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エッセイ:祈りのような

僕は制作のなかでもとりわけ
チェーン作りが好きだ。

作るというのは、一コマずつの成形から、
組み上げ、磨き、仕上げ、フックなどの金
具作りまですべて。

チェーンは卸業者でもたくさん扱われてい
るため、そこから選んで改良したり、組み
合わせを変えることで新しいデザインを考
えていく方が早い。圧倒的に。

そういった市販されているチェーンになん
の改良も加えず自社の刻印をつけただけで、
製品化するところも少なからず存在する。

それでも自分の手作業でつくることにこだわ
るのは、僕のコンプレックスから来るものだ
と思う。

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僕は昔から手先が不器用で、
なにかを習得することに人よりも多くの
時間を必要とした。

そしてなにかをしているときには必ず傍に、
恐ろしいほど器用で、ものすごく早い速度で
進んでいく仲間がいた。

それも非常に高いレベルの成果物を出すもの
だから無常だ。

無常とまでは言わないが、本当に何故かそう
いう人が身近にいた。

基本的に人ができることは自分にもできると
思っているので、できるまでやってきた。
これからも。

そういった小さな成功の積み重ねが今の僕で、
小さなコマのひとつひとつの組み上げはこれ
までの自分と重なるように感じるのだ。

ただの輪をたくさん繋げるだけで、
とても美しいものになる。

一見地味なものでも、続けていくとつながっ
てなにかに成る。

そんな可能性を、手巻きのチェーンから感じ
るのである。


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