マトリックスと荘子、そして吉田兼好
青い薬を飲めば… 物語はそこで終わりだ。
「青い薬を飲めば… 物語はそこで終わりだ。自分のベッドの上で目覚めて、そこからは自分が信じたいものを信じればいい。赤い薬を飲めば… 不思議の国にとどまることができる。このウサギの穴がどこまで深いのか見せてやろう」
映画マトリックスでモーフィアスはこのように説明します。
マトリックスの世界ではコンピュータが世界を支配していて、人間はコンピュータの動力源として培養されています。
「青い薬を飲めば… 物語はそこで終わりだ」というのは、(コンピュータに培養されている)シミュレーテッド・リアリティの世界に戻るということです。
人間は一生、自分がリアルな世界に生きてるという夢を、コンピュータによって見させられているということです。
赤い薬(Red Pill)を飲めば、コンピュータによって繋がれた状態から脱して自由に生きることができます。しかし、現実の世界ではコンピュータから逃げながら生きなければならないため、シミュレーテッド・リアリティよりも過酷で辛い日々が待っています。
覚めて後に其の夢なることを知る(莊子)
【龍成メモ】
マトリックスを最初に観た時に「現代社会のほとんどの人は、メディアや巨大なシステムに価値観を押し付けられている。マトリックスに登場する人類のように、コンピュータに繋がれて夢の中で生かされてるのと同じだ。勇気を持って赤い薬を飲んだ人だけが、(洗脳から解き放たれて)自分の価値観を信じて茨の道かもしれないけど、自らの世界を切り開いて生きていける。そんなことをこの監督は観ている人に問いかけてるのだろうか」という感想を抱きました。
最近はランチの時に莊子を読んでますが、この「孔丘もお前もみな夢を見ているのだ」という言葉が、映画マトリックスと重なりました。
少し角度は違いますが、吉田兼好が徒然草で行っている「人間がいかに生きるべきかという、人生の根本を問い直す」という姿勢も、何か通じるものがあるのかもしれません。