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「そんな軽傷かい 父の入院記前編」りょーくんの思いつき vol.13

6月の終わり頃、父が事故で入院した。

ある日私は、ユニクロでUTのスリッポンが発売されるということで、開店凸をしようとしていた。朝10時に起きて居間へ行くと母がドタバタしていた。

そして母は私に気づいて一言

「パパが事故した」

ほう、なるほど。

今思い返すと、私はかなり落ち着いていたと思う。

「今から病院いくん?」
と聞きながら、寝起きの私はすでに家を出る準備を始めていた。

10分ほどで着替えて歯を磨いて寝癖だけ直し、母と一緒に大急ぎで病院へ向かった。

受付で父の名前を言うと、すぐに来るのでお待ちくださいと言われた。病院から連絡が来た時点で処置はすでに終わっていて、移動できる状態にはなっていた。なんなら、朝10時に病院から連絡が来た時点で処置を終えた状態だったそうだ。

5分ほど待っていると、看護師さんに車椅子を押されて父が現れた。

首にギプスをはめて、大きなガーゼをつけていた。仕事着は何箇所も血が染みていて、腕や足にも擦り傷がいくつもあった。

かなり痛々しい見た目をしている。

ただ、やたら元気そうなのだ。

看護師さんに話しかけられた時はいちいち振り向こうとする。首の骨を折っているのに。話を聞いている間もいちいち頷く。

実は大したことないんじゃないか?
そんな疑問が私の頭の中をよぎる。

いや、そんなはずはない。
こいつは首の骨を折っているのだ。
でかいギプスを装着しているのだから。

多分バカなだけだろう。


母が入院の手続きをしている間、私は父から事故の顛末を聞いた。


私の父はロードバイクで通勤している。家から20分程度の距離に会社があり、1年ほど前まではバイクだったが、健康のために自転車に変えた。

どうやら、父の前を同じ速度で走っていたロードバイクが急に何かを避けて横に逸れ、それに反応できなかった父は、歩道によくあるUの字ひっくり返したような柵(?)にぶつかったそうなのだ。

(今調べたらあれバリカーというらしいですね。)

ぶつかった勢いで乗っていた自転車とバリカーを飛び越えて顔から地面に突撃し、首と鼻を骨折し、おでこと唇の上をかなり大きく怪我したそうだ。

要は自損事故である。
人を怪我させたりせず、轢き逃げでもなくてよかった。


看護師さんから聞いた話では、父は処置を終えたタイミングで仕事に行こうとしていたそうなのだ。

その日は詳しい人が父しかいない仕事だったらしい。会社に連絡をした際に、その場にいて指示を出すだけでいいから来れないかと聞かれたそうだ。

もちろんそんな状態ではないので、お医者さんが止めた。
首を骨折した人間を来させようとする会社もやばいが、行こうとする父もかなりやばい。頭をぶつけたことで、より一層バカになったのではないか。


とにかく、父は入院した。

別に私の生活に大きな影響を与えることはない。
数日に一度、母が着替えやお菓子を届けに行くときに準備を手伝う程度だ。

実際、病院を出たあとにそのままユニクロへスリッポンを買いに行った。ちゃんと欲しいやつが手に入ってよかった。

心配なんてものは全然なかった。明らかに大したことないからだ。お医者さも「なんか頑丈な体ですね」と言っていた。「なんか」ってなんだ。「とても頑丈な体」でよくないか。


とにかく、私には影響はないはずだ。

その安心は1日で崩壊した。


通り雨が降って、洗濯物を取り込むためにベランダに出るとそこには

父が趣味で育てている大量のメダカの水槽があった。

次回、「城之内 死す」デュエルスタンバイ!


後編もすぐに更新します。
次もまた読んでくれよなッ!

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