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企業はなぜ、ここにきて一斉に大幅賃上げをしているのかを説明します。

ここ最近、企業の賃上げ報道が目立っていますね。ユニクロやGUを運営しているファーストリテイリングを皮切りに、NTTグループ、ロート製薬、任天堂、メガバンク各社などなど。大手企業を中心に一斉に給与を引き上げることを決めました。

なぜ、ここにきて大企業を中心に各社が一斉に賃上げを行い始めたのかを今回は説明します。


そもそも資本主義とは何なのか?

企業が賃金を引き上げる理由は、日本が資本主義国だから、というのが結論になります。
といっても、多くの人が、「いや、説明になってないよ」と思うことでしょう。日本は資本主義国でありながら、経済やお金のことをすべての国民に教育してないので、わからないのが普通だと思います。
なので、少し遠回りになりますが、資本主義についても説明していきます。読むのが難しい! 面倒!という方は、最後に内容をまとめるので、それをご覧ください。

資本主義というのは、お金持ち(資産家)にお金(資本)を使ってもらう(投資)ことで、経済を回して、国民にお金が回るようにしようという考えです。

人は歴史の中で、常に人より儲けようとしてきました。そして、これを資本主義は認めました。稼げるだけ稼いでいいよ!と。

そうするといろいろな人が商売を始めます。そこで儲けることができた人は、さらにたくさん効率的に儲けるために、土地を買ったり、建物を買ったり、工場を建てたり、機械を買ったり、人を雇います。これがいわゆる会社ですね。

そうすると、経営がうまくいく会社はさらに稼ぎが増えていきます。経営者である資産家もさらにお金持ちになります。
こうして、国の中にたくさんの資産家と会社が生まれます。そうするとライバルになっていきます。ほかの会社に負けないように稼ぎ続けるには、より良い商品やサービスを作ったり、より広い地域で事業を展開しないといけません。
なので、会社はより良い人材を雇い、最新の設備や機械を購入します。
資本主義の本質である、「利潤の追求」と「再投資」という言葉になります。つまり、いっぱい稼いで、いっぱい使うということですね。

そうすると、他の会社も同じことを思います。でも、そんな会社が増えていくと、途中で問題が起こります。
「良い人材がなかなか採用できなくなってきた」と。
無限に良い人材がいるわけではないので、途中で足りなくなるのです。

そうするとどうするか?
手っ取り早いのは、給与を他の会社より高くして引き抜くことです。
その結果、労働者(会社員)の給与は徐々に高くなっていきます。
この結果を「インフレ(経済成長)」と呼びます。最近、しきりに言われ始めましたね。

つまり、資本主義国では、①お金持ちになりたい人が商売を始める、②上手くいった人は会社を作って、さらに儲ける、③そのためにいい人材を集める、④集めるために他の会社より給与を高くする、⑤会社員の給与は引きあがっていく

しかし、ここで疑問がわくのではないでしょうか?
「じゃあ、なぜ日本ではずっと給与が引きあがらなかったの?」

なぜ、ずっと日本では賃金は上がらなかったのか?

日本はこの30年間、社会全体での賃金の引き上げを経験してきていません。それはなぜか。
結論から書くと、「賃金を上げなくても、優秀な人材を必要なだけ採用できていたから」ということになります。

なぜなのか? というと、いくつか理由があるのですが主だったものだけ簡単に説明します。

①大手企業が日本人ではなく、外国人を採用していたから
実感はないと思いますが、この20年間くらい、大手企業の多くが外国企業を何社も買収したり、外国に支社や現地企業を作っています。なので結果的に、グループ従業員の外国人比率が上がっているんですね。
なんで買収する方法を選択したのかを詳しく書くと長くなるので、詳細はまた別記事で。

②企業が雇いたい人数より、日本の優秀な人のほうが多くて余っていたから。
日本の教育はなんだかんだで世界最高水準であることは間違いありません。(最近落ちてきてはいますが、それでも世界で見たら高いです)
なので、給与を上げなくても、それなりの人が雇えちゃうので、上げる必要がなかったんですね。

では、なぜ今になって状況が変わったのでしょうか?

なぜ今、一斉に賃金を上げるのか?


ここまでの説明で、優秀な人材を確保するために会社は給与を上げるのが資本主義の自然な流れであることは説明しました。
では、なぜここにきて急に人を獲得しようとしているのか。ここからが今回の本題です。(お待たせしました)

①コロナが明けてきたから
一つ目の理由です。コロナが明けてきて、今まで停滞していた業界が動き始めました。運輸業(航空関係から電車、タクシー、観光バスなど)、ホテル業界、観光業界、イベント業界などですね。これらの業界が減らした社員を取り戻そうと、一斉に採用を始めました。実際、JALやANAは黒字転換して、久しぶりにキャビンアテンダントなどの複数の職種で募集を再開しています。つまり人を雇いたい需要が急激に上昇したのです。

②世界の先進国、新興国で人口減少が起きていて、世界各地で人の奪い合いが始まっているから
いま、世界中で人口減少が起きています。先進国はもとより、中国や韓国、台湾、タイなどの国でも既に人口減、もしくは10年以内に減少が始まります。なので、これらの国も外国人を高い給与で雇い、自国民が海外に出るのを防ごうとしています。

日本も外国人を雇おうとしているのですが、うまくいっていません。それは日本の外国人雇用制度が悪いからです。特に日本の外国人技能実習制度は、ILO(国連組織の国際労働機関)から「強制労働に等しい労働権侵害制度」と強く非難されており、現代の奴隷制度として各国で報道されており、出稼ぎを考えている国や個人はこれらの報道をとても敏感にチェックしています。

③日本国内の若者が減ったから
外国人が来なくなってきているなら、日本人を雇わないといけませんが、その日本人も減っています。
1995年から比べると1300万人、約10年前の2010年と比べても650万人、国内で働く人の数が減っています。
(15歳から65歳までの人口。総務省調べ)

④外国企業を買収するのが難しくなっているから
今までは外国企業を買収してきましたが、買収した企業を外国企業に売却する例が増えています。交渉時に騙されて良くない会社を買わされたり、買った後のマネジメントが日本人にはできなかったためです。
また円安になったので、新たに買うことも難しくなりました。
(円高より円安だと、買うときのお金がより多く必要になります)



以上が原因と理由です。簡単にまとめれば、
①コロナが明けて経済が回復して、②世界でも人の奪い合いが始まっていて、③日本人も減っていて、④外国企業を買収する(外国人を雇う)という手段も難しいから、ということですね。

今までは企業もアウトソーシングしたり、システム化でどうにかやりくりしていましたが、それもいよいよ難しくなってきた状況です。

現に教員不足や、技術者不足、公務員不足などが最近急激に叫ばれるようになりました。

当たり前にスーパーで必要なものが買えて、病院に行けば薬がもらえて、電気や水道が不自由なく使え、学校に行けば先生がちゃんといて、交番にお巡りさんがいてくれる。
そんな当たり前を維持するための、人が足りてないのです。

なので、我先にとお金のある会社から給与を引き上げ、人材を奪い始めたということですね。

今回はここまでです。
また、後日、いろいろ記事を上げていきます。よければ、読んでいただけると幸いです。

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それでは、また次の記事で。よろしくお願いします。


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