睡眠不足は人を利己的にする?(Nature)
A restful way to feel more generous: get more sleep というNatureに掲載された記事から。
寝不足は人々を疲れさせてグロッキー(Groggy)にするだけでなく、人を利己的にするかもしれないという話です。
カリフォルニア大学バークレー校のEti Ben Simonらは3つの異なるアプローチを用いて、寝不足が人の助けたいという気持ちをどの程度低下させるのか調査しました。
眠れない夜を経験すると、ぐっすり寝た時に比べて他人を助けたいという気持ちが減退
最初の実験(Study1)では睡眠不足の翌日の気持ちと、ぐっすり寝られた時の翌日の気持ちを比較しています。
※睡眠不足条件については、実験室で強制的に眠らない環境を作り、睡眠不足にしています
前の晩によく眠れなかった翌日は約80%の参加者が、ぐっすり寝られた時と比べて、他人を助けたいという気持ちが減退することが分かりました。
睡眠不足によって、社会的認知に関する脳ネットワークの活動も低下
fMRIによる脳スキャンでは不眠によって、社会的認知に関する脳ネットワークの活動(内側前頭前野(mPFC)、側頭頭頂接合部(TPJ)、楔前部(precuneus))が低下していること、そしてこの活動の低下度合いが「他者を助けたいという欲求の減少」と相関することも分かりました。
同一人物での自然な環境での調査でも、悪い睡眠の翌日は利己的になる
この実験(Study 2)では同一人物の連続した期間における睡眠と人助けの意欲を調べています。
この実験でも、睡眠効率の悪化は翌日の人助けの意欲を低下させるという結果になりました。その逆もまた然りで、睡眠効率が高いと人助けの意欲が上がります。睡眠効率は寝床にいる時間のうち何時間睡眠できていたかを自己申告によって報告してもらっています。
最初のアプローチと比べてより自然な環境でも同様の結果が得られたことになります。
サマータイムが始まり人々が睡眠不足になると寄付が減る
3つ目の研究(Study 3)では、米国の2001年~2016年の間に行われた300万件以上の慈善寄付を分析しました。
サマータイムが始まった直後の(それまでの感覚で過ごしていると)睡眠時間が1時間奪われる週は、その前後の週(サマータイムが始まる前と、サマータイムが定着してから)と比較して、寄付額がおよそ10%減少してることが分かりました。
(睡眠不足ではなく)サマータイムが始まった時期に何か原因がないか検証するために、サマータイムが導入されていない州(アリゾナ州、ハワイ州)の寄付も調べたところ、この時期において2つの州での寄付額に変化は見られませんでした。
【龍成メモ】
この研究では睡眠不足が寄付する気持ちを減退させることを示したことも面白いですが、それを証明するためにサマータイムのデータを用いてる点も秀逸です。
サマータイムと言えば、導入直後の月曜日は急性心筋梗塞(こうそく)が24%も増えるという研究結果もあります。
まさかサマータイムが(睡眠不足が原因で)寄付額にも影響を与えていたとは知りませんでした。
Photo by Alexander Possingham
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