日米の意思決定の差 〜「俺それ聞いてない」をいかに排除するか〜
今回は日本企業と米国での意思決定のフローの違いに関しての考察を書きたいと思います。
「トヨタの7つの無駄」がうまく機能しない理由
トヨタの生産性の高さや7つの無駄の話はよく取り沙汰されるかと思います。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1807/17/news014_4.html
上記はよく話題にされ、納得され、賞賛されるものの、排除できてる日本企業がどれだけあるのか疑問視しています。私もとても素晴らしいと思っているのですが、おそらく日本ではなかなか簡単にはいかないというのを私が米国で経験してきた決定的な日米の意思決定の差分の考察とともに書きたいと思います。
大企業とスタートアップの意思決定の仕方の違いや海外との違いなどに興味がある方は本記事にお付き合いください。
※米国はn=1の経験なのでズレがあるような場合は是非教えてください
日本の大企業での意思決定プロセス
日本での意思決定のスピードは一般的に遅いと言われており、いわゆる「合議制」であるがゆえに遅いと言われています。日本人としては、確かに合議だけどまあ普通じゃない?これ以上どうするの?という感じ方をする方も多いと思います。私もグローバルで勤務するまではそう思っていた節がありました。
まず、日本の大企業の意思決定プロセスに関して代表的な一例をご説明します。
日本の大企業の例で、例えばAさんが「新しいアイデアがあるからパンフレットを作りたい!」と思ったとします。Aさんはまず上司に相談します。
上司から「いいね!やろう!」となると共に、ステークホルダーへの「根回し」が開始されます。
まず近いところでチーム内での根回しが始まります。少しでもやりたいことに関わっていたり、やることの知識があるメンバーが全員巻き込まれ会議が開催され、新しいアイデアが良くも悪くも揉まれていきます。
そしてチーム内で揉まれた後に、今度はじゃあ印刷が関わる隣のチームのステークホルダーに話をしようか、と別チームに話がいきます。しっかり大企業の立ち回りが出来る人であれば上司を動かす能力があり、上司を動かして、隣のチームの上司と話をしてもらいます。すると隣のチームの上司から、「その件はEと絡むことになるからやる前にEと話をしてくれ」と言われます。Eに相談すると、「上司から聞いたんだけど、ちょっと話を聞きたいからFも呼ぶから会議をしてくれ」と言われ会議設定をします。
そしてE&Fと会議をすると、それってサポートも2%くらい関係あるんじゃない?という疑念が出て、Aさんは上司にそのことを報告し、今度はサポートチームの上司に話をつけてもらいます。そしてGと….と繰り返していき、時に手戻りが発生し、チーム内での会議に戻ったりを繰り返します。
程度の差こそあれ、日本の大企業の方であればこうした重厚な意思決定フローに大きく納得していただける感覚を持っていただけるのではないでしょうか。「根回し」自体は面倒な対象として会話の中に出てくることは多いものの、皆の話に出るかっこいい先輩はそつなくみんなに取り入って「根回し」がうまい代表例だったりします。こういう方がとても立派な人間関係構築能力を持っていることは間違い無いです。
米国での大企業の意思決定
では米国ではどういう進め方になるかというと、結構違います。
Aさんが同様に「新しいアイデアがあるからパンフレットを作りたい!」となった場合、上司に相談します。
そして上司が「やろう」となった後、上司が隣のステークホルダーの上司に話をつけにいきます。そこで懸念が出ればさらに隣の上司に話をつけにいきます。
以上です。
この流れで重要な違いが2点あると思っています。
B, C, Dが口出ししてこない
AとEが意思決定に関して会話することはない
まず1ですが、「プロジェクトオーナー(発案して実行する人)が責任と力を持っている」という原理原則に則っています。いわゆる発案した人が責任持って片付ける。上司はそれを全力でサポート、という形です。
そして2に関しては日本ではある問題ですが、よりトップダウンが強い米国だと、「上司が決めたことに従います」というスタンスなので基本的には不満だろうが聞いてなかろうがAが責められることはないです。もちろん先にチラッと話通しとくみたいなのはありますし、意思決定に該当しない情報共有や相談はガンガン行わる印象です。
違いの考察
