「名古屋どて煮ストリート」”ソロの細道”Vol.24「愛知」~47都道府県一人旅エッセイ~
愛知県と言えば、”戦国の三英傑”を生んだ地であり、織田信長に豊臣秀吉、徳川家康という日本の歴史を変えた三人共に、この愛知県で生まれたのだ。
そういったこともあり、愛知県内には様々な史跡が残っていて、戦国時代好きにはたまらないエリア。
かくいう私も、大の戦国好きなので、ここ10年に何度も訪れた名古屋出張のついでに、色々な史跡を巡ってきた。
そして名古屋と言えば、もう一つ有名なのがやはり”名古屋グルメ”だろう。
きしめん、味噌カツ、あんかけスパ、味噌煮込みうどん、手羽先、台湾ラーメン、ひつまぶし、小倉トースト、そしてモーニング文化・・・。
他の地域なら看板メニューになりそうなご当地グルメが、これでもかというくらいに揃っている。
ご当地グルメも大好きな私は、それらの名物をどんどんと制覇していき、有名店の多くは既に食したのであるが、そんな中でもユニークというか、マイナーながらも楽しめたグルメが「どて煮(どて焼き)」だった。
そしてそのどて焼きの名店がひしめき合っているのが「どて煮ストリート」と言われている地域。今回はそのことを書きたいと思う。
まずそもそもの話、名古屋のご当地グルメである「どて煮」はどういうものかを説明しておこう。
大阪発祥のグルメで「どて焼き」というものがあるが、東海地方では「どて煮」と呼ばれ、独自の進化を遂げた料理である。
どて焼きは、牛のスジ肉を味噌やみりんで時間をかけて煮込んだもの。
鉄鍋の内回りに土手状に味噌を盛り、その中央でまず具材を焼き、熱により溶け出した味噌で"焼き煮込んで"いくことからどて焼きと呼ばれるようになったと言われている。
戦前から大阪の屋台で食べられるようになったと言われているが、戦後に東海地方に伝わって、「八丁味噌(赤味噌)を使う」「スジ肉以外にもモツを使う」といった独自の変化を経て、名古屋メシの一つである”どて煮”が誕生したのだ。
そんなどて煮だが、名古屋駅(地元の人たちは”名駅めいえき”と呼ぶ)から北に10分ほど歩いたところに、”どて煮”を提供する人気店が固まっているエリアがある。
最寄り駅としては地下鉄の亀島駅、ちょうど「牛島町」の交差点から北に向かって立ち並んでいるのが、「八幡屋」「のんき屋」「五條」の三店舗だ。
この三店舗は「昔ながらの飲み屋」スタイルで人気を博していて、「名古屋のどて煮と言えば」で名前の挙がることも多いお店ばかり。
それらのお店がすぐ近くで営業しているのだから面白い。
ということで、名古屋で一仕事を終えた後に、何度かお邪魔してハシゴを楽しんでいた。
このように、道路に面したところではテイクアウトも出来るようになっていたり、そもそも立ち飲みが楽しめるようになっている。
これぞ「どて」の名前の由来。たっぷりと味噌たれに漬けてグツグツと煮込んでいる。
三店舗ともにどて煮だけでなく、串カツやら焼き鳥やらもつ煮やらの大衆酒場的メニューがあるのが嬉しい。
特に串カツは八丁味噌での味噌カツでの提供もされていたりするので、大阪の串カツとはまた違った楽しみ方が可能だ。
そして何より、雰囲気が最高だった。
コロナ以降は顔を出せていないし、恐らく変わってしまっているだろうけど、隣の見知らぬ客と肩を寄せ合ってちびちびと飲む、というのはこういったお店ならではの楽しみ方であり、私はその飲み方が好きなのだ。
だからこそ、このエリアを愛していた。
お店によって「どて煮」が「どて焼き」だったりするけれど、基本的なレシピは一緒。
三店舗をハシゴしつつ、自分の好みの味、自分の好みのお店の雰囲気を探してみるのが、私がオススメする名古屋の夜の過ごし方。
三店舗とも今も元気に営業しているそうだ。次の名古屋の夜は、久々にお店のおっちゃんおばちゃんの顔を拝みに行こうと思う。