個人と企業との相関関係から成長機会を探る
ある時はモノやサービスの提供者、またある時は雇用主、更にある時は投資対象…それが個人から見た企業の姿だ。反対に企業から見た個人は、顧客・労働者・株主となる。主従関係が頻繁に入れ替わり、伴ってお金の流れも複雑である。
そのような複雑な社会で一時の主従関係に一喜一憂をすればストレスしか残らない。例えばカスハラ。顧客という強い立場を利用して企業をいじめる。逆も然り。組織内の序列を利用したパワハラ・セクハラなどは個人に傷を負わせるだけだ。
社会全体の相関関係を意識すれば、お互いが豊かに、そして更に高めあえるもの。しかし観察するにその意識は分断され、顧客・労働者・株主という守られた個人の横柄な態度が企業の身を一方的に啄んでいるようだ。それこそがこの30年で日本が堕ちた理由ではないだろうか。
【企業】→給与→【個人】→国内消費→【企業】=国内景気:〇
個人が投資家として国外にリターンを求めるのは是である。そこで得たリターンを国内企業に消費として回せば、国内景気そして企業成長に貢献することができる。すなわち個人自らが価値を育めるその国内企業に投資をするのがベターとなり得る。
逆に最悪なのは、国外に投資リターンを求め、かつ国外のサービスを多用することだ。一般的に日本国民は国内企業から給与を得ているため、個人の投資や消費が国外へ向かうということは、日本企業の資金で国外を潤わせているということとなる。せっかくの企業の賃上げも無駄。資金を気軽に国内循環の外に出すのはもったいないのだ。
【企業】→インフレ転嫁→【個人】→選別消費→【企業】=優勝劣敗:〇
国外に資金を出すと言えば、日本はエネルギーや食料品のみならず一般の耐久消費財に用いられる素材などを国外から輸入している。世界の分断とそして円安によって輸入価格の高騰に喘ぎ、多くの国内企業が仕入コスト高の難局をしのいできた。他方で個人はいまだにお得・割引・粗品のデフレマインドから脱却できず、企業の頭を抑えている。そして上述したように賃上げの流れ。利益さえも奪っているのだ。
もし個人がお得・割引・粗品という悪しき根性を捨てたらどうなるか。販価上昇で売上を確保した企業も賃上げには多少の時間差を要する(実質賃金の改善には時間がかかる)。つまりデフレ脱却のためにまず苦労をするのが個人だ。不要不急な消費を削り、個人の消費ポートフォリオは国民間で同質化…生活に必要な物資への比重が高まっていく。そこで選ばれた企業はいち早く賃上げも可能となり、またそういった企業にこそ投資すべきとなる。
【個人】→応援投資→【企業】→先行投資→【個人】=未来豊穣:〇
国内企業に対する資本効率化の要請。過剰にため込んだ資金を株主還元して株式の評価を引き上げようという考えだが、過去の努力や積み上げが突然顔を出した現在の投資家に持っていかれて悔しくないのか。企業はこの要請によって自己株式の取得や増配を通じて資金を手放している。手放された資金はどこへ向かうやら。この十数年、個人投資家は国内株を売ってきた。
投資家による過剰なリターンの要請は企業経営を邪魔しかねない。投資家と企業経営の時間軸にはズレがあり、無論、投資家のそれは短い。資本効率化以上に将来への種まき(先行投資)に目を配らないといけないはず。それを応援できるのもまた個人だ。日本の未来のために。