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ギタリスト列伝:8 T-ボーン・ウォーカー

今回は「T-Bone Walker」でいきます。

この方もテキサス出身です。「T-ボーンの特徴って何?」言われたら、ジャンプ・ブルースとなりますかね。ジャンプ・ブルースとは、スィングするブルースでもあり、ホーンセクションなどを擁したところに特徴があり、この流れの中らアーバンなブルースが出てきた面もあると言ってよいかなと思います。それをギターでやった一人と言ってもよいかもしれませんね。

T-ボーン自体は、ジャンプ・ブルースの主流と分類されているわけではないかもしれませんが、ジャズ的な要素も入っていますし、曲のリズムがスィング系であることが多いことも特徴の一つかなと。

国内盤の邦題「モダン・ブルース・ギターの父」と言うのもあるくらいですから、まぁ、そういう位置づけのブルースマンです。

私、ジャンプ・ブルース好きだったので、Tボーンは好きでしたね。
これも10代の頃にはまったギタリストの一人です。

彼の音楽スタイルのことも書きたいのですが、記事としては「ギタリスト列伝」なので、ギターのことから始めます。また、それがふさわしいといえる方なので。

実は、この方、正直、エレキ・ギタリストの98%(というかほぼ100%に近いと言ってもよいかもしれません)が、間接的に影響を受けているんです。
そのすごさの割には、それほど名前が知られてないのが残念過ぎます。

たとえば、ロバート・ジョンソンとかになると、有名と言えば有名ですが、T-ボーンとなると、かなり知名度が下がります。ましてや「T-ボーンの音楽自体を聞いたことがある人」となると、かなーり減ることになるかなと思います。

ただ、ロックギタリスト、エレキギタリストは、ほんとはロバジョンよりこのT-ボーンから影響を知らずに受けていると言ってよいと思います。

T-ボーンのスタイルの直接的な影響下にあるギタリストはかなりの数になりますが、まずは、BBキングとチャック・ベリーあたりになるかなとは思います。ブルースとしてはキング御三家(アルバートキング、フレディーキング、BBキング)等、スクィーズ系、アーバン・ブルース系の人は直接的な影響下にあると言ってよいかと思います。

チャックベリーについても、いずれギタリスト列伝で取り上げる予定ですが、チャックについては、前に一度、ストーンズのカバー関連で記事を書いたことがありましたが、その私の大好きなチャックベリーにも強い影響を与えた人でもあります。

BBはホーンセクション込みのバンドスタイルやあのビブラート。
チャック・ベリーはフレーズの点からと言ってよいかなと思います。

実は、チャックベリーのフレーズのかなりの部分が、「Tボーンのロック・リズムへの置き換え、あるいは影響を受けたフレーズが多い」といってよいからです。

「エレキ・ギタリストはほぼ全員影響を受けている」書きましたが、では、何がそんなに影響を受けているといえるのかと言えば、以下のようなことです。

以下、つらつら書きますが、間接的にだとしても、これほど、影響を与えているギタリストは少ないかもしれませんね。

1.1942年という時点でエレキギターを使い始めた(録音)。
エレキギター弾きの元祖の一人です。
ギターのエレキ化はジャズのチャーリー・クリスチャンが1936年か37年頃にはじめたとなっていますが、ロックへの直接的な影響度は、まず、間違いなくTボーンからが強いですね。ちなみに、この二人は知り合いだったみたいですね。

2.ギター奏法のパイオニアでもある。
パイオニア① 色んな奏法1
「ベンド(チョーキング)を使った多様なフレージング」
「複数弦を押さえながらのベンド」

・「ベンド(チョーキング)を使った多様なフレージング」
ベンド自体は誰が始めたのか議論はいろいろあります。まぁ、今のような明確なベンドではないにせよ、ジャンゴ・ラインハルトとかも、かなり前からやってましたしね。ですので、これがT-ボーンの発明でないことだけは確実ですが、この「ロックギタリストであればだれでもやる奏法を一般化させた一人である」ことは確実ですし、「フレーズを多様化させた」という意味では、確実に功労者の一人であると言ってよいと思います。

・「複数弦を押さえながらのベンド」は、チャックベリーやキース・リチャーズも多用しますね。というか、ブルースに影響を受けているギタリストでやらないギタリストはほぼいないかもしれません。

「ラン奏法」。これは、もうほぼやらない人はいないかなw
これは後で音を貼っておきます。

パイオニア② 運指やポジショニング
これは、言葉で説明が難しいところなんですが、まず、今、エレキギタリストはソロやフレーズを弾く時にやっているような一般的なポジショニングでの運指を始めた人の一人と言われています。横移動ではなく、縦移動式のやりかたです。ここは説明がややこしいので、省きますが、まぁ、これはやらないエレキギタリストはいません。

