[Agile Again]日本にもう一度アジャイルを取り戻す - 日本を取り巻く状況 生産性について -
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/ G7で圧倒的な最下位を示し続けるOECDによる日本の労働生産性
昨年末、日本生産性本部は、OECDの国際的な労働生産性における比較調査についてレポートを発表した。
労働生産性の国際比較 2019 公表:
https://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity001581.html
プレス資料にいくつかの図表が示されている:
https://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity001581/attached.pdf
日本の時間当たり労働生産性は46.8ドルで、OECD加盟36カ国中21位。
OECDデータに基づく2018年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、46.8ドル(4,744円/購買力平価(PPP)換算)。米国(74.7ドル/7,571円)の6割強。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いている。
日本生産性本部のリリースより転載
このデータについての考察、なぜ各国との間で縮まらないのか、データの取り方は適切なのかという議論はあれど、このデータについて多くの方がありがたい示唆を示してくれている。そこは他の方に譲る。
みなさん、結構、いろいろおっしゃっていらっしゃる。概ね、扱っているデータに異議があるよ!とか、平均ではなく中央値でやろうぜ!などのツッコミがある方と、そういうものを差し置いても世界比較してんだからその数字を直視しろ、という意見が多いように思える。単にデータとして活用している私のような人も多い。
/ IMFが語るGDPによる国際比較
例えば生産性に関しては、OECDだけが日本について数字を突きつけているわけではない。
IMFなどが提示しているデータは、名目GDPにおいて日本は2018年世界第3位で約536兆円。ところが、1人当たりの名目GDPは世界第26位である。
名目GDP: https://www.globalnote.jp/post-1409.html
一人当たり名目GDP: https://www.globalnote.jp/post-1339.html
東洋経済では下記の記事においてこう指摘する。
単純に考えれば、生産性が低く、賃金が上昇していないためで、安い賃金で働き続ける高齢者やいまだに旧態依然とした産業やゾンビ企業が数多く残っていることなどが指摘されている。
これについては別途で一つ書いてみた。
/ いずれにしても生産性を上げなければ
ただ、多くの人が賛同しているものとして、「定義はどうあれ、生産性は向上させていったほうがよい」ということに概ね賛成だ。
「人や国家は成長をしていくべきかどうか?」というのは成熟国になった我々に突きつけられている新しい哲学的な問いなのだと感じるが、少なくとも多くの人が衰退や停滞ではなく、維持(つまり周りの人たち並みの成長)または成長(周りの人たちと比較してより大きな成長)を求めているのがわかる。
OECDのデータに戻り、私がこのデータから提示したいのは、
・生産性の変動が激しく上昇する国もある中で日本は基本的にこの50年、ほどんど生産性が相対的に変化していない。
・(業界別にみると)90年代製造業は世界1位の生産性を誇っていたが、2000年代から大きく順位を落とし、2015年に16位まで転落。そこから底を打つようにして最新データの2017年13位にきている。(このまま停滞するのか、生産性が向上するのかは様子を見る必要がある)
・労働集約的なサービス産業の労働生産性は低い傾向にある。
・生産性は落ちているのではなくておそらく少しずつ向上している。しかし各国が向上させているものとの比較でみたときに「他国と比較して向上している」とは言えない状態がずっと続いている。
(あくまでもOECDが定義している公式での範囲ではあるが)高度経済成長期って呼ばれた良い時代から、いくつかのクライシスを通り越して、2020年を迎えた今日、生産性が改善していない。しかもここ数年、「働き方改革」ってうたって労働時間の総量を(日本お得意の暗黙的プレッシャーの中でほぼ強制的に)制限しているのに、である。
生産性についての解説は、橘氏が昨年3月にまとめてくださっている。こちらを読んでみると、労働生産性と資本生産性の違いや、生産性と賃金の関係などが語られている。さらに詳しく知りたい方は、この中に出てくる書籍を読むのが良いのではないかと思う。
この中で、橘氏はドキッとするような発言をしている。
これを私なりに解釈すると、日本企業はパートタイム労働者を生産性の低い仕事にしか活用できておらず、(森川氏は言及していないが)非正規と同じような仕事をしている正社員の賃金が高すぎることを示しているのだろう。
これは私の業務経験の中でも非常に共感が大きい。
過去、セクレタリ業務、営業事務、その他、いわゆる「サブ」として扱われている方がその役割を大きく超えて作業や業務を遂行しており、その方たちがメインと呼ばれる人たちに比して正当に評価、報酬、昇格してない場面を何度も見てきた。
また、1日メールをポチポチ既読にし、右から左へ情報を移し、「どうすりゃいいっすかね?」「こんな感じでまとめると役員納得するんじゃないですかね?」という議論を1日どころか二週間かけて井戸端会議していることを「仕事」と定義して業務時間を経過している、なんちゃら企画、なんちゃら推進、の人たちもたくさん見てきた。もちろん、個体差はある。真面目にやってる人だってたくさんいる。が、、、、ほとんどの人たちで「生産性高いなー」と感じた経験がない。昔、「ブルーカラー」と呼ばれていた直接ものづくりに関わっていた人間の生産性に比してこの数十年で給料をたくさんもらってきた「ホワイトカラー」とよばれる間接部門、管理部門、の人たちの生産性が著しく低い、というのが私の仮説である。(この辺はまたのちほど。)
「成果」ということに対して厳しく評価をするのであれば、検討内容や議論の過程がどんなに高尚で崇高であろうと、出てきた内容が陳腐なものであれば、純粋に調査レポートをエクセルに集約してコメントを残し、他の作業に活かすためのまとめ作業の方が価値が高い。下手すると、この「高尚な議論」は結論が出ないものがたくさんあり、それは成果と呼べない。つまり全く対価が出せない労働を生産性としてカウントしている企業がゴマンといるということだ。
橘氏は先のブログでこうも伝えている。
先進国では、企業が持つ技術知識ストックが2倍になると生産性が8%程度上昇する。ここから、生産性を引き上げるにはITに積極的に投資すればいいと思うかもしれないが、日本の研究開発支出対GDP比率(2016年)は3.42%で、G7諸国のなかでももっとも高い。日本経済の問題は投資額が少ないことではなく、投資の成果が出ないことだ。
要するに投資はしているのだ。記事では、2016年を見ているが2018年の日本の研究開発支出対GDP比率は2.7%あり、およそ18.4兆円存在している。この18.4兆円の使い道を誤っている。としか言いようがない。投資している先が間違っているか、やり方が間違っているか、やったことを成果に結びつけていないか、その全てか、ってことになる。
今回はこの辺で。