この世で一番怖い生物
今宵はハロウィン。
生きてる人もそうじゃない人も月明かりに導かれ、
この喫茶「エブリシング」に集う。
上野「おーい、織田!こっちこっち」
織田「お、いたいた。ばっちりキメてきやがって」
上野「いいだろ?吸血鬼とか高貴でハンサムな俺にぴったりなんだわ」
織田「はいはい黙れな」
上野「お前だってよく似合ってるぜ。ジェイソンだっけか、のっぽな織田くんにはぴったりだな」
織田「どーも、あれ小林まだ来てないのか」
小林「……やあ」
上野「うぉっ…びっくりした。急に後ろから声掛けんなよな」
小林「悪いね」
織田「久しぶりだな小林、こうやってまた地元の友達と会えて嬉しいよ俺は」
上野「大学みんな離れちゃったからなー…って小林!お前、なんの仮装もしてねーじゃん!今日はなんの日だおい、逆に浮くぞお前」
小林「…」
織田「これからすんだろ?更衣室ならあそこにあるから行ってきな」
上野「ちなみに何の仮装なんだ?」
小林「この世で最も恐ろしい生物だよ」
上野「ん?なんだそりゃ…この世で最も人を殺してるのは蚊だったっけ…まさかお前蚊のコスプレするのか」
織田「そんなわけねーだろ」
小林「その生物は他の生物を徒に滅ぼすだけに留まらず、同種同士で争い、地球そのものすら脅かしてしまうほどだよ」
上野「おいおい怖すぎだろ!早く着替えてその化け物になってくれよ!」
小林「もうなってるよ」
小林?「ごめーん、遅れたー!渋滞に巻き込まれてたわ」
織田「え?ちょ、ちょっとまて」
上野「なんで…だって今俺らお前と話して」
2人は今まで話していた「モノ」の方に目を向けた。
しかしそこには彼の姿は無く、賑やかな店内と一夜限りの魑魅魍魎が談笑しているだけの空間が広がっていた。
小林「は?何言ってんだよ、俺今来たとこだし。それより見ろよ、俺の仮装!この世で最も人を殺してる生物だぜ」