社員が次々と辞める組織の理由と、辞めない組織づくりの方法:その3
前回、前々回の記事では、人が辞めていく組織の特徴、そして原因について説明させて頂きました。今回は、このシリーズ最後になる、離職対策について触れたいと思います。
意外と多くの会社の経営層は、原因までは特定できていることが多いです。それこそ、問題の社員が誰なのかもわかっていたりします。しかし、肝心の対策が打てていない。この記事でその対策に言及したいと思います。
適性の無い管理職の降格を行う
これができていない日本企業がほとんどだと思います。
基本的には、当然管理職自身も学びながら、時を重ねて成長するので、いきなりできる、できないを判断するのは逆に危険です。1年目は必要なことを教育し、1年目が終わった時点で振り返ります。
及第点以上なら様子見です。逆に課題がかなり多い、深刻な場合は、その点を指摘した上で、外部教育など必要な教育を施します。
また、いつまでに成長してもらいたいかもしっかりと本人と握ります。そして、期限までに課題を克服すれば継続、できなければ一旦降格とします。 ここで大事なのが、感情を排して適切に教育指導を行うことと、期限を適切に設定することです。
期限は、本人の現状能力、部署の状態、部下の状態、等を鑑みてフレキシブルに設定する必要があります。だいたい3年程度は育つのを待つ必要がありますが、こういった教育指導の方法や、管理の方法について、より知りたいという場合はご相談ください。
また、短期間で複数人が退職、休職している場合などは緊急的な対応が必要です。少なくとも1年間に複数人が離脱するような場合は、即降格も検討する必要があります。
モチベーションの管理を行う
人が辞めていく企業で往々にして以下のような状況が見られます。
・面倒な社員、周囲のモチベーションを下げる社員に忖度したり、指導をしないようにしている
・特定の人に大量の業務や、高難易度の業務が集中している
・業務量や成果と、評価や賃金が見合っていない
逆に言えば、ちょっとしたことでモチベーションは改善され、生産性や定着率は目にわかるレベルで向上します。
人間関係の調整、改善を行いましょう
周囲の人間のモチベーションを下げている社員にはちゃんと注意指導をしましょう。このときに大事なのは、指導したつもりになることです。少し口頭でやんわりと言っただけなのに、指導したと胸を張る管理者、経営者は多いです。
こういった社員への指導は、当然口頭でまずは行いますが、改善が見られない場合、必要に応じて異動などの配置換え、言動を評価に織り込んで昇給や賞与に反映させる、といったことが必要です。
外資系企業でも、最近はこういった環境を悪化させ、生産性を下げている行為を評価に反映させるようにしてきています。
「面倒な人だから、みんな我慢して」という考えは、会社に多大な損害を与えているということを管理側は認識する必要があります。
業務配分の管理、調整、部署成長を行う
また業務量の差配も重要です。これも「重要な仕事は彼にしか任せられない」といった言い訳が出てきます。
そうであれば、重要な仕事を任せる社員を複数名育成できていない教育力の無さを認識すべきです。既存社員に経験させ教育する、それが難しいなら外部から採用するなど、部署の能力向上を常に図らなければなりません。
なぜなら、社員は年を取るからです。人的資本の観点から見れば、毎年社員という資本は耐久年数が減少していきます。これは事実です。特に日本企業は耐久年数として、定年を設定しているからです。
去年も彼、彼女は同じ仕事をやってくれていたから。
指導しても社員が成長しないから。
もう少ししてから考えればいいから。
企業は、経営計画として3年計画や5年計画を立てることが多いですが、3年後の部署の成長ビジョンを明確に持っている管理職は多くありません。しかし会社の成長には、社員の育成、成長と、彼らに結果を出してもらわないことには成り立ちません。
そして、こういった適切な育成が行われ、成長を実感でき、結果を出せる環境にいる社員は簡単に辞めません。なぜなら働くのが楽しくなるからです。
「楽しく働こう」と言う管理職、経営者は多いですが、これは雑談や生ぬるい人間関係では実現できません。仕事なのですから、成長や結果といった刺激が必要なのです。
これらに関しても、具体的な対応策は、会社の環境や状況、社員の特性、個々の具体的な状況により異なってきます。どうにかしたいが、どうしていいかわからない、という場合はぜひご相談下さい。
中長期的な心理的安全性を担保する
これは難しい問題です。元々、戦後から平成初期までは、高度経済成長、バブルといった日本社会が成長しているというプラスの環境要因がありました。それに加えて企業は、人手の確保も含めて、「終身雇用」や「年功序列型賃金」といった制度を導入して、心理的安全性を担保してきました。
しかし、いまは社会的要因はマイナスのことばかりです。
人口減少、人手不足、諸外国の成長、相対的な日本の存在力や経済力の低下、優秀な日本人の外国流出、ロシアウクライナ戦争、食糧危機、カーボンフリー。対応しないといけないことだらけです。
なので、企業単体で安心感を与えないといけません。しかし、終身雇用や年功序列型賃金制度にまた戻れるかというと、難しいところがあります。
まだそれらの制度を活用している会社も多いですが、今の社会情勢では経営の足かせに感じている企業も少なくありません。そうすると新しい方法で安心感を与える必要があります。
いくつか、その例を提示したいと思います。
会社の経営方針、検討している事業戦略などを説明する
情報漏洩などのリスクがありますが、出せる範囲で将来のビジョンを社員に伝えるのは一つの有効な手段です。
今取り組んでいる仕事が、どのくらいの市場価値なのか、どういったスキルが得られるのかを説明する。
今行っている仕事に価値が無いと思い込む若手も多いです。また今行っている仕事を踏まえて、高スキルの業務を将来的に行わせようと思っているなら、そのビジョンを事前に伝えないと早期退職を考えてしまう原因になります。
本人の適性や長所、キャリアビジョンの例などを説明する
本人ではわからないことを解説し、かつ将来を示してくれる人が身近にいれば、本人は安心し、その人の下なら成長できると期待します。
今後は社員一人ひとりに適切に説明し理解を促すことが必要になります。そのため、管理職に求められるのは、説明力や相手への理解力です。
「一方的に伝えて部下を引っ張るリーダー像」から、「相手を理解し、背中を押してあげる共感型マネージャー像」への転換が必要です。そのためには、管理職の教育や、会社の体制から、時代に合わせて変容させていくことが重要になります。
特に10年以上前に昇格させた管理職については、一度チェックを行う必要があります。10年で、管理職に求められるスキル、適性、要素は変わりました。
車の排ガス規制などが変わり、古い車はそのままでは点検に引っかかってしまうのと一緒です。
古い管理職が悪いわけではなく、時代の変化に合わせたアップデートが必要なのだと、本人も経営層も理解する必要があります。
以上になります。
どの対策も簡単ではありません。先述したように、これまで戦後の経済成長から70年、80年かけて築き上げてきた日本企業の文化、制度を根本から変える必要があります。
ただ、ここで変われなければ未来はありません。労働者に、消費者に、選ばれるような企業に変わっていかなければなりません。
そして困難だからこそ、新しい社会に適応できれば一気に他の企業を出し抜くことができます。ここからの社会では一年で大きく社会は変わっていきます。どれだけ早く動けるか、決められるかがカギになります。
今後もこういった人事系の記事を掲載してまいります。
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