見出し画像

実論と虚論

答えがない「虚論」に巻き込まれないために

論ずること自体虚しい、答えのない問いもある
扱っても実のある情報が何ら出てこないものを「虚論」と呼ぶ
どんな問にも答えがあると思いがちだがその認識は誤り


「虚論」の5類型

①本来的に検証性を欠く「空論」

本来的に検証可能性を欠くもの

「3は完全な数である」
「3が好き」なら分かるが、3が完全な数かは誰にもわからない

確かめようがないというのが特徴
空論を論じたり考えたりするのは大いなる遊び
事実追求や発見は無理

架空の人物がどうするか
ナポレオンが今生きていたら、など

身の回りに空論があった場合
メモしておくことで、巻き込まれないチェックが自分で可能になる

②同義反復にすぎない「無論」

一見正しい実感を与えるが何ら新しい情報を与えない
報告としてはまったく何の足しにもならないのが特徴

「雨が降る日は天気が悪い」

「親を生んだ子はいない」

どんなときに使われるかが問題
オレの言うことをおとなしく聞けというときによく使われる
特定の勝手な議論を補強する効果がある
人の心に圧迫感を与える力がある

「やっぱり女は女だ」
用語同士の言い換え可能関係で自動的に正しいが
特定の事実の報告・データとは意味が違う

前半が正しいので、後半も正しいような気がしてしまう
無論はこんな具合に利用される

「1+1=2なんだよ、だから君は僕に従うべきだ」

③感情に基づく「情論」

論の形をした感情表現

「人の命は地球より重い」

確かめようがない
「真理は一つ」
この言葉からは何もわからない
要するにオレの言うことに同意しろと、遠まわしの表現

「○○主義」の類は、情論
「○○が好きだ」と言っているのと同じ
「何も実証されなくても私はこれを選ぶのだ」ということ
観察される現象に関する知識とは違うので、支持者の多寡で効力が変わる

④知覚能力が及ばない「超論」

知覚可能性の点で話の受け手が同じ基盤に立つことができないもの

目の見えない人の国へ目の見える人がいって、見えることを説明するのと同じ

確かめられない


霊の世界の話
事実はどうあれ、多くの人にとって目の見えない人にとっての色と同じ

超論に属する話は多く、「教え」の形をとる
皆には見えないが私には見える的な、力強い断言
本当は何にも分からないのについていく集団がつくられたりする

⑤ズレたことを言い切る「暴論」

全面肯定しかねることを言い切ってしまっているのは暴論
単純な結論が多いのが特徴
その単純な結論から次の単純な結論を出すための土台にされる
どんどん行って、最後に社会的に有害な考えに引っ張っていく

単純な人は、推論の各ステップで厳密なチェックができないので引っ張られる
うっかり問答に加わること自体、何らかの誤りを含んだ思考の土俵に引き込まれる

「会社は継続しなければならない」

一応うなづいてしまいそうな論
実際はすべての会社がそう言えるとは限らない
「ねばならない」の程度も様々考えられる
社会に甚大な害悪を及ぼすことと引き換えに存続をはかろうとする場合
是認できない
主張をまず認めさせ、合意することで、かねて用意の犯罪まがいの生き残り戦略を承認させようとする
一つの企業でも永遠にそう言えるとは限らない

実論か虚論か区別する

実論の条件を備えた実世界の事実に関する報告、言明の特徴
すべて仮説性、つまり確かさの点で完全ではない
完全に確かなのは、言葉同士の約束ごとに基づいて自動的に正しい場合のみ
すなわち「無論」の場合のみ

虚論について知っておくことで
「あ、これは虚論だ」と見抜ける
つまらない議論や実のない議論に巻き込まれないで済む
虚論を「知識」や「洞察」に見せかけて権威を演出するタチの悪い思想などを回避

一応、真理という概念は持っているが、
真理に近い言葉はあってもイコールの言葉はない
「○○には真理が書いてある」それ自体に、単純・粗雑な思考回路を持つ層向けの虚論らしさが現れている

言葉の意味は文脈で決まる

言葉の前後の言葉や文の意味と相互に関わり合っている
一つの言葉に一つの意味があると単純に考えがち
よって、一か所の言葉をメモなどで保存しても表現された意味は完全ではない

ある程度確かな解釈ができるためには
言葉がどのような文脈で使われたかを確かめることが必要

皆が一斉に反応している意味のとり方で本当によいのかな、と考える


出典:「心の自立」著者:大和信春 出版: 明元舎 はる研究院

#心の自立
#マインド
#考え方
#人間関係
#成長

いいなと思ったら応援しよう!