ジェネラルクラスで見たインド
インドでは鉄道網が全土に張巡られており、その総延長64,000km、まさに国民の”足”として日常的に利用されている。そして、座席クラスも富裕層や旅行者を対象としたファーストクラス、乗車率なんてお構いなしのジェネラルクラスまで、様々に用意されている。
この旅ではファーストクラス、セカンドクラス、サードクラスをはじめ、最下位のジェネラルクラスにも乗車した。
ちなみに、ジェネラルクラスに乗車することをリキシャのドライバーに話したら、考え直すよう本気で説得された。それでも乗車すると伝えると、「俺は忠告したからな!あとはお好きに!」と突き放されてしまった。
事前予約の必要なファーストクラスなどと違い、ジェネラルクラスの乗車料金はとにかく安い。距離にして250km、所要時間4時間の区間をファーストクラスは1,500ルピー(約2,700円)、ジェネラルクラスならば90ルピー(約162円)で乗車できる。チケットを購入する際、あまりの安さに聞き返してしまったほどだ。
テレビなどで減速しつつある列車に飛び乗っていく様子を見たことがある方もいるかもしれないが、まさにそのままだった。ここで遅れを取ると列車に乗れないと思い、周囲のインド人に倣って、減速しつつある列車にしがみついた。
乗車すると4人掛けシートに6人が着席し、荷物棚も座席と化し、床にも無数の人々が座っていた。車内は大混雑だが、家族や友人、乗り合わせた乗客同士で談笑したり、YouTubeを観たりと日本と同じ風景が広がっていた。
インドの鉄道は長距離運行であることが多く、車内には、チャイ売り、落花生売り、菓子売りが「チャイ、チャイ、チャ〜イ」などそれぞれの売り物を連呼しながら徘徊している。乗車率は100%を優に越えているが、乗客を掻き分けながら彼らはやってくる。そんな光景をただ見ているだけでも十分に楽しかった。
それだけでなく、車内にはヒジュラも徘徊している。
日本でいうところのオカマだ。ヒジュラ達は何をしているのかというと、乗客からお金をせびっているのである。しかも乗客の半数以上がお金を渡している。この様子が理解できずにいろいろと聞いてみると、ヒジュラは豊穣の神の使いと考えられ、サードジェンダーとして法的にも認められているんだとか。
勿論、車内には物乞いもいる。
大人の物乞いもいれば、子どもの物乞いもいる。
70年前にカースト制度が廃止されたとはいえ、下位カースト、不可触民の人々とっては職業選択の自由は愚か、職に就くことさえ難しく、カーストは人々の意識の中に根強く存在している。教育、医療制度にアクセスできない社会構造への疑問と同時に、今を必死に生きようとする彼らに強い生命力を抱かざるを得なかった。
ジェネラルクラスで貴重品を盗難されたという話も耳にするので、乗車することをお勧めはしないが、インド人の暮らしぶり、生き様に触れるには十分な機会を得ることができるのではないだろうか。