生成AIを使って、30分程度で新規事業アイディアを考えてプレゼン資料まで落とし込む方法
前置き
こんにちわ。リョージといいます。
サービスデザインの視点から新規事業を創ることにこだわって活動しています。
プロフィールはこちらです。
仕事柄、日々新規事業アイディアを考えることが多いのですが、このAI時代、アイディアっていくらでも量産できますよね。むしろ重要なことは「アイディアの目利き力」と「アイディアを形にする実行力」だと考えています。
アイディアを量産してテーブルに出す行為そのものは、昨今生成AIを活用することで、少なくとも”量的”な部分は担保されます。
よく「みんなで集まって新規事業アイディアのブレストをしましょう〜」みたいな1時間でたいしたアウトプットが出ない会議が設定されることがあります。
これ自体はいい面も悪い面もあるため完全否定はしませんが、表題の通り、30分でプレゼン資料まで作れるこの時代に、ゼロベースで大人が雁首揃えて「うーん・・・」と頭を捻らせることはナンセンスです。
事前にテーマやキーワードを生成AIに渡し、せめて10個ぐらい方向性の違うアイディアを持ってくるだけでも議論が加速します。
こんな数分で誰でもできることは今すぐやるべきです。
・・・と、少し煽りを入れたところで、今回は超スピードで生成AIを使って0から新規事業アイディアを定め、そこからプレゼン資料に落とし込むそのプロセスを書きたいと思います。
なぜ、プロセスを公開しようと思ったかですが、色んな人と生成AIの使い方について話すと、ベースとなるプロンプトよりも、それを受けてどんなやり取りをして最終アウトプットまでもっていくのか、といったラリーの部分への興味関心が強いな、と感じたためです。
今回活用した生成AIサービスは以下です。
Claude
https://claude.ai/
Perplexity
https://www.perplexity.ai/
Gamma
https://gamma.app/ja
※Claudeに関しては、ChatGPTなど他のLLMサービスでも問題ありません。ただ、僕がClaudeのほうが好みなだけです。厳密には何を依頼するかで各LLMサービスの得意不得意は変わります。
※Perplexity、Gammaに関しても代替手段はあるので、必ずこれを使わないといけないわけではありません。
0. 実現方法
今回の資料落とし込みの方法を簡単に書いてしまうと、
・Claudeとやり取りしてアイディア決定
・適宜Perplexityを使ってリサーチ
・まとめた内容をGammaでスライド化
実際やってることはこれだけです。
1. 準備
Claudeに「新規事業アイディア一緒に考えて〜」とかラフに始めてしまうよりも、ある程度プロセスやルールを定めるほうが良いです。
今回は事前に以下のようなPromptを定め、ClaudeのProjectsのInstructionsに設定しておきました。
ここで設定したプロセスは、新規事業アイディアを定め、PoC計画を策定するまでに必要なことを大体網羅しています。
もっとチューニングできることはわかっていますが、体感的に特に問題無かったですし、何ならこのPromptはClaude自身が作っているので、そのまま利用しています。
なお、Perplexityも横断的に利用するため、Prompt内にそのような記述が含まれていますが、これはユーザーが外部から情報を取ってくるタイミングをClaudeが認識しておくために記述してると思っています。(無くてもいい)
# 役割設定
このプロジェクトを遂行する際は、「新規事業開発のプロフェッショナル且つ生成AIに精通している人」として振る舞うこと。この役割は以下の特性を持つ:
- 新規事業開発の各段階に関する深い知識と経験を有する
- 生成AIの特性、強み、限界を十分に理解している
- AIツールを効果的に活用しつつ、人間の専門知識や直感を適切に組み合わせられる
- 革新的なアイデアと実践的なビジネス感覚のバランスが取れている
## 目的
生成AIを活用して、新規事業のアイディア出しからPoCの策定までを数十分で完成させる。
## 方法
1. Claude, Perplexity等の複数の生成AIツールを活用する。
2. 以下の13ステップを順番に、step by stepで内容を定める。
3. 各ステップは、前のステップが完了してから次に進む。
4. 最終的に全13ステップの内容を、資料として整理しやすい形式でまとめる。
## プロセス
1. 事業機会の選定
2. 市場環境調査 / 競合分析
3. ターゲット / ペルソナ設定 / TAM/SAM/SOM
4. 顧客ニーズ、インサイト調査
5. 優先課題、ニーズの特定
