夕飯
15歳離れた同居人と二人暮らしをしている。
今日は土曜日だが、同居人は仕事だ。
私は休みなのだが、買い物に行くついでに最寄り駅まで一緒に行くことになった。
私は、買う食材に悩んでいた。
「煮たら美味しい野菜って何かなあ。大根と白菜以外で」
「とりあえずカレーの具になってるのは大体大丈夫じゃない?玉ねぎとか、じゃがいもとか…」
私は確かにそうだと納得した。
同居人は料理が出来る。今の仕事に転職するまで、料理を作ってくれていた。
しかし、転職した結果、家に帰るのが夜中になってしまい、夕飯作りの担当が私になってしまった。
私は料理ができない。野菜の切り方すら分からないレベルである。(新しい野菜を扱う度に切り方をグーグルで調べている)
とりあえずレシピ本に載っていた白菜煮と大根の煮物は(同居人のアドバイスで)出来るようになり、今は材料を少しずつ変えることで徐々にレパートリーを増やしている。
とりあえず、来週は野菜をカレーの具材に変える作戦で何とかなりそうだ。
私は、自分の母が包丁を持っていた頃が思い出せない。
母は、だいぶ昔に父と料理の味付けで大喧嘩をしてから、料理を作らなくなったような気がする。(一応それでも夕飯は用意してくれたが、冷食か惣菜が大半だった)
さらに、母は、娘の私を台所に立たせたことは一度もなかった。台所は母にとって自分の部屋のような場所だったからであろう。
こうして、私は料理が何も出来ない人になった。
そもそも、一般的な家庭の夕飯が分からなかったりする。
私が夕飯作り担当になったとき、同居人はセラミック包丁を買ってくれた。
包丁に慣れていない私のためである。普通の包丁より手を切りにくいらしい。
ピーラーも危ないからとセラミックにしようとしていたが、流石に断った。
今のところ、時々アドバイスも貰いながらなんとか夕飯を作っている。
たぶん同居人が作ったもののほうが美味しいだろうが、今のところ美味しいと言って食べてくれている。
そう言ってもらえているうちは、作り続けよう。