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自由な人生を生きるために、僕はこの旅を続けることにする。

なぜ僕は旅なんかしているんだろう。こんなにも慣れないものばかりに囲まれて、全てが使いにくく、全てが思うようにいかないことばかりなのに。
蒸し暑く騒がしいバンコクの夜道を歩きながら、僕はそんなことを思った。


旅に出る前にあった高揚感は、いざ旅に出てしまうとなくなってしまう。それは旅が、自分の思い描く幻想から現実へと変わり、一気に孤独という状態に自分の身を置くことになるからだ。孤独はなかなか辛い。でも今の僕にとって、その辛さは必要なのかもしれない。


僕はバンコクへ訪れた初日から、ぼったくりチームのトゥクトゥクに乗せられ、大通りから見えない場所にある川沿いの暗い船着場まで連れて行かれたり、ホテルの部屋の鍵が壊れて、夜中に1時間もロビーで待たされたりした。
孤独であるうえに、トラブルが発生し、思うように会話ができない。こういう経験は、正直言って全然楽しくない。なんで自らこんなことが起こる場所に足を踏み入れてるのだろうと、自分を恨んでしまうくらいだ。

でもそうやってトラブルに巻き込まれている最中には、ふと自分自身と対話する機会が訪れることがたまにある。圧倒的な無力感と孤独感、そういった最悪とも言える感情を経験したとき、欲は初めてなくなり、自分が本当に大事にしたいと思うものだけが自分の中心に残る。僕は昨日、大雨と雷の音が鳴り響く薄暗いホテルのロビーで、その機会が訪れた。

自分が本当に大事にしたいと思うものだけが自分の中心に残るとはどういうことか。それは、何か自分の内側に隠れている秘めた才能のようなものに気づくということではなく、自分が一番知りたくない自分の弱さを知るということだ。
僕は昨日、部屋に入れるかどうか分からない不安を抱えながら、一人ロビーで自分と向き合っていた。

自分の弱さと大事にしたいもの。この二つだけを自分の中心に置いて生きていくこと。それだけで人生は素晴らしいものになるような気がする。たとえそれが自分に都合が悪いことであったとしても、逃れることのできない自分自身と真っ向から向き合い、その自分で生き抜いていかなければならない。

旅はまだ始まったばかり。
これからも自分自身と対話する機会が何度も訪れるのかと思うと、少し旅をすることが億劫に感じてしまう。でも自分が旅に出ると決めて出てきた以上、辞めることはできない。旅を続けることも辞めることも選択であって、人生はこんなふうに選択の連続だ。心に葛藤が生まれ、何かの選択をしないといけなくなったとき、自分自身が試される。今と同じ自分のままでいるのか?それとも新しい自分に生まれ変わるのか?
そんな問いに自らが答えを見出していかなければならない。
そしてその決断に責任を持つことが、自分の人生に責任を持つことであり、僕はそれがもしかすると、「自由な人生」という言葉の本当の意味ではないかと思う。

本当の自由な人生を生きるために、僕はこの旅を続けることにする。


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