海外トップVCが注目する「PrivacyTech」

はじめに

どうも、Acompanyの高橋です。

2018年6月20日に名古屋大学の学生だった僕がAcompanyを創業してからあっという間に4年が経過しました。ちょうど節目でもあるので、今のAcompanyが張っている未来と技術の話を書いていきたいと思います。

世界中で注目される「PrivacyTech」

今のAcompanyはPrivacyTechのスタートアップです。つまり、Acompanyは「PrivacyTech」の未来と技術に張っています。

まだまだPrivacyTechという言葉や市場はニッチだと感じる人も多いと思います。しかしながら、PrivacyTechの市場は世界中で注目度の高まる相当ホットな領域になっています。

このnoteで使用する「PrivacyTech」はプライバシーの問題を解決するテクノロジーのことを指しています。

Fortune Business Insightsの調査では、北米のデータプライバシーソフトウェアの市場は、2022年の$2.36B(約3186億円*)から2029年までに$25.8B(約3.49兆円)へ成長すると報告しています。CAGR(年平均成長率)40.8%という驚異的な数字となっています。

※1ドル=135円で計算(円安…)

北米のデータプライバシーソフトウェアの市場規模
Source: Fortune Business Insights

当然、この領域のスタートアップも存在しており、ユニコーンも誕生しています。例えば、プライバシー保護のための同意管理等のソフトウェアを提供するOneTrustはSoftbank Vision Fundなどから$926M(約1240億円)を調達する評価額$5B(約6750億円)のユニコーン企業です。

また、直近ですと6月に、GDPRなどのプライバシー規制を含むサイバーセキュリティ標準に準拠するためのセキュリティモニタリングツールを提供するVantaが$1.6B(約2160億円)の評価額で、$110M(約148億円)を調達し、新たなユニコーンとなりました。Vantaには、トップVCの一つであるSequoia Capitalが昨年5月のシリーズA、$50M(約67億円)のラウンドでリード投資家として参画しています。

その他にも、Facebookの投資で有名なトップVCの一つであるAccelは、データプライバシーソフトウェアを開発するPrivitarのシリーズB、$4000万(約54億円)のラウンドにリード投資家として参画しています。Privitarの累計調達金額は$150M(約200億円)に達しています。

このように「PrivacyTech」のマーケットは今、非常にホットな領域なのです。

なぜ、データプライバシー市場は注目されるているのか?

データプライバシーの市場が注目されている背景には様々な要素がありますが、特に大きな3つのトレンドがあると考えています。

1. データの増加

まずは、単純にデータ量が増加していることです。

スマートフォンの普及やIoTなどの増加で、インターネット上での閲覧・購買履歴やコネクティッドカーによる走行情報など、一日のほぼ全ての行動がデータ化され始めています。

シスコシステムズの調査では、全世界での月間IPトラフィックは、2022年までに396エクサバイト(1エクサ=2の60乗)達すると推定されています。

このようなデータが増加することで、プライバシーの侵害リスクは大きく高まります。

例えば、これらのデータを分析すれば、どこに住んでいて、どんな家族構成で、どんな趣味で、どんな生活スタイルで、どんな仕事をしていて、どんな異性がタイプで、どんな政治的思想を持っていて、といった様々なことが明らかにすることが可能です。

実際に様々な問題が顕在化しています。

例えば、就活生の内定辞退率を推定で問題となったリクナビ事件やFacebookのユーザーデータを分析し、選挙をコントロールしたケンブリッジ・アナリティカ事件などが有名です。

2. 規制の強化

現在、プライバシー規制は世界中で強化トレンドです。

大きな転機になったのは、EU域内の個人データ保護を規定する法律として、2018年5月25日に施行された「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」です。

GDPRでは、非常に厳しい罰則規定があり、2019年のGoogleへの5000万ユーロ(約70億円*)の罰金や、2021年にはAmazonに対し7億4600万ユーロ(約1050億円)という莫大な罰金を科すというニュースでかなり話題となりました。

※1ユーロ=141円で計算(円安…)

また、GDPRだけでなく、今年4月には日本で改正個人情報保護法の施行や米国カリフォルニア州、中国、インドといった各国でプライバシー規制の施行や準備が進んでいる。IIJの調査によると少なくとも40以上の国や地域で規制が進んでいます。

しかしながら、これらの規制に対応できる人材の不足が顕在化しています。PwCの調査によると個人情報保護法の対応は人員不足が最大の課題となっており、実に37%もの企業が人員不足という調査結果が出ています。