結果的にビブラートやその他、色々なエレキギターの表現方法が花開いていく要因になった点もあるかと思います。

パイオニア③ ステージアクション
チャック・ベリーがやっている「股びらき奏法」とか、
それと私もこないだやりましたが「頭の後ろで弾く」とかです。
こういうのは全部彼が始めたことです。
ギタリストのステージパフォーマンスの元祖の一人としては、ジミヘンが有名ですが、それ以前では、チャックベリー、その元祖がT-ボーンと言ってよいかと思います。

これはもう、客を喜ばせるためにやっていたんだろうなと。
その結果がこれだったのかなと。ですので、この方、「自分が革新的なことをやっているということについて、そこまで自覚がなかったのかもしれないな」と思うことがあります。

ということで、ギタリストとしての彼の先駆性について書いてみました。

<音楽面についての特徴>
音楽面でいえば、テキサスのブルースの流れのなで、こういうジャンプ系ブルースはメジャーなんですよね。リズムがスイングしているというが特徴ですよね。もちろん、シャッフル的なのもあるんですが、スィング系も多いと思います。

ジャンプ・ブルースについては、私も、一時期、もっとマイナーな人のも含めて色々集めて聞いていましたが、T-ボーンはそのなかでも完成度が高く、スタイル的にも際立っていましたね。

他のブルースとの違い(シカゴブルース系など)でいえば、ジャズのビッグバンド的な編成をブルースに合わせたような感じにして、そのなかで、ブルースと言うにはキャッチナー「テーマ・メロディー」を入れているのも特徴ですよね。「口ずさめるようなテーマ」があり、その間に、各楽器のアドリブが入っているという。といっても、いわゆる「メロディー」というより、リフとか、後のR&Bのテーマのようなそういうやつです。

アドリブについては、いわゆるジャズのようなソロ回しをするわけでもなく、アンサンブル的なやりかたのなかで、ちょっとずつ入れる系なんですけど、決め事とアドリブのバランスもいいなと思いますね。

この「アンサンブル重視の傾向とホーンセクションによるキャッチーなテーマ」という辺りは、R&Bとかにも影響を与えているのかもしれませんね。

彼名義でのリーダー作は、1942年が初アルバムだった気がしますが、私は、40年代のT-ボーンが好きですね。


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では、曲を貼っていきます。

何て渋いんでしょうかね。たまりませんw しかし、フルアコの音渋いな。

ほらほら、「チャックベリーのフレーズでしょ?」
最後のホーンセクションのフレーズ。ジョニーB グッドのあのフレーズですよね。これをチャック・ベリーはギターに置き換えたということですね。ただ、これもパクリというわけではなく「取り入れている」ということがチャックの凄いところかなと。他にも、随所に影響が見られますよね。

バックの伴奏も渋いですよね。歌もいいですしね。これも聞いての通りチャックが良く使うフレーズの原型がいっぱい入ってますよね。

これはオールマンブラザーズバンドが取り上げたので有名かもしれません。コード進行がブルースでよくある3コードプラスアルファーの変則的な感じなのが渋いですね。この辺りも「アーバン・ブルースの元祖」たるゆえんですね。イントロがドラマチックですよね。使っているコードも渋い。

大人なサウンドですね。アーバン・ブルースの元祖と呼ばれる理由がわかりますよね。

このリズムは黒人ブルースマン特有のものですね。これは日本人以前に白人でも真似できませんね。46秒くらいのところでやっているのが「ラン奏法」です。

最後に映像ありのライブを貼っておきます。

ということで、あまりに当たり前すぎてスルーされている感があるT-ボーン・ウォーカーを取り上げてみました。

もっと知られていいと思うんですけどね。
あまりに元祖の元祖過ぎてこうなったんでしょうかね。

たとえば、クラプトンが影響を受けた「スクィーズ系ブルースギタリストの源流」ですし、キースが影響を受けた「チャックベリーの元祖」とか、そういうことです。二世代遡るというは、なかなかですよね。

後は、ホーンセクションを多用しているのとか、ジャズぽい要素があることも、ロックバンドとしては真似がしずらい面もあったのかと思います。
後は、ロックミュージシャンがカバーした彼の曲が少ないこともあるのかもしれません。

ちなみに、ロックミュージシャンやブルースロックの人がカバーするT-ボーンの曲としては「ストーミーマンデーブルース」があります。

オールマンブラザーズバンドの「フィルモアイーストライブ」のが一番有名なのかな? このアルバム自体が、ロック史上、最強のライブ盤の一枚に数えられることが多いので、そこで触れた人も多いかもしれません。

私は、オールマンより、原曲の方を先に聞いていたのもあって、未だに、「この曲」は原曲の方が馴染み深く、かつ、こっちの方がすきですね。

私はオールマンブラザーズバンドが大好きなんですが、オールマンはほかにも良いのがいっぱいあるのでということも含めて、あくまでも「この曲に関しては」ということですけど。

あの跳ねた感じは、黒人さん特有ですからね。チャックとか前に紹介した、同じテキサス系のゲイトマウスとか、そういう人たちにしかできないところがあるなといつも思っています。

ということで、今回は「T-ボーン・ウォーカー」でした。


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