ブータン旅行記番外編 ブータンのおすすめ本
前回まででブータン旅行記をお届けした。今回は番外編として、ブータン旅行をする前や、そもそもブータンをよく知るのに役立つ本を紹介したい。1つの視点ではなく、様々な視点からブータンを見ることができように選んだ。すべて身銭を切って読んだ本で、自信をもっておすすめできる本だ。
ブータンで長年働いた人から見たブータン
ブータンを知るために、まず一番先に読みたいのは、西岡京治さんの本。ブータン人も知っている日本人。1964年から1992年まで28年間ブータンに滞在し、ブータンの農業発展に大きく貢献した方。その功績をたたえられ、ブータン政府からダショー(政府高級官僚)の位を授けられる。ブータンに行くのに西岡さんを知らないで行くと、ブータン人から白い目で見られる、かも。
西岡京治さんは1933年、当時の朝鮮、京城(現在のソウル)で生まれた。そのため京治と名付けられたそうだ。西岡さんと親交のあった小方全弘さんの著書『ブータン素描ー美しきヒマラヤの王国ー』では、西岡さんが高校の先生を辞めてブータンに移るのに相当に苦悩したことが書かれている。
今枝由郎さんは1981年から1990年までブータン国立図書館の顧問をされた方。ブータン関連の書籍の翻訳も手がけている。
研究者から見たブータン
信頼性の高いブータンの情報を知るには、研究者が書いたブータンの本を読むのがいい。
中尾佐助さんは植物学者で1958年に日本人として初のブータン公式訪問をした方。中尾さんの著書もおすすめ。当時は車で進めるような道路はなく、インドのカリンポンからブータン国境に入った後は馬を使って進んだ。樹海を通るなかで、木の上から大量のヒル(蛭)が落ちてくる場面には悲鳴を上げること間違いなし。
かつてインドはイギリスに支配されたのに、ブータンは侵略されなかった理由が分かるというもの。飛行機でブータンに行けるなんて、いい時代になったものだ。
短期滞在者から見たブータン
短期で旅行した方や約1年以下で滞在した方が見たブータン。私たちに近い目線でブータンを見ているので、親しみが湧きやすい。
高野秀行さんのはっちゃけぶりは呆れを通り越して清々しい。
ブータン人から見たブータン
ブータン人から見たブータンを知る、というのもブータンを知るには必要な見方。『虹と雲』の著者、ドルジ・ワンモ・ワンチュックは4代目国王と結婚した王妃で、本書は彼女の父親ウギェン・ドルジが語ったもの。彼は、自国の不都合な面も勇気をもって語っており、彼のような勇気ある人には尊敬を覚える。
※『虹と雲』は古本から買うと安く買える可能性あり
ブータン偉人伝から見たブータン
ブータンを歩いていると、キンレイという名前をよく聞く。このキンレイという名前はブータンで最も人気のある僧侶の一人、ドゥクパ・クンレー(1455~1570)からとったもの。行動が型破りなお坊さん。日本で言えば、一休さんの名で親しまれている一休宗純のような人。形式主義が大嫌い。
バターの独創的な使い方には笑い転げる。バターにそんな使い道があったとは。
ブータン国王と交流がある日本人から見たブータン
西水美恵子さんは元世界銀行副総裁という立場からブータン国王と直接交流があり、国王の言葉を伝えてくれる。彼女は文章に魂を込められる数少ない人の一人。こんなに心に響いてくる文章を書ける方はそういない。ブータンに関する記述は著書の一部分となっているが、読む価値はある。
ある機会に西水さんご本人に著書へサインを頂いたとき、本に大量のふせんが貼ってあるのを見られて、「ふせんの数すごいですね」と言われた。
だって、いい本なんですもん。
チベットから見たブータン
ブータンだけを見ていてはブータンは見えない。ブータンは長くチベットと交流をもち、チベットから大きな影響を受けている。したがって、チベットを知ることはブータンを知るのにとても役立つ。
また、チベットからブータンがどう見えていたかを知ることもできる。人のことは隣人が一番よく見えるもの。下記の著書から、ブータン人について、昔は男女とも坊主頭、冬でも裸足、とても喧嘩早い、口の中が真っ赤だから食人種に違いない、など面白い話が出てくる。
※上記書籍は1〜6巻まである
最後まで読んで頂きありがとうございます。 槍が降ろうが隕石が降ろうが、もっとよい記事をコツコツ書いていくので、また来てくださいね。