成功の基準は自分で作るもの。他人の『すべき論』に惑わされるな
【序章：この違和感は無視してはならない】
「〇〇するべき！」「成功したいなら△△しろ！」――
最近のSNSには、こうした断定的な主張が溢れかえっている。
フォロワー数が多かったり、ビジネスで大きな実績を出している“インフルエンサー”が声高に主張すると、「確かにそれが正解なのかも」と思ってしまいがちだ。
しかし、胸のどこかには「本当にそうなのか？」という違和感が残るはずだ。この違和感を軽視してはいけない。なぜなら、その違和感こそが「自分の人生を自分でデザインする」ための出発点になるからだ。
そもそも、他人が決めた“すべき論”があなたの人生にそのまま当てはまる保証はまったくない。同じように真似をしても成功しなかったとき、自己否定に陥りやすいのがオチだ。実際、心理学や教育学の観点から見ても、画一的な成功法則が万人に通用することなど有り得ないと断言できる。
「自分の価値観や強み、置かれた環境は、それぞれ違う」
だからこそ他人の押し付ける基準ではなく、自分の基準を作り上げる必要があるのだ。あなたが今感じている「なんか違う…」という思いは正しい。その違和感を行動に活かすことで、他人の価値観に振り回されない本当の生き方が手に入る。
ここから先、学術的根拠も踏まえながら「すべき論」の危険性と、「自分の基準」を作るための具体的方法を解説する。違和感を持つあなたこそ、この先を読むべきだ。
【第1章：「すべき論」に振り回されるリスク】
■ “すべき論”が人を惹きつける理由
なぜこんなにも多くの人が「すべき論」に引き寄せられるのか。理由は単純で、人間は不安や迷いがあるときに「これさえやれば大丈夫」という“確定的な答え”を欲するからだ。認知心理学や行動経済学では、こうした状況下で「権威」や「社会的証明」が強く働くと指摘されている（Cialdini, 2001）。
権威への依存：実績のある著名人の意見は、たとえ自分に合わなくても鵜呑みにしがちだ。
社会的証明（ソーシャルプルーフ）：多くの人が「いいね！」している投稿は、それだけで信用に足ると誤解しやすい。
しかし、これらの心理的要因によって流れ込んでくる情報は、あなた自身の状況を必ずしも考慮していない。だからこそ、違和感を持つのは当たり前だ。ほとんどの「すべき論」は発信者の価値観や背景に極度に依存しているのだから。
■ 盲目的に従った先にある危険
他人の基準にただ従うだけでは、次のようなリスクがある。
自分の思考停止
他人が決めた「正解」をコピーすると、自分で考える力が失われる。あらゆる行動が「これがいいって言われたから」という受動的なものになり、本来の創造性が発揮されない。失敗したときの自己否定
うまくいかなくても「自分がダメだからだ」と落ち込みやすい。元々、その“正解”が自分に合っていたかどうかすら不明なのに、自分の能力や価値観を疑うのは非常にもったいない。本当の幸福とはズレる
一時的に成功しても、その成功の定義が自分の価値観と合わなければ満たされない。結果、「こんなに頑張ったのに全然嬉しくない」という虚無感につながる。
「他人の人生を生き続けることは、最終的に自分自身を見失う行為だ」
■ 自称コーチングや自称カウンセリングの押し付け問題
近年、「コーチングが得意です」と言いながら、実際は自分の価値観を押し付けるだけの人が増えている。コーチングの国際団体ICF（International Coach Federation）では、コーチングを「クライアント自身が答えを導き出すプロセスを支援するもの」と定義している。しかし、現状では
「これが正解だから、その通りにやれ」
と、高圧的に“答え”を提示するだけの“なんちゃってコーチ”が多い。これでは、クライアント側は自分の基準を作るどころか、他人の都合の良い価値観に取り込まれるだけだ。この構図は老害的な上下関係と変わらない。
自分の人生を変えたいなら、「すべき論」を振りかざす“なんちゃってコーチ”から距離を置くべきだ。むしろ、
「あなた自身が何を望むのか？」
「どうなりたいのか？」
を一緒に考えてくれる真のコーチやメンターを探すのが賢明だ。
【第2章：成功の基準は自分で作る以外にない】
■ アダム・グラント『Originals』が示すヒント
アメリカの組織心理学者アダム・グラントは著書『Originals』（2016）の中で、「社会の常識や他人の価値観を疑い、自分独自の道を切り開く人こそが、真のイノベーションや成果を生む」と述べている。
