elementary OS 6 正式版がリリース!
どうも、なかのさんです。
日本時間の2021年8月11日(水)午前1時ごろ、elementary OS 6 Odinの正式版リリースのアナウンスがあったので、簡単なレビュー記事を書いてみました。
公式アナウンスはこちら。
◆ elementary OSとは
elementary OSは、2011年から開発が続くUbuntu系のLinuxディストリビューションです。その特徴は、デフォルトでいい感じの見た目で、いい感じに動作することを追求していることです。
多くのLinuxディストリビューションはユーザーによる広範囲なカスタマイズを許容していて、それはそれでLinuxの良さではあります。ただ、Linux初心者にとって、ときにはそれが壁になることがあります。それに考えてみたら、多くの人にとって、パソコンの第一の使用目的はパソコンを使って何かを生み出すことであるはずであって、パソコンの初期設定ではないはずです。
そんなわけで、elementary OSは初心者(elementary)にもわかりやすく使いやすく、そして初期設定は最低限に、余計なアプリもなくす―といった方針で開発されているのです。
◆ elementary OS のバージョン変遷
elementary OSはUbuntu LTSをベースにしているので、だいたい2年くらいで次のメジャーリリースがやってきます。
0.1 Jupiter - Ubuntu 10.10ベース
0.2 Luna - Ubuntu 12.04 LTSベース
0.3 Freya - Ubuntu 14.04 LTSベース
0.4 Loki - Ubuntu 16.04 LTSベース
5.0 Juno - Ubuntu 18.04 LTSベース
5.1 Hera - Ubuntu 18.04 LTSベース
6.0 Odin - Ubuntu 20.04 LTSベース
今回のリリースはUbuntu 20.04 LTSをベースにしているので、Ubuntu由来のアプリもバージョンアップがされています。
◆ 見た目の変化:ダークスタイルとアクセントカラー、テーマの刷新
elementary OS 6での最も大きな変化は見た目です。バージョン 0.2以来使われてきたテーマがゼロから書き直されて、よりエレガントでクールな見た目になりました。また、ダークスタイルにも対応しました。今まではPantheon Tweaks(旧・elementary Tweaks)などの非公式ツールを使うしかなかったので自己責任だったのですが、これで公式に対応したことになります。
ダークスタイルの選択は、初期設定画面とシステム設定の"デスクトップ"→"外観"→"スタイル"から変更できます。macOSやiOSのように、昼間はライトスタイルで夜間はダークスタイル―といったこともできます。
またこれらの設定画面では、ボタンやスイッチの色に使われるアクセントカラーも選択できます。"壁紙に基づいて自動的に設定"(虹色のボタン)を選択すると、現在設定している壁紙に最も使われている色を適用します。Windows 10にも同じ機能がありますね。
ダークスタイルを選択すると、対応しているアプリは瞬時にダークスタイルに切り替わります。ただこの仕組みは独自のものなので、例えばGoogle Chromeなどのサードパーティー製アプリには適用されないのが惜しいところ。外部アプリも含めた"完全な"ダークスタイルを実現するには、やはりPantheon Tweaksを使うしかなさそうです。
◆ インストーラーの置き換え
(この画像のみ公式ブログから引用)
今まで使われていたUbiquityが、Pop!_OSの開発元・System76と共同で開発された新たなインストーラーに置き換えられました。Pop!_OSではすでにこのインストーラーを使用していたので、elementary OSも満を持しての移行ということになりました。
◆ Flatpakへの対応を強化
elementary OS 6では、Flatpakへの対応が強化されています。例えばシステム設定のアプリケーションプラグで、インストール済みのFlatpakアプリのパーミッションを変更できるようになりました。
また、elementary OSはDebian PackagingからFlatpakへの移行を進めています。このためいくつかのデフォルトアプリ(カメラ、スクリーンショット、タスク、電卓)もFlatpakでインストールされるようになりました。おそらく今後のバージョンではほかのアプリも徐々にFlatpakでのインストールに移行していくものと思われます。
◆ 空っぽのAppCenter