2022年4月施行 改正個人情報保護法への企業の対応状況(第2回調査)~改正法対応への課題
Source: PwC

3. データ連携のニーズ増加

今やデータがビジネスにおいて重要であることは、わざわざ述べるまでもない状況です。そんな中で、高まっているのがデータの連携ニーズです。

最近大きな話題となったのは、Zホールディングスのニュースです。

Zホールディングスがグループに抱えるヤフーやLINE、PayPayといったグループ会社同士でデータを連携し、新たな価値創出を目指す動きが大きく取り上げられました。

Zホールディングス、未完の「Z経済圏」 EC首位への難路と勝算
Source:日経ビジネス

また、JR東は5月からSuica利用データの販売を開始。JR東は、8年前にもSuicaデータの販売を目指したが社会的な反発が大きく一度断念している。Suicaデータが有用なデータであることは明らかであるので、よりプライバシー保護に配慮した形での外部利用を可能とする取り組みとなっています。

Zホールディングス、JR東以外にもSony武田薬品工業など、業界トップランナーの企業を中心に、様々なデータ連携の取り組みを目にする機会も増えました。

データ連携のニーズは、一定程度の自社データによる価値創出を進めてきた企業が、非連続に事業成長を目指す際に、現実的な打ち手になっているからだと考えられます。

一方で、これらの取り組みのどれをとってもプライバシー規制への対応や、そもそもユーザーの理解を得るためにもプライバシー保護が非常に重要なテーマになっていることがわかります。

データ利活用とプライバシー保護の両立が求められる

データが増え、規制が強化。一方で、事業を成長させるためにはデータ連携のニーズが高まっている。結果として、プライバシー保護とデータ利活用の両立を実現する必要性がここ数年で大幅に高まっているということです。

このプライバシー保護とデータ利活用を両立するための技術として、「PrivacyTech」が注目されているわけです。

ガートナーによると、2023年末までに世界中の企業の80%以上が少なくとも1つのプライバシーに焦点を当てたデータ保護規則に直面すると予測しています。

また、別の調査では、2021年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンドにプライバシー強化コンピュテーション(PrivacyTechの一種)が選ばれました。2025年までに大企業の60%がプライバシー強化コンピュテーションを使用するようになると予測しています。

ちなみ、Acompanyが取り組む暗号化したまま計算処理する秘密計算技術は、このプライバシー強化コンピュテーションの一種です。

秘密計算以外のPrivacyTechについては、こちらの記事でまとめられているので気になる方はぜひ。

データプライバシー市場はチャンスに溢れている

ここまで述べてきたように、データプライバシーの市場は、今まさに規制によって大きな変化が生まれている市場です。海外では複数のユニコーンも生まれています。

データプライバシーの問題解決には、当然テクノロジーの力を活かすことができます。(対象がデータなので、むしろテクノロジーが肝といえる)

つまり、データプライバシーをテクノロジーで解決するPrivacyTechが非常に熱いと考えています。

一方で、日本においてはまだまだスタートアップのプレイヤーは非常に少ないというのが実態です。

AcompanyはPrivacyTechのリーディングカンパニーになる

PrivacyTechの領域は、法律と技術の高いレベルでの融合が求められます。

安全にデータが活用できるからと言って、法律へ対応できていなければ、利用を考える企業からしてみたら価値はありません。

だから、しっかりと法律へ対応しながら、技術を利用できるようにしていく必要があります。

そのために、Acompanyは秘密計算の会社からPrivacyTechの会社へと進化してきました。

今のAcompanyは、技術と法律の両軸において非常に強いチームになっています。技術だけではなく、法律を融合させた事業を展開できるように様々な施策を実行してきました。

4月には、新プロダクトとして「AutoPrivacy」を発表しました。

データセキュリティ&プライバシーテックサービス「AutoPrivacy」

このリリースはITmediaでも取り上げていただきました。

その他にも、技術、法律面で国内のトップクラスの先生方が顧問に就任を発表しました。

技術面では、秘密計算の第一人者であり暗号研究者の九州大学の縫田教授に。

法律面では、個人情報保護法のトップランナーであるひかり総合法律事務所の板倉弁護士に。

今のAcompanyはPrivacyTechの領域において法律と技術を融合させて、社会実装をしていくという面では、間違いなく唯一無二のポジションにあります。

色々な施策が進んでおり、ここでは書けないですが、、、相当面白い状況になってきているということだけは間違いないです…!

控えめに言っても、今のAcompanyは、この領域のリーディングカンパニーになるポテンシャルを持っていると日々感じています。この予感を誰から見ても明らかにYesと言われるように、5年目になるこの1年間を走り抜いて行きたいと思います。

最後に宣伝

Acompanyでは、一緒にPrivacyTechの未来を切り拓く仲間を募集しています。ぜひ、少しでも興味をもっていただけたら、Acompanyの採用ページまたは、高橋のTwitterにDMください!

お待ちしております!!

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