5/9「夜神月の極端さ【DEATH NOTE】」
デスノートは何度も読んだ作品。それだけ惹かれた理由の一つとして、主人公へのシンパシーがある。
主人公の夜神月は、物語の最初は善良で優秀な高校生なのだが、名前を書くと殺せるデスノートを拾い、人を殺したことをきっかけに、変質し、非情な独裁者に様変わりしていく。
そんな彼の極端な二面性について思うことがあるので書いていきたい。
俺にも二面性があると思う。多分冷たい面と、情熱的な面がある。ここに、月へのシンパシーを感じたのかもしれない。
月には、正しいか間違っているかは置いておいて、信念がある。彼は、自分の利益のために、人を殺さない。少なくとも当初は。
家族や捜査本部の仲間(?)には時に情熱的で優しい面を見せる。これはきっと、演技だけではなく、どこか彼自身そういう部分があるのではないかと思う。
でも、やはり間違いなく優しいだけの人間でもない。時に好戦的になり、自分の都合なためなら罪を犯していない人のことまで殺すようになっていく。
俺は、ここが夜神月の正義が破綻した点だと思っている。「正義のためなら多少の犠牲は仕方がない」という考えのもとだが、これは月の偽善でありエゴだと思う。
彼は独裁者であり、自分の信念や考えに対して、他人からの反射を受け取れなかった。途中で少し仲間もできるが、みんな最初から月には賛成の立場を取る者だけだ。
でも、それ自体が悪いことだとも言い切れないような気もする。独善的で他人の考えをあまり聞き入れないというのは、Lなんかも大差ないようにも思う。
やっぱり、月の最大の悪かったところは、自分の都合のために罪のない人を殺してしまったところだろう。
「正義のためなら多少の犠牲は仕方ない」というのをさっきは言い訳だと書いたが、それも考えてみれば、そうとも言い切れない、と思う。
歴史を振り返っても、あらゆる戦争や革命、変革と呼べるものですらさえも、多少の犠牲はほとんどの場合あっただろう。
とするなら、結局は勝ったものが正義なのだろうか。月は、考えや信念によるものではなく、ただ単に最後に負けたから悪なのだろうか。
月の性格について書こうと思っていたつもりが、「正義とは何か」というようなテーマになってきてしまった。
話を戻し、率直な感想を言うと、俺は月のことが嫌いになれない。やっぱり、やり方は独りよがりだっただろうが、彼の行動の前提には人のため世界のため、と言うのがあったことは否めない。
Lはキラのことを「純粋」ではないと断言していたが、それも俺にはよくわからない。人を殺せるノートを、世の中のために使おうというのは、俺にも純粋に思えるのだけれど。
グレーの部分が認められない。白か黒で考えたい、というのが、彼の性癖だったのだろう。
それゆえに、自分の過ちを認めることができなかったりもしつつも、一人で平和な世界を築き上げることをできた。
そんな彼の姿が、なんだか強く印象に残り、忘れられないのだ。最後に勝ったL達以上に。