AppCenterもFlatpakアプリのインストールに対応しているのですが、移行の一環としてUbuntuのPPAが提供するDebian Packaging形式のアプリをAppCenterに表示しないようにする変更が加えられました。このため、AppCenterはすっからかんです。
Flathubのリポジトリを追加すれば、Flathubのアプリが表示されるようになります。
$ flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://dl.flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
コマンドを打つ代わりに、Flathubから何らかのアプリをインストールすることでもAppCenterにFlathubのアプリが表示されるようになります。
FlatpakがDebian Packagingを淘汰したわけではないのに、Debian Packagingをほぼ完全に見捨てたともいえるこの変更。おそらくセキュリティーを向上させたいからとは思うのですが、Ubuntu系では珍しいと思います。
◆ マルチタッチジェスチャーへの対応
マルチタスク画面やアプリケーションメニュー、通知インジケーター、システム設定など、デスクトップ環境の各所でマルチタッチジェスチャーが利用できるようになりました。ノートパソコンなどタッチパッドがある環境では操作性が向上したといえます。
ジェスチャーの設定はシステム設定のマウスとタッチパッド→ジェスチャーから変更できます。
◆ 日本語対応への変化:パネルにIMEが表示されるように
elementary OS 5以降、デフォルトでibus-mozcがインストールされ利用可能でしたが、インジケーターなど目立つところにIMEが表示されていませんでした。このため、ibus-mozcが使えることに気づかずfcitx-mozcをインストールするユーザーが一定数いました。
elementary OS 6では、キーボードインジケーターにIME(インプットメソッド)が表示されるようになったので、これでIMEの切り替えが楽になるとともに、IMEが利用可能であることを視覚的に訴えることができるようになったといえます。
このように日本語化が進んだ一方で、ローカライゼーションに関する不具合も出ています。
デフォルトでタイムゾーンがUTCになっていて、インストール後自動でJTSに設定されませんでした。このためシステム設定→日付と時刻から”位置情報に基づいて設定”のスイッチをオフにし、手動で東京を選択しました。
◆ ファイル
ファイル(ファイラーアプリ)は、サイドバーの見た目が書き直されエレガントになりました。
また、クリックでの動作が変更されました。従来はシングルクリックでファイルやフォルダーを開く設定になっていました。しかしelementary OS 6では、ファイルはダブルクリック、フォルダーはシングルクリックで開く仕様になりました。
タブの複製や新しいウィンドウで開く動作にも対応しました。これはGraniteというelementary OS独自のライブラリに追加された機能なので、このライブラリを使用しているほかのアプリ(ターミナルなど)でも利用可能です。
◆ ターミナル
ターミナルには、タブを再読み込みする機能、URLのコンテキストメニューにデフォルトのWebブラウザで開くオプションが追加されました。
◆ コード
elementary OSにはデフォルトでIDEがついています。0.4までScratchと呼ばれていたテキストエディターを拡張させた、コードというアプリです。
ブランチ操作や変更箇所の表示など、Gitとの統合が進められているようです。私はVisual Studio Code派なので常用はしていませんが……
◆ カメラ
“カメラ”は輝度とコントラストの調整に対応しました。ミラーリングオプションも追加されています。
◆ メール
もともとGearyというアプリをフォークして開発されていた“メール”。今回コードがゼロから書き直され、システム設定で追加したアカウントを使用するようになりました。
ただGmailを使う場合、Googleアカウントの設定で”アプリパスワード”の設定が必要らしいです。GoogleがこのメールアプリのOAuth 2.0を承認していない?とかなんとか聞いたことがあります。
◆ そのほかの変更点
そのほか、システム設定でファームウェアのアップデートができるようになっていたりするみたいです。
◆ まとめ
今回はelementary OSの最新リリース、6 Odinの新機能の一部を紹介しました。日本ではそこまで著名ではないですが個人的に好きなOSなので、今後の進化にも注目したいと思います。