【三題噺】 「夏至」 「スニーカー」 「高校生」
「日光特異体質? 」
「はい、あなたはこの世界で1人の日光に対する特殊な体質を持つ方です。なにかが原因で後天的に発現したのでしょう。」
医者という生き物はいつもよく分からない言葉を俺に伝えてくる。
「にわかには信じられないですがあなたは一定時間以上、 日光に晒されていると脳が活性化して、運動神経や感覚神経が格段に上がるみたいです。あと、どういう原理か分かりませんが運も上がるみたいです。」
確かに最近の俺の調子はすこぶる良い。体育の授業も今までの俺と比べて格段に動けているし、足だって比べ物にならないぐらい早くなっている。断じてスニーカーを変えたからではない。授業は相変わらずだったが、窓側の席に移動した瞬間、テストの満点続きだ。おかしいと思ったがどうやら俺は医者の言うように特殊な体質みたいだ。
待てよ、そういえば明日は夏至じゃないか。要するに俺がもっとも絶好調でいられる日ということだ。
「ですが、ひとつ注意しなきゃいけないことがあります。それは逆も然りで」
「ありがとうございます先生、俺やることあるからもう帰ります! 」
医者が最後何か言いかけていたがそんなことはどうでもよかった。
翌日の俺はまさに人生最高の日だった。スクラッチくじで1等をとり20万を手にしたり、好きだった女の子から告白されて付き合うことができた。
そして季節が夏から秋へ、そして秋から冬へと移り変わったとある1日のことだった。
「今日は体調が悪い…。外にも出たくないから今日は学校を休もう。」
最近、良いことがない。昨日は彼女に振られてしまったし、バイトもクビになってしまった。
「コンビニでもいくか。」
少し居眠りをして外に出たが、あっという間に日は沈んでいた。
「そういえば今日は」
その瞬間、トラックが猛スピードで突っ込んできて俺の体をはねた。薄れゆく意識の中で前に医者が何を言いかけたのか必死に考えたが、もう手遅れのようだ。
「今日は冬至か。あの青年は大丈夫だろうか。彼にとって今日は最悪の日になってしまうだろうから。」