彼の名はじーちゃん

ぼくにはじーちゃんがいた

ぼくには、じーちゃんがいた

背の低いよく禿げた

じーちゃんが、いた



じーちゃんよ

よく河原に鴨を見に行った

晴れれば鴨だ

僕は鴨を追った



じーちゃんさ

将棋で勝ったとき

変な踊り　踊るのやめなよ

今でも思い出してムカつくわ



ああじーちゃん

ゲームに付き合わせて悪かった気がする

アルファベットも知らないあなたの

指を持ってってAボタン押させた



じーちゃんの

働いてるところ見たことなかったな

その小さな手で

大きな家具をつくってたらしいが

じーちゃんと

酒を飲んでみたかった

安いタバコとパック酒をいつもがぶ呑み

そんなんばっかじゃダメだぜい

じーちゃん

大学受かった時最初に報告したぞ

小さなあなたの上に乗ってるらしい石の

上においたぜ　スーパードライミニ缶



じーちゃん

ばーちゃんはたぶん

もう少しでそっちへ

そっちで初めての「ありがとう」を言ってくれよ



じーちゃん

がんでヘロヘロのじーちゃん

訳分かんなくなる前に握ったよな　左手

だから　今ぼくは左手で握手ができねえのよ



じーちゃん

おれの癇癪はじーちゃん譲りだそうだ

そのせいかな　どうだろうな

人に怒ってるとき　泣きたくなるのは



じーちゃん

次のお盆は会いに行くぜ

変な意味じゃなく

やっぱり墓にいるんだ　あなたは



じーちゃん

じーちゃんの名前は

やっぱり

じーちゃん