
ほとりで ふたりで
こんな夜には
はるかな泉の奥までも
くしゃみの音がひびいてゆきそで
なんだかふたりは ためらってしまう
キャンプファイアの
地鳴りは消えた
うるさいあいつも
山鳥よろしくだんまりになって
ねえねえ きみは きみは と
尋ねるきみのそばで
僕はくしゃみをこらえていた
ひっそりと
顔を見たならきみにそのケが
つまりはくしゃみの
ケがバレそうで
僕はひたすら話をふったよ
木が揺れて きみが笑って
目が細くなって きみに見惚れる
が
くしゃみが くしゃみがでそう
きみを相手にくしゃみだなんて
僕の身体からくしゃみだなんて
はずかしくってはずかしくって
(しかし)
少しばかりの談笑のあと
僕らは急に黙ってしまって
星は光って 草が薫って 指が
きみは 口に きみも きみも
こんな夜には
はるかな泉の奥までも
くしゃみの音がひびいてゆきそで
どうにも二人は ステップを踏み 踏む
夜が明けない 夜は明けない
登ってく二度目の陽が
そっと泉の奥を照らした
ほとりでよくある おとぎ話です
いいなと思ったら応援しよう!
