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せっかち誕生

『上田と女が吠える夜』をたまに見る。
これ。

いつだったか忘れたけど「せっかちな女」みたいなテーマがあった。
ジェジュンが出ていた。美しい。

美術館に行っても普通の速度で歩いてすぐ見終わる。
収録を終えたら楽屋に戻りながらアクセサリーを全部はずす人。なんなら衣装のボタンとかもはずす。
服を買いに行き、店員さんに話しかける時間さえ与えず買い物を終わらせる人。
出かける準備をするときに家の中を小走りする人。
1時間で美容室から帰りたい人。

いや~、せっかちやな! と思いながら見ていた。
わたしはのんびりを自覚している。
何事もゆっくりやればいい。答えを急がないといけないことは、そんなに多くない。


だけど、仕事に関して言うと、けっこうせっかちだと思われているかもしれない。
というのも、わたしはなにかしらのタスクを持ったままにすることが好きじゃない。
上司からの問い合わせがあれば、その瞬間に担当課にぶん投げるし、予定に変更があったら、数か月先のことでも即担当者にお伝えする。
あれどうなったっけ? これどうしよう? を自分の中に置いておくと、忘れてしまう。忘れないためにぶん投げるだけだから、仕事が早いわけではない。

秘書の仕事で致命的なミスは連絡漏れだと思う。
当日になって「あ! 予定変更伝えてなかった…!」となれば、それはもう事故。上司が疑問に思ったことを担当課が知らずに報告をして、これ聞いたのにどうなってんだと怒られたら、これはもう大事故。

こういう事故の責任はわたしにある。
でもわたしは絶対に怒られたくないのだ。
怒られたら悲しいので怒られたくない。
怒られたら上司のこと怖くなっちゃいそうだから、絶対に怒られたくない。
えらい人に怒られたら怖い。
忘れて怒られたくないし、なにかしらの責任につながらないために、キャッチ即ぶん投げスタイルで仕事をしている。


LINEの返信とかは、あとで返せばいいやと思って忘れるというのをたびたびやらかす。
既読にしたら忘れちゃうから、既読付けないようにしようと思ったら、どんどん来る公式LINEに埋もれて未読のまま忘れる。最悪である。
なにが最悪って、これを義理の母にもやってしまうところ。
わりと長めの文章にスタンプで返すのも悪いなと思ってのはずが、一向に既読にもならんなんてもっとダメじゃん。

こうなったらLINEでもキャッチ即ぶん投げをやるしかない。
(※ただ普通に返信するだけのお話。)


家事をやるにも散漫になるというかなんというか。
あちこちで何かをやりかけてしまって中途半端で、全部終わらせるのに時間がかかる。そんなに時間に余裕なんてないのに。
洗濯物を取り込んでたたもうとする途中で、テーブルが散らかってるのに気づいたらテーブルを片付けてしまう。
テーブルにおやつがあれば、それもうっかり食べてしまう。
そして洗濯物のことはしばらく忘れる。

こうなったら家事もキャッチ即ぶん投げをやるしかない。



そうこうしているうちに、キャッチ即ぶん投げが板についてきた。

最近寒くなって、通勤にはコートを着てストールをぐるぐる巻きにするようになった。なんなら手袋だってつける。

帰りは家でやることを整理しながら歩く。
まずはごはんを炊き始めて、ゆで卵を作る。
その間に洗濯物を片付ける。
魚に塩を振ってちょっと置いてる間にほうれん草をチンしようかな、などど考えながらアパートの階段をあがる。
夫の帰りが遅かったらサボり気味の勉強もちゃんとしよう。
味噌汁に山盛りの具を入れよう。もりもりきのこ味噌汁。

自分の部屋の前にたどり着いて、カバンから鍵を出そうとして気づいた。
片手にストールを握りしめ、コートを腕にかけている。
まだドアの前なのに。

収録を終えたら楽屋に戻りながらアクセサリーを全部はずす人。なんなら衣装のボタンとかもはずす。

これやん。


新たなせっかち女が誕生した。


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