これは何もビジネスの世界に限った話ではない。
他人が定めたルールや方法論に固執すると、オリジナリティは育たない。
「周りがこう言うから…」という理由だけで生き方を決めていては、あなたの可能性は狭まる一方だ。
それよりも「自分はこうしたい」「こうなりたい」という想いを軸に、自分で基準を作りあげるほうが、最終的には満足度や成果が高くなると断言する。
■ “自分の強み”や“情熱”に根ざした基準
ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン（Seligman, 2002）によると、人は自分の強みや情熱を理解し、それを活用するときに最高のパフォーマンスと幸福感を得られる。逆に言えば、
「他人のやり方をそのまま真似るだけでは、本来の自分の強みを活かせない」
ということだ。だからこそ、「何が得意で、何にワクワクするか」を自覚することが不可欠になる。
■ “基準”の本質は「自分が納得できるか」
基準を自分で作るといっても、偉そうに難しいことをする必要はない。要は「自分が納得するかどうか」がポイントだ。
「この方向で頑張れば、私は満足できる。」
「この数字を達成できたら、私はやり切ったと思える。」
こうした内なる声こそが、あなたの基準になる。たとえそれが世間的に見て大したことのない目標だったとしても、自分が納得しているなら問題ない。むしろ、他人に認められようと背伸びした目標を追いかけても、空虚感が残るだけだ。
【第3章：環境主導アプローチ（エコロジカルアプローチ）】
■ イビチャ・オシムが実践した“考えるサッカー”
サッカー界の名将イビチャ・オシムは、選手の判断力を育てるためにビブスを複数色用意するなど、「環境によって考えさせる」指導法を多用していた。これは「環境が人を育てる」という考えに基づくエコロジカルアプローチ（Gibson, 1979）の一例だ。
選手に向かって
「こうしろ」「ああしろ」
と口うるさく指示するのではなく、
「この状況ならどう動くのがベストか、自分で判断しろ」
と思わず考えざるを得ない状況を作る。結果、選手は試行錯誤を通じて自分なりの判断基準を獲得していく。
■ スポーツだけじゃない！ビジネスや人生にも応用可能
この環境主導アプローチは、スポーツのみならずビジネスや日常生活にも応用できる。
ビジネスの例：
社員同士のコミュニケーションを増やしたければ、デスク配置や共用スペースを工夫し、必然的に会話が生まれる導線を作る。学習の例：
集中力を高めたいなら、スマホを目につかない場所へ置き、作業机の周囲には必要最低限のものだけを配置する。個人の例：
ダイエットが目的なら、冷蔵庫にヘルシーな食材だけを常備し、ジャンクフードを買わない環境を作る。
いずれも、「どう行動すべきか」を自分や他人に押し付けるのではなく、「その行動が自然に起こるような環境をデザインする」ことがポイントだ。これにより、“根性”や“意志力”に頼らずとも、行動が変わりやすくなる。
【第4章：自分の基準を作るための具体的ステップ】
「基準を自分で作るなんて、どうやればいいの？」
と疑問を持つ人のために、具体的なステップをまとめる。
1. 自己分析を行え
まずは「自分は何が好きで、何が得意で、何に喜びを感じるのか」を洗い出す。ポジティブ心理学では、これを「強みの特定」と呼ぶ（Seligman, 2002）。紙に書き出すだけでも、頭の整理になる。
「お金や社会的評価に関係なく、やっていて楽しいことは何か？」
「どんなときに自分は一番エネルギッシュになるか？」
こうした問いに素直に答えてみるだけで、他人の基準とは違う“自分の核”が見えてくる。
2. 大まかな目標を設定せよ
完璧に数字化する必要はない。「自分は○年後にこれくらいの状態なら満足」とか、「こういう生き方をしていたい」というレベルで構わない。大事なのは「自分がそれを達成したときに心から喜べるかどうか」だ。世間一般の基準やSNSのバズワードに合わせる必要はまったくない。
3. 環境を整えろ
実際に行動を起こそうとするとき、いかに自分が望む行動を“しやすい”環境を作れるかが鍵となる。イビチャ・オシムの例に倣って、以下のような工夫を意識せよ。
作業スペースを定期的に変える（カフェ、図書館、コワーキングなど）。
付き合う人間関係を見直す（自分を鼓舞してくれる人、前向きな人と過ごす時間を増やす）。
デジタル環境を整理する（SNSのフォロー対象、通知設定などを最適化）。
