
ちいさな声ではなす。
ゆっくりゆっくりとヘビの体内に飲みこまれていく。
そのあいだまるで冬眠した気分だという。
またヘビのからだのなかはひんやりとしてしていて、まるで胎内にかえってきたきもちになれるとはなす。
彼女はやがてヘビが彼女を消化するための分泌物でベトベトになる。
その分泌物を全身に浴びて彼女の肌の老廃物はとけてしまう。
「まるで自分のからだが透明になっていくような気分です」
彼女はインタビュアーに笑ってこたえる。
そしてそのままへびの体の中で消化されてしまう直前に彼女はへびの腹をつきやぶり、はいでてくる。
まるでうまれかわったようなすきとおった肌で。
そのインタビューをぼくたちはリビングのテレビでみている。
「なにが生まれかわるだ」
「インチキ女め」
その男はつぶやく。
ぼくの友人だ。
ここは香港のマンションの一室。
1LDKほどのせまいつくり。
天井にポトスが育てられていて、室内はブラウン系で統一されていて、なかなかおしゃれな空間だ。
「さて、どうする?」
男はぼくにたずねる。
ぼくにたずねる、というよりも、自分自身にきいてるみたいだ。
そして男のなかでは、その答えはすでに決まっている。
そう直感でわかる。
へび女を追いかけるのだ。
彼はテレビをみてるふりをしながらぼくの答えを待っている。
彼は自分のすむこの部屋を自慢に思っている。
ここまでの内装にコーディネートするまで、時間も費用もじゅうぶんかけてきた。
ただ、天井のポトスは最近、成長しすぎたらしい。
彼は自分の髪の毛にさわるポトスを何度も払いのけていた。
「で、どうする_」
男は再度ぼくにたずねた。
すこし苛立った声で。
(春樹風に)やれやれ。これからぼくはこの男といっしょに、ヘビ女を追いかけなければならないらしい。
ぼくたちは赤いちいさなバイクに乗り、香港島のビクトリアハーバー方面に向かっていく路面電車トラムを追いかけている。
色あせた赤や青のトラムが行き交うなか、ぼくらが追いかけるトラムは黄色、というより黄金色のように光り輝いている。
あのなかにヘビ女がいる。
ぼくたちはちいさな赤いバイクに乗って、必死でその黄金色のトラムを追いかける。
香港の道路はバイクと車と人でごった返している。
ぼくの前で赤いバイクを操る男の運転も相当あらい。
男はフルスロットルでアクセルをまわすが、メルセデスや、テスラや、スクーターが目の前に飛び出してきては急ブレーキをする。
ぼくたちののる赤いバイクは急ブレーキとアクセルでまるでロデオ状態。
ふたりとも振り落とされないように必死だ。
ぼくのまえの男はそれでもアクセルをまわしつづける。
まわせばまわすほど、目の前に車やバイクや人が飛び出してくる。
目の前に飛び出してくる運転者や通行人はみな、サングラスをかけて髪の毛を後ろに固めたスーツ姿の男性。
ぼくらの嫌な予感は的中したようだ。
そう、この街はすでにヘビ女によってコントロールされている。
ぼくらが彼女を追っていることも確実にバレている。
彼女を追えば追うほど、追手はふえていく。
ぼくの前の男がヘルメット越しにこうつぶやいた。
「どうやら俺たちはヘビ女の腹のなかにきちまったようだ」
きょうの作品
まじかる☆タルるートくん。
ぼくが小学生だったときのジャンプの連載。
魔法の国からやってきたタルるーとくんのほか、基本ドラえもんみたいな設定。でもちょっぴりエッチ。
小学生だったとき何冊か単行本をもっていて、風邪をひいたときふとんのなかで読んでたのを思いだす。。
なつかしくて今回全巻まとめ買いしました。
ただいまセール中。
新刊はいりました!