英国の赤ちゃん向け全ゲノム配列検査が始まる
UK launches whole-genome sequencing pilot for babiesというnature biotechnologyの記事をもとに、他のソースも調べて書いたnoteになります。
Genomics Englandの新生児向け全ゲノム解析が始まる
英国で毎年3,000人の新生児が罹患している200の疾患を検出できるようになることを目的として、全ゲノム解析(約30億塩基対)を10万人の新生児に行っていくという2年間のプロジェクトです。
希少疾患という発生確率が低いために、治療や医薬品開発が進まない難病疾患の役立てるために行われます。またこのプロジェクトは、希少疾患であるが故に「原因不明」のまま辛い日々を過ごさなければならない親の負担を軽減することにも繋がります。
Genomics EnglandとNHS(国民保健サービス)の共同プロジェクトで、今年2023年末スタート予定です。予算は£105mn、日本円で約165億円(2/3現在)です。
スコットランド、ウェールズ、北アイルランドについては後に参加する可能性があるそうです。
希少疾患の各国の定義
米国では希少疾患対策法 (Rare Diseases Act of 2002)で、患者数が20万人未満(約7,000 疾患:患者数推計 3,000万人)を希少疾病としています。1つ1つの病気の発生確率は非常に低いものの希少疾患の種類が多岐に渡るため、米国ではおおよそ10人に1人が希少疾患に罹患(りかん)していることになります。
日本では国内の患者数が5万人未満(おおよそ2,500人に1人)、欧州では2,000人に1人未満としています。
保管は?知ったはいいけど?などの問題も
全ゲノム解析(whole-genome sequencing (WGS))については、以前にThe Economistにも記事がありました。
ここでは新生児に全ゲノム解析を行う際の問題についても指摘されているので、簡単に紹介しておきます。
ある病気を持ってるのか否か、YES or NOならいいが、持ってる可能性が高いという曖昧な情報は知りたくもないという親もいる
自分の子どもが幼児期ではなく、成人になってからかかる病気(がん、糖尿病、アルツハイマー病)の情報については知りたくない
成人になってからかかる病気について(もしくは子供のうちの病気も)、何を子どもに伝えるべきか(もしくは伝えないべきか)
ポンペ病のように乳児型、小児型、成人型と発症時期が異なり、かつ遺伝子検査では時期を推定することができない病気の場合、仮に子供の時に発症しない場合は将来自分の子どもが病気にかかるということを知ったまま過ごさなければならなくなる
データが将来に渡って安全に保管されるのか。警察の捜査のために遺伝子データベースが使われるなど、当初の目的外で遺伝子データが使われる危険性はないのか
【龍成メモ】
Genomics Englandの影響なのか、それとも単に私が希少疾患に注目しているというバイアスからなのか、希少疾患に関して経済紙での記事やnatureなどの論文誌での記事が目立つようになっている気がします。
Arek SochaによるPixabayからの画像