6. コンセプト立案
7. バリュープロポジションの策定
8. ステークホルダー分析
9. ビジネスモデル(簡易収支予測含む)
10. 規制環境の確認
11. 成長戦略の立案
12. 検証すべき重要な仮説の特定
13. 実証実験計画(PoC)の策定
## 各ステップでの作業指針
- 各ステップで、適切な生成AIツールを選択し、明確なプロンプトを用意する。
- AIの出力を批判的に評価し、必要に応じて専門知識に基づいて修正・補完する。
- 各ステップの結果を簡潔にまとめ、次のステップへの入力として使用する。
- 時間管理を意識し、各ステップに適切な時間配分を行う。
- 新規事業開発のプロフェッショナルの視点で、各ステップの質と深さを確保する。
## 最終成果物
- 13ステップの内容を網羅した、構造化された文書
- 各セクションは簡潔で明確な記述を心がける
- 図表やチャートを適宜使用し、視覚的に理解しやすい形式を心がける
- 次のアクションや意思決定に繋がる、実用的な内容であること
- 新規事業開発の専門家が作成したと認識できる質と深さを持つこと
## 注意事項
- AIの出力は常に批判的に評価し、専門知識や経験に基づいて判断する。
- 生成AIの特性を理解し、その強みを活かしつつ限界を補完する。
- 倫理的・法的考慮事項に十分注意を払う。
- 時間効率を重視しつつも、重要な決定や創造的な部分では十分な思考時間を確保する。
- プロセス全体を通じて一貫性を保ち、各ステップ間の整合性を確認する。
- 新規事業開発の現場で実際に使用できる、実践的な内容を心がける。
このプロジェクト指示に従うことで、生成AIを効果的に活用しながら、短時間で質の高い新規事業開発プランを作成することが可能になります。常に新規事業開発のプロフェッショナル且つ生成AIの専門家としての視点を保ちながら、各ステップを遂行してください。
2. アイディア決め
では早速、自由なProject名を設定して、Instructionに上記のPromptを設定したら、早速事業アイディアを決めにいきましょう。
今回まず僕は「認知力」からブレイクダウンしていこうと思っています。
↓このようにInstructionsに設定しておけば、いきなり会話から始められます。
認知力という広いテーマを雑に投げかけ、そこから絞るための材料を提示させます。
この段階で何が決まるわけでもないので、自分が興味のあるテーマをただ選びます。
このスピードが大事です。
そうすると、以下のようにアイディアを数十秒で出してくるわけです。これは人間にはできない。
しかし、普段から使ってる人は上記を見て気付くと思うのですが、生成AIはいつも”ちょうどいい感じの新規事業案”を提示してきます。
生成AIが出してくる事業案の多くは、これから先の未来に想定される技術革新をターゲット、場、カテゴリなどに掛け算させた案に過ぎず、驚きや新規性という部分においては正直弱いです。
1分でこのリストが出てくることはすごいですが、どれも「確かにそれもあるか」という想像の域は超えてきません。
ただ、これは適当なブレストではすぐに出てこない情報量ですし、重要なヒントが潜んでいる場合があります。
上記を参考に少し自分なりの考え方で微調整をしてみます。
そうすると、少し調整してビジネスマン向けのアイディアを出してきましたが、意外と面白いです。
個人的にペンを使う行為自体はむしろこれから注目される可能性があるなと思っているので、アイディアを絞ります。
このコメントを受けて、Claudeが出してきた案は本当のノートブック案でした。
本当のノートブック案はちょっときついので、iPadアプリ系にシフトさせます。目論見としては、アプリを作ること自体ではなく、書き込みを学習、モニタリングしてアウトプットを出せるエンジンが作れると、他社サービスへの提供なども可能になるかなと。
その結果出てきたアイディアのまとめはこちらです。
# SmartScribe AI: インテリジェント デジタルノートシステム
## コンセプト概要
AI搭載スマートペンとタブレットアプリケーションを統合した、ビジネスマン向けの高度なデジタルノートシステム。認知機能の維持・向上と生産性の向上を同時に実現。
## 主要コンポーネント
### 1. 高精度センサー搭載スマートペン
- 筆圧、速度、角度などの詳細データ収集
- タブレット画面上での手書き入力対応
### 2. タブレット用高機能アプリケーション
- 自然な書き心地を再現する高度なパームリジェクション技術
- 無限キャンバス機能
- 多様なペン、マーカー、ハイライターのシミュレーション
### 3. AIパワードクラウドプラットフォーム
- リアルタイムの手書き認識とテキスト変換
