どうして学歴フィルターは存在するのかを大手人事管理職が説明します
こんにちは。大手企業で人事管理職を経験している私が、人事系の話題を説明する記事の第一弾です。
今回のテーマは学歴フィルターです。
最近、ネットニュースなどで、「学歴フィルターがあると大手企業の人事が公言した」、という記事が話題になっています。確かに学歴フィルターは存在するのですが、なぜそもそも学歴フィルターは存在するのか、そして今もなくならないのか。これを説明していきたいと思います。
ちなみに学歴に自信が無い学生さん向けの就活対策法は、近日中に別の記事にまとめますので、そちらをご参照ください。
「なぜ学歴フィルターは存在するのか、無くならないのか?」
結論から言えば、新卒一括採用という日本独自の特殊な採用法を行っている結果、学歴フィルターが生まれたと言えます。
つまり、日本に独特の採用制度があるから、その選考方法も海外にはない独自のものになったということですね。では、なぜ新卒一括採用が学歴フィルターに繋がるのかを説明しましょう。
まず重要なのが、新卒一括採用というのは、会社に必要な1年分の人材を、毎年決まった時期に、短期的に集中して確保する、というメカニズムにあります。
海外では、人が必要になったら必要になった時点で、必要な人数を採用します。なので、決まった時期に前もって採用するということはありません。
仮に急成長中の会社なら毎月大量に採用しますし、成熟した会社なら採用を抑えます。
しかし、新卒一括採用は違います。必要になりそうな採用数を予測し(4月の時点で1年後の3月に退職するであろう人数も予測)、一年分の必要人数を採用します。
今でこそ転職も増えてきていますが、まだまだ日本企業の多くが採用する人数の多くを新卒採用が占めています。
そうすると、1年分の採用業務が、結果的に新卒採用の時期に集中し、繁忙期と閑散期がはっきり分かれるようになります。
そして、いざ選考を始めると、ここでまた日本独自のシステムが登場します。エントリーシートです。
欧米だと、学校を卒業した新卒でも、就きたい仕事の経験値を求められます。なので、大学で専門の勉強をして知識を得たり、インターンシップで実際の就業経験を重ねて、採用試験を受けます。
しかし、日本の場合はご存知のように、知識、経験のない学生を採用します。そのため、何かしらの選考を行わないといけないので、エントリーシートという、学生時代に頑張ったことや、趣味、好きなこと、長所短所といった、よくわからない書類を日本企業は用意したわけです。
もちろん企業側もエントリーシートに意味が無いことはわかっています。
しかし、このよくわからない書類が必要になるのです。
それはなぜか?
大手企業にもなると数千人から多い場合は1万人を超える学生から応募書類が届きます。それをせいぜい、5人から10人程度の採用担当者で絞り込む必要があるわけです。
なぜ絞り込む必要があるのか。というのも、書類選考合格者には、その後に適性検査などの試験を受けてもらう企業がほとんどなのですが、この試験、1人2,000円から10,000円程度の試験料を会社が負担しないといけないのです。1万人ともなると、どんなに安くても2,000円/人なので、2千万円。しかも大手企業ほど、安心材料を増やすために試験を複数受けさせるので、絞り込まないと数千万から数億円もの費用を払わないといけなくなるのです。
そのため、企業の費用感覚からすると、合格する可能性のある学生にだけ受けてもらいたいと思うわけです。だから、絞り込む。しかし、採用担当者の人手は足りません。
じゃあ人手を増やすか? それも難しいのです。人手が足りないからと安易に対応する社員を増やすわけにはいきません。なぜなら、目を通す書類には、名前、顔写真、住所、最寄り駅などの機密個人情報が赤裸々に書かれているからです。変な社員に対応させて、ストーカーなどの犯罪行為に走らせるきっかけを与えるわけにはいきません。
実際に、採用活動に協力した若手社員が、わいせつ事件を起こしたりしている例もあり、やはり人事としては簡単に関わらせたくはありません。
一旦、ここまでの話をまとめましょう。日本企業は、新卒採用という決まった時期に大量の採用を行うため、応募数が多い大手企業ほど、少ない人数の担当者で、数千から数万の受験者の半分を、費用の観点から書類上で絞り込まないといけない、というわけです。
そこで採用担当者は考えます。採用担当者全員が、経験値に関係なく、わかりやすい基準で、さらに言えば上司から「どういう基準で学生を落とした?」と聞かれたときに説明のしやすい基準はないか、と。
何があるでしょう?
性別は今の時代いけません。年齢も全員新卒なのですから、ほとんど同い年。出身地も関係ない。学部、学科も同じ学部でも勉強してきたことが違ったりしますし、書類上では簡単に判断できません。
そこで学校の偏差値になるわけです。
数値化されているから基準も作りやすい。一覧表にもできるから、経験値に関係なく判断できる。上司にも「この偏差値以上の優秀な学生を採用したいと思います」と言えば、疑問を持つ上司はいても「そんなのは絶対にダメだ!」と全否定する上司は少ないでしょう。
ましてや大手企業です。採用担当者も上司も役員も優秀な大学を卒業した人間です。偏差値を意識して学生時代を過ごし、受験競争に勝ち抜いてきた人間たちですから、偏差値で判断することに違和感は少ないのです。
これが学歴フィルターが生まれた背景になります。
なので、あくまで学歴フィルターがあるのは大手企業がほとんどです。学生からの応募がひっきりなしにくるわけではない中小企業はそんなものを置く必要はありません。(たまに経営者が学歴重視して、基準を置いたりするところもありますが…)
段々と、転職やインターンシップが当たり前になってきてはいますが、インターンシップも本来の欧米式とは異なるものですし、まだまだ新卒一括採用も、学歴フィルターも無くならないでしょう。
じゃあ学歴フィルターを突破できない学生はどうすればいいのか。
「大手にこだわらなくていい」という人もいます。しかし、私はそうとは思いません。給与も福利厚生も働く環境も、大手企業のほうが充実しており、大手で働くメリットは多大にあるからです。
では、学歴フィルターを潜り抜けられない学生はどうすればいいのか。学歴フィルターを潜り抜ける方法はなかなかありません。それが現実です。しかし、大手企業に入る方法や、大手企業並みの待遇で働くことができる方法はもちろん、いろいろあります。
偏差値の高い学校に入れなかった学生が、それでも勝ち組になる方法。これはまた別の記事で説明したいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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