29歳、シーズン開幕直前に考えていること。
JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2023-24シーズンが今週末12月9日に開幕します。
自分の所属する日本製鉄釜石シーウェイブスはディビジョン2に位置しており、開幕戦は12月10日に釜石鵜住居復興スタジアムで初戦を迎えます。
私は29歳を迎え、ラグビーを始めて14年目になりますが、今までとはちょっと違った心情で開幕戦を迎えます。
今までは、「よし!いよいよだな!」みたいな感情がまずあって、そっから緊張感が出てきたり、ワクワクが出て来たり、心配事が出てきたり、そんな感じでした。
しかし、今シーズン開幕直前の心情はいつもと違っています。
「あと何シーズンラグビー選手としてシーズンの開幕を迎えられるのかな。」
そんな気持ちが第一に出てきています。
今まではなかったこの感情は少し寂しいような、でもラグビー選手として自分と深く向き合い始めたことなのかなと、なんとも言えない感情です。
シーズンをこうして迎えられること。
そもそも毎日好きなラグビーができること。
当たり前じゃないんだよな、と開幕直前の気持ち整理の際には毎回思いますが、今シーズン開幕前の心情は、その気持ちがより一層強いです。
周りには、自分を応援してくれるファンの皆様、サポーターの皆様、家族、友達、たくさんの人がいますが、プロ選手としての役割は、そのような方々に対して夢と勇気を抱かせることではないかと思います。
僕らの職業は、極論、最低限の生活する上では必要ではない職業だと思っています。でも、こうして色々な方が支えてくださったり、時間を使って応援に来てくださったり、スポーツ選手は周りの方々あってのものだと思っています。
フィールドで下を向いている姿、落ちている姿、誰が見たいんでしょうか。
プロなので結果がもちろん大事です。結果を求めて戦います。
しかし、僕はそれよりも大事なものがあるといったスタイルでやってきました。今シーズンは、より一層、その姿を見せる覚悟で今この文章を書いています。
ぜひ会場でその姿を見ていただければなと思います。
ここからは、日本製鉄釜石シーウェイブスのホームスタジアムである、釜石鵜住居復興スタジアムについて少しお話ししたいと思います。
これが、釜石鵜住居復興スタジアムです。
自然に囲まれたスタジアムで、僕が今まで訪れたスタジアムの中で一番自然と一体になっています。
イギリスで最も売れているラグビー専門紙「The RUGBY Paper」において、世界のラグビースタジアムトップ20(Top 20 rugby stadiums)が発表され、その中に日本のスタジアムで唯一、ここ釜石鵜住居復興スタジアムがランクインしました。それほど、世界のスタジアムの中でも、他にはないような景観と一体感、そして様々なバックグラウンドがあるスタジアムだと思っています。
そして、ここでお話ししたいのが、このスタジアムがあった場所には、
元々、釜石市立釜石東中学校と釜石市立鵜住居小学校がありました。
皆さんが知っての通り、2011年東日本大震災でスタジアムがある鵜住居地区は大きな被害を受け、小学校、中学校も津波によって被害を受けました。
そのような場所に、このスタジアムは建っています。
そして、このスタジアムをホームスタジアムとして僕らは活動しています。
このスタジアムには、数えきれないほどの人々の強い想い、希望、勇気が乗せられているのです。
釜石鵜住居復興スタジアムは、僕にとっても特別な場所です。
僕はここのスタジアムにジャージーを着てグラウンドに立つ時に必ず心の中で感謝の気持ちを唱えます。
それは、色々な人の想いが乗せられたスタジアムに立つことができる人は限られた人で、当たり前ではないこと。今こうしてラグビーができること自体、当たり前ではないこと。そんな想いからだと思います。
ここのスタジアムでプレーをするからには、下を向いている瞬間はあってはいけません。落ちている瞬間があってはいけません。
色々な人の想いを受け止め、全力でプレーできる喜びを楽しむこと。
そんなことを思いながら、開幕を迎えたいと思います。
僕のラグビー選手としての柱があります。それは、
「僕のプレーを見てくれる人に、夢と希望と勇気を与える。」
今シーズンもこれをグラウンドで体現したいと思います。
共に戦ってくれる人たちの想いも乗せて。