自己投資を惜しまない（必要な知識やスキルが得られる環境にはお金を使う）。
「どんな行動を起こしたいか？」ではなく、先に「どういう環境ならその行動が自然と起こるか？」を考えろ。
4. フィードバックを重視せよ
行動を起こしてみたら、「これでいいのか？」と随時振り返りを行う。必要に応じて修正すればいいだけだ。最初から完璧な基準など存在しないし、基準というのは環境や自分の成長に合わせてアップデートされるものだ。
「違和感」や「うまくいかない感覚」は、むしろ良いサインだ。自分の基準を練り直すチャンスとして活かせばいい。
【第5章：実体験談〜僕が環境を変えてきた理由】
ここで僕自身の話を挟む。僕は若い頃から、
「とにかく自分を変えたいなら、まず環境を変えろ」
と考え、以下のような行動を徹底してきた。
作業場所を頻繁に変える
自宅、カフェ、図書館、コワーキングスペースなどを気分や目的に応じて使い分ける。すると不思議なことに、場所が変わるだけで集中度やアイデアの質が上がる。コミュニティに積極的に参加
ベンチャー企業やエンジニアの集まり、デザイナーの勉強会など、興味のあるイベントにどんどん顔を出す。そこには自分の世界にはなかった情報や価値観が溢れており、常に刺激を受けられる。付き合う人間関係を選ぶ
ネガティブな愚痴ばかり言う人や、“すべき論”を押し付ける人とは意識的に距離を取るようにした。逆に「面白いね、それ！」と乗っかってくれる人たちを大事にした。
結果として、「この人なら何か新しいことをやってくれそうだ」という評判が広まり、自然と新しいプロジェクトやコラボの話が舞い込んでくるようになった。これは運だけではない。環境を変え続けてきたからこそ、人と情報の流れが活性化し、自分の基準がどんどん明確になっていったのだ。
【第6章：学術的背景と引用文献】
ここまで述べた内容は、私の主観だけでなく、多くの学術的研究や理論の裏付けがある。以下に引用文献とともに要点をまとめる。
アダム・グラント（Adam Grant）
『Originals: How Non-Conformists Move the World』(2016)
常識や他人の価値観を疑い、オリジナルなアプローチを持つ人こそが大きな成果を生む、と主張。
ジェームズ・J・ギブソン（James J. Gibson）
『The Ecological Approach to Visual Perception』(1979)
アフォーダンス理論を提唱。人は環境との相互作用の中で学び、行動を選択する。エコロジカルアプローチの基礎。
マーティン・セリグマン（Martin E. P. Seligman）
『Authentic Happiness』(2002)
人は自分の強みを活かし、自分なりの幸福を追求するときに最も充実する。
ロバート・チャルディーニ（Robert B. Cialdini）
『Influence: Science and Practice』(2001)
社会的証明や権威への服従など、人が流されやすい心理メカニズムを解明。
国際コーチ連盟（International Coach Federation, ICF）
コーチングとは、クライアント自身が答えを見つけ出すプロセスを支援するものであり、価値観の押し付けではない。
これらの研究や概念から導かれる結論は一つだ。「人間は環境の影響を受けやすく、他人の基準に流されがちだが、真に成長や幸福を得るには自分の基準を持つ必要がある」ということだ。
【第7章：他人の基準を超えていくために】
では、他人の基準から自由になるために、具体的に何をすればいいのか。結論は「まずは小さな環境変化から始めよ」に尽きる。
スマホのホーム画面を整理し、不要なアプリや通知を切る。
よく見るSNSのフォロワー整理を行い、“すべき論”を煽るアカウントから離れる。
少しでも興味のある勉強会やイベントに参加し、新しい出会いを得る。
作業机のレイアウトを変え、目の前のタスクに集中しやすい空間を作る。
たったこれだけでも、思考や行動のパターンは変わる。さらに調子が良くなってきたら、大きな決断（転職・引っ越し・留学など）も検討していい。
ポイントは、「環境が変われば、自分の中の基準も自然と変化していく」という事実を活用することだ。
【第8章：あなたの“違和感”が未来を変える】
ここまで読んできて、まだ
「とはいえ、自分なんかが考えた基準に価値があるのかな…」