- 高度な内容分析、キーワード抽出、関連情報提案
- クロスデバイス同期
### 4. インタラクティブな認知機能トレーニングと評価
- 日常的な書き込みパターンからの継続的評価
- ゲーミフィケーションを取り入れたパーソナライズドトレーニング
### 5. ビジネススキル強化ツール
- AI支援によるアイデア整理、マインドマッピング
- プレゼンテーション作成支援、ストーリーテリング強化
### 6. 拡張現実(AR)統合
- 手書きメモやスケッチのAR 3D表示
- 空間的思考と創造性の促進
## 主な利点
1. デジタルの高機能と自然な書き心地の両立
2. 高い携帯性とクラウド連携による柔軟な作業環境
3. AIによるリアルタイム思考プロセス分析と創造性強化
4. ビジネスパフォーマンスと認知機能の同時向上
5. 長期的データ分析による認知機能変化の早期検出
6. マルチモーダル入力対応による多様な思考スタイルのサポート
## 拡張機能とビジネスモデル
1. 段階的サブスクリプションモデル
2. 業界別特化コンテンツ
3. チームコラボレーション機能
4. サードパーティ開発者向けAPIプラットフォーム
5. エンタープライズソリューション
どうでしょうか?
この案が本当にいけるかどうかはありますが、昨今のドキュメント作成やUI制作サービスの進化を見ていると、きっと手書きレベルでも補完してくれるサービスは増えるし、手で書く行為自体をモニタリングするとその人のパフォーマンスや認知状態の把握に繋がる可能性はありますよね。
3. 各プロセスのアウトプット
さて、今回の目的は最終的な資料化なので、ここで止まらずに次のプロセスに進みます。
少しプロンプトチューニングが必要ですが、つまりPerplexityに何を聞くのかを出してもらっています。
ここで僕はPerplexityに移動してやり取りをして、その結果をまた持ってきます。
Claudeはマジメなので、さらにこのあたり調査しろと言ってきます。
なぜか僕がお使いのようにPerplexityに行きます。
多少納得したらしいので次のステップに進みます。
本来はもっとリサーチが必要ですが、こんな作業はあとでいくらでもやれるので後回しです。
このようにプロセスに沿ってやり取りが進み、最初のプロンプトにある通り、最終的にPoC計画まで作ります。
これ以上同じようなキャプチャを貼っても仕方ないと思いますので割愛しますが、それぞれのアウトプットに対して気になる部分があればツッコミを入れて調整するアクションを取っていきます。
それぞれの項目については全てartifactsでアウトプットしておくと、あとで振り返りやすいです。
4. ピッチ資料生成
さて、最終的にPoC計画の策定まで終わったら、ここからは資料化に向けて全てのアウトプットをつなげて、一括で提示します。
これまでのやり取りをまとめているので全部で1047行になってますね。
この内容をartifactsを使って投資家向けピッチ資料にしろという指示を出します。
エモさはないですし、やけにシンプルではありますが、言いたいことは網羅されています。
ここで終わりにしてそのままartifactsを公開する形で使ってもいいかもしれません。以下、実際に公開してみます。
これでも内部で使うには十分ではありますが、どうせならスライドにしたいですよね。
そこでGammaを使います。
5. Gammaでそれっぽいスライドに
Gammaにはどんな形式でも投げ込めるのですが、今回は各パートで作成したaritifactsの一部をGammaに読み込ませます。
以下は、GammaにClaudeのartifactsでまとめていった各パートの内容を投げ込んで作成したスライドです。
粗さはありますが、ラフなプレゼンなら十分な仕上がりです。
※長いので一部を貼っています。
どうでしょうか?
先程のartifactsよりは少しプレゼン資料っぽくなりましたね。
内部ブレストなら十分です。
まとめ
このように、(30分は言い過ぎかもしれませんが)短い時間である程度のアウトプットができます。
今回、ついついプロセスの話になってしまいましたが、重要なことは、最初に書いた通り、「アイディアの目利き力」と「アイディアを形にする実行力」です。
個人的に、今回のアイディアはやり方によっては可能性があると思っています。
理由としては、これからブラインドタッチも必要なくなると思っている部分もあり、それは以下の記事に書いているのでよかったら見てください。
新規事業の企画、進行や、生成AIを活用した取り組みなど何かあればご相談ください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。