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甘茶


昨年十月に二本木で展示されていた彫刻作品群に衝撃を受けて以来、いつかお会いして見たいと思っていた彫刻家・新庄良博さんのお家のお庭に、先日縁あって伺うことが出来た。


石躍くん、アマチャって知ってる?と、そこへ向かう車中で二本木店主の松尾さんに尋ねられて、アマチャという名前に聞き覚えはあったものの、実際はよく知らないと言うと、新庄さんが今度つくる二本木の庭にどうかって、庭から苗を掘り出してくれてるみたいで、と松尾さんが言う。気になって調べてみると、ヤマアジサイの変種のようで、見た目は瓜二つながら、その葉が甘いお茶になるということだった。

着いて早々に、これがそう、と新庄さんが見せてくれた苗はたしかに華奢なアジサイのようで、この葉をこうして、と指で摘んでから、近くにあった水甕にしゃぶしゃぶしたものをその縁に置く。そうして乾かしたものがこちらに——って、3分クッキングみたいやな、と笑いながら見せてもらった葉は韓国海苔みたいだった。

これに湯をそそいだら甘茶になる。よく神社に植えられていて、子どもの頃は甘いものが珍しかったから喜んで飲んだものやったけど、そういえばそのまま食べたことはなかったな、とひとつ口にいれてしがみはじめる。「うん」と言うので、続けて口にいれると、これがかなり甘く、まるで砂糖そのもののようだと驚いたそばから、ほのかに海藻のような風味が追い掛けてくる。


庭とそこに併設してある工房をひとしきり堪能してから——このことを書き出すと、とても収拾がつかなくなりそうなのであいにく割愛するとして——今度は新庄さんが自分で建てたという小屋に通されて、お茶とお菓子を振舞って頂く。茶は一口飲んだ途端に甘さが迫ってきて、まさしく甘茶であった。

そうして貰って帰ってきた苗を、帰ったその足で二本木まで運び、庭となる予定の場所に穴を掘って、その土の感触を触ったり嗅いだりして確かめながら、周りに少し土を盛るように水鉢をつくって仮植えをした。途端にそこが庭になったのを見て、思わず歓声がもれる。それがただの甘茶でなく、新庄さんの庭からやってきた甘茶であるところに、実に二本木らしい庭のはじまりを見た。

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