と感じる人もいるかもしれない。しかし、断言する。
「あなたが今抱えている違和感こそが、あなた自身を突き動かす大きなエネルギーになる」
違和感は決して無駄ではない。他人の価値観にそのまま乗っかるのはラクかもしれないが、違和感を覚えるということは「自分にフィットしていない」というサインだ。
これを無視し続けると、やがて取り返しのつかないレベルで不満や後悔に苛まれる可能性が高い。
一方、「なんか違うな」と感じたら、一度立ち止まって自分の頭で考えてみるべきだ。
「そもそも私はどんな人生を送りたいのか？」
「成功とは何を指すのか？」
「何が好きで、何に情熱を燃やせるのか？」
この問いに向き合うことで初めて、「自分が納得できる基準」が見つかる。学術的にも、この自己省察と試行錯誤こそが人間の成長と幸福に不可欠とされている（Bruner, 1961）。
【第9章：最終結論〜自分の基準を作れ】
繰り返すが、他人の基準では、あなたは決して満たされない。SNSや周囲の人々がどれだけ大きな声で「これが正解だ！」と叫んでも、それがあなたの正解とは限らない。むしろ、その違和感を大切にせよ。
環境主導アプローチを用い、自分が理想とする行動を取りやすい環境を整えよ。
自分の強みや情熱、そして幸福の定義を自分の言葉で語れるようになれ。
試行錯誤と修正を恐れるな。基準は常にアップデート可能だ。
ここを踏まえた上で、自分で行動を起こすことが大切だ。どんなに素晴らしい理論や先人の成功事例を知っていても、実際に体を動かさなければ意味がない。
「知っている」と「やっている」は天と地ほど違う。
【終章：他人の“すべき論”を断固拒否せよ】
最後に、この記事のメッセージを一言でまとめる。
「他人の基準なんかに踊らされるな。自分の基準は自分で作れ。」
これだけである。断定的だが、この言葉に尽きる。あなたの人生はあなたのものだ。どんな生き方をしたいのか、どういう成功を望むのか、それは自分で決める以外に道はない。
「他人の価値観にイライラしている暇はない。自分が心地よく成長できる環境を作り出し、自分だけの基準を形づくる」
この覚悟を決めるだけで、視界が開ける感覚を得られるはずだ。仮に途中でつまずいてもかまわない。つまずくたびに、「本当にやりたいことは何か？」を再確認し、必要があれば基準を修正すればいい。
あなたの“違和感”は、今この瞬間からあなたを変える武器になり得る。
「自分で基準を作る」と決めた瞬間、人生は大きく動き始める。
【引用・参考文献】
Adam Grant (2016). Originals: How Non-Conformists Move the World. Viking Press. James J. Gibson (1979). The Ecological Approach to Visual Perception. Houghton Mifflin. Martin E. P. Seligman (2002). Authentic Happiness. Free Press. Robert B. Cialdini (2001). Influence: Science and Practice. Allyn & Bacon. International Coach Federation (ICF). https://coachingfederation.org/ Jerome S. Bruner (1961). “The Act of Discovery.” Harvard Educational Review.
【あとがき：違和感を行動に変えるとき】
ここまで約10,000字にわたって、他人の「すべき論」に対する違和感と、自分の基準の作り方を論じてきた。
最後にもう一度強く言う。
「なんとなく腑に落ちない」「ちょっと違うかも…」という思いは、自分を守るシグナルだ。
それを無視して、他人の基準に合わせる人生を送るのはあまりにもったいない。むしろ、その違和感をトリガーにして、まずは自分なりの基準を作るための試行錯誤を始めればいい。環境を変え、行動を変えることで、自分が本当に望む世界が少しずつ見えてくる。
さあ、行動せよ。
「違和感」はあなたの未来を切り拓く最強の武器である。
迷うより、まずやってみる！ それこそが他人の基準を超えていく一番の方法だ。
（この記事が、あなたの違和感を肯定し、自分の道を切り拓く一歩になれば幸いである。ぜひ何度でも読み返し、自分の基準を育てる参考にしてほしい。）