日本でこれが起こる理由は単に『トヨタの無駄』にもある、「私はその話聞いてない」という人がいるからだと考えられます。よく、責任回避のために巻き込むと言いますが、そこまで責任回避の思考が強くて何十人も巻き込んでるケースが多いわけでもないと思います。むしろ単純に文化的な性質の方がつようと思います。日本人は学校教育からリーダーシップではなく、徹底的に合議制を叩き込まれているので、自分が意思決定に入っていないと不愉快に思う性質を埋め込まれてしまっているのだと思います。こう書いている自分ももちろんその性質を日本で成長する課程で手に入れています。
もちろん米国でも巻き込まれていないことに不満を持つ人は少なからずいます。ただ、ラインが絶対的という考え方を持っているのでプレイヤーレイヤーであれば、直属の上司が抑えるか、まあ聞いてなくて納得いかないけど上司の決定は絶対だからやろう、となるのが違いだと思います。
自分としての想い
両方経験した上で思っていることは、やはり日本の合議制の文化は一定レベルで排除されるべきだと思っています。
死者が出るレベルの慎重に進めないといけないプロジェクト以外で得することはないと考えております。
理由は、多くの場合意思決定の質(含む速度)自体、人数と逆相関しているからです。
少数のしっかり考えられる人が集まって議論することでアイデアやイノベーティブな考えが生まれることは多々あると思います。ただ大人数で議論すればするほど凡庸な意見に収束していくのは間違いないです。
冒頭に貼った下記のSlackの未読がなくなった時のメッセージや、初期Appleのプロダクトは合議で産まれたものではないのは間違いないのは皆分かっていることだと思います。
日本式のメリット
日本式の合議制の唯一のメリットが全くないかというとそうではなく、集合知になるので一定の凡庸な結果は出せることだと思います。責任を誰も取らないけど、リスクがかなり抑えられた意思決定は出せるのがメリットだとは思います。
ではどうやってやるのか?
では、どのように無駄を排除していくことが出来るのかということですが、非常に難しい取り組みだと思います。シンプルに多様性でも一定解決しますが、日本人が集まっていると難しいかもしれません。
例えば、日本のスタートアップの意思決定はどうか?大企業よりは自由度が高いと思うので一定の速度感はありつつも、個人的には大きくなればなるほど日本の大企業の意思決定スタイルに近づいていくと考えています。それは上記したように日本教育の基で育った人が多ければ、合議での意思決定に慣れているからだと思います。
この慣習を排除するためにはいくつか方法があると思います。まず、会議やコミュニケーションを①意思決定のため②情報共有のため、なのかで二つに分けて考える、ということです。
②の方は大人数であろうが問題なく、伝えたい人を入れていけばいいだけです。①の多くが問題で、何も発言しなかったり会議にバリューを出さない人が入ってしまっていたりする場合は排除されるべきだと考えられます。少し強く聞こえるかもしれないですが、「とはいってもねえ、可哀想だし。あとでコミュニケーションするし。せっかくだし」の思考自体が最終的に「俺聞いてない」を引き起こす文化を醸成すると考えています。
なので、①は会議内でバリューを出せる人数に絞るべきです。あーあの会議なんで俺の知ってる話するのに呼ばれなかったんだろう、という風に思ってしまうかもしれないですが、もし入りたければ入ればいいだけで別に干しているわけではない、というのを極力小規模なうちにカルチャー作りしていくことだと考えています。
海外ではアジェンダが最大に効果を発揮するのは、そもそも会議に参加するか意思決定に役立てる為であることが多い印象です。アジェンダは「この会議は私いらないから入らないでいいわ」の意思決定を補助するために大きく役に立ちます。
私たちの方針
ここまで色々書いてますが、我々amptalkでは「意思決定はコンパクトにしよう」というバリューを作りました。
我々は極力米国式に近づけ、オープンなコミュニケーション前提で、企画を通せた人が責任を持つ。そして大きくなってからも、不要な「私、それ聞いてない」をなくしていきたいと思います。
コンパクトに意思決定をすることで、より人と違うやり方やパンクな意思決定が出来る様なカルチャーを作っていきます。
当社では急速な事業成長と共に全方位で人材を募集しております。もしこうした私たちと働いてみたいという方がいれば是非お話しさせてください。
https://amptalk.notion.site/amptalk-95e10f19ad1646989259ed67856e5e89