怖い話
それは練馬区のアパートで一人暮らしをしていた時の話。
私は部屋でゴロゴロしていた。時刻は23時半。すると階下から何やらおじさんたちが会話する声が聞こえてきた。その声は階段を上って3階の自分の部屋の前で止まった。
ピンポーン
おじさんたちがインターホンを押してきた。おじさんの知り合いなどいないので無視。酔っ払いかなんだか知らないがどうせ反応がなければいなくなるだろう。
ところがおじさんたちは諦めずに何回もインターホンを押してくる。
(なんだ?やばめのやつか?)
その時一人のおじさんがドアをドンドンとノックしてきた。
ドンドンドン !〇〇さーん!
ちなみに〇〇は私の苗字ではない。全く聞き覚えのない名前だった。
そしてこの瞬間気付いたのだが、私は玄関の鍵を閉めていなかった。これはまずい。
話し声も筒抜けなくらい古いアパートだったので廊下を歩く音に細心の注意を払いながら扉の前へ移動する。
カチャリと音がしないようゆっくり鍵を回し、なんとか閉錠した。
その瞬間
ガチャガチャガチャ!!
おじさんがドアノブを乱暴に回してきた。
(知り合いの家だと勘違いしてるにせよ勝手に扉を開けようするってどういうこと???)
この迷惑なジジイめ通報してやろうか。だいぶ恐怖を感じたが好奇心もあったのでドアスコープを覗く。
ドアスコープ越しにおじさんと目が合った。
正しくはおじさんの目しか見えなかった。
おじさんは反対側からドアスコープをのぞいていたらしい。ドアの厚み3cmを隔てて見つめ合う私たち。
(ヤベエ!!!!なんでこいつ外側から覗こうとしてるんだ!!何も見えないはずなのに!!)
一気に早くなる鼓動。怖いがドアスコープから目が離せない。すると階下に降っていたもう一人のおじさんが上がってきた。不審に思ったのか郵便受けの名前を確認してきたらしい。しかし不審なのはお前たちのほうだよ。
「ここの人〇〇さんじゃなくて××さん(私の苗字)らしいよ。」
とドアガチャおじさんに伝達している。
(そうだよ私は××だよ。わかったら早く帰ってくれ・・・)
すると
「え?××さん?・・・おーーーい!××さーーーん!」
なんとドアガチャおじさんは私の名前を呼び始めた。
意味がわからない。〇〇さんに会いにきたんじゃないのか?誰でもいいのか?
本気で通報しようか迷い始めた頃におじさんたちは諦めたのか帰って行った。
あのおじさんたちは一体なんの目的があってうちに来たのか。もしかしたら古い知り合いが以前住んでいたのかもしれない。このアパートで唯一私の部屋にだけ手すりが付いていたのだが、もしかしたらあのおじさんたちと同じくらいの年代の人が住んでいたからなのかもしれない。だとしても、住んでいる人の名前がわかった後も名前を呼ぶのは意味がわからない怖さがあった。