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用無し

「きょうは草刈りだけですか?」

「そうなんです。木はいいって、主人が。前回にヒタキさんから教えてもらった切り方で、自分でもやってみたらしくて」

「そうだったんですね。あ、あのキンカンとかそうですか?」

「あぁ、そうです。昨年はたくさん実がなりました」

「枝が透いて、陽がよく当たったのかもしれないですね」

かねてから自分の庭師としての仕事は、施主の代わりに何でもやるようなサービス業というよりは、自分が庭に働きかける中で、次第に施主自身が庭師になっていくということがひとつの理想であった。それが今日に至って、昨年の夏から手入れに伺っている庭に垣間見られた。

ところが裏の方へ回ってみると、どこの庭にもまして草が物凄い。というのはおそらく、施主が庭に出る機会が少ないからだ。三つ葉も蕗もどくだみもあるのに、と刈るのも惜しかったが、「三つ葉が、去年より大きくなった気がします。これって、食べられるんでしょうか」と帰り際に尋ねられたところでは、遠からぬ先、私はもう用無しかもしれない。

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