楽しい週末
世は四連休だった。
運よく自分も金曜日から三連休になっていたので、彼氏が遊びに来てくれた。
我々は新幹線を使うくらい離れたところに住んでいるので、会うのは月に1度と決めている。彼の方は「そんなに頻回に会わなくても・・・」なんて言っているが、何を舐めたこと言っているのか。正直、月一ですら自分には厳しい時がある。
今まで遠距離恋愛というものをしたことがなかった。歴代の彼氏とは毎週末、なんなら週に2回でも3回でも会える距離にいることが多かったし、同棲をしていたこともあった。交際相手とべったりとした関係性しか築いてこなかった自分が、今の彼氏との恋愛に順応するのには時間がかかった。
お互い仕事をしてるのでLINEは朝と夜のみ。それも相手の残業や飲み会、自分の勤務シフトによっては噛み合わず、少ない時は1日2−3往復なんて時もある。人によってはそれが普通だという人もいるだろう。特に男性なんかは意味のないLINEをするのが苦手なんて定説もあるし、彼もそのタイプだったらしい。おしゃべりクソ女の自分とは相性が悪いことこの上ない。遠距離なら尚更だ。だが、なんとか自分に合わせてLINEを返してくれているらしい。たまに電話もするし、私たちは概ね順調だと思う。
そんな彼と1ヶ月ぶりに会った。
慣れてきたもので1ヶ月くらいなら久しぶりという感じすら薄れてきた。私にしてはかなりの成長だ。
部屋でゴロゴロしてる時、レンタカーを借りて運転している時、夜の散歩をしている時、彼は相変わらず私の知らないバンドミュージックを流してくる。
そもそも趣味趣向が真逆のベクトルに近い我々なので、BGMも私のTWICEの後に羊文学、BLACK PINKの後にくるりが流れる変な空間になる。たまに私の流している曲を遮ってヤマダ電機の曲を流したりしてくる。子供か。
楽しい3日間が終わって。彼を東京駅まで見送りに行った。次に会うのは8月末。また1ヶ月後になる。まだ始まっていない夏がもう終わる頃なのだ。どれだけ馬鹿っぽいと言われても私は四季の中で夏が一番好きだ。暑い日差しと陽炎と屋内に入った時のクーラーの涼しさ、熱帯夜の寝苦しさや朝早くのちょっとだけ涼しい気温、飲み物から滴る水滴と汗ばむ洋服が共有できないまま過ぎ去っていくのは少し寂しい。
じゃあね、ありがとうと言って彼は改札に入っていった。
手を振って自分も踵を返した。
こういう時に遠距離恋愛の曲を聴くと絶対泣くので、くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」を流した。彼の残り香のようなものを嗅ぎたかった。
「しょうろんぽーじゃ足りない 思い出ひとつじゃー やーりきーれないだろう」
マジでそれな。
ちなみに彼には内緒でパンツを一枚パクっておいた。1ヶ月間これでなんとかするしかない。