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「行動デザイン」のためのデザインガイド その1
社会心理や行動経済学で実証された人間の行動原則をどうサービスやプロダクトに反映させることができるのか?社会起業家のためのグローバルネットワーク+ACUMENが発行している資料を元に実際の現場で使うことを踏まえ、紐解きます。
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新しいイノベーションが失敗してしまう理由の1つは「人は明らかに生活を良くすると分かっていても、現状にしがみついてしまう習性がある」ためです。石鹸で手を洗うことは清潔さを保ち、感染症を予防できる。明らかに健康に良いと分かっても「情報を与えるだけ」で人の行動はなかなか変えられません。
子どもに手洗いを促すために石鹸の中におもちゃを入れたように、時に行動デザインは直線的ではないことがあります。石鹸の例のようにユーザーの環境や日々の習慣に合わせることができれば、その人にとってより良い習慣や判断のキッカケ、パターンを生み出すことができます。
もし、人が新年に立てた抱負や10年のライフプランに基づいて動かされていると思ったら間違いだ。理解しなければいけないことは「人が実際に取っている行動はなにか?」ということだ。−Dan Ariely
最初のステップはターゲットユーザーを決めることです。そのターゲットユーザーが日々どんな暮らしを送っているのか鮮明にイメージできるようになる必要があります。彼らがどうやって決断を下しているのか知ること、彼らを理解することが強いデザインを生む資産になり、それが行動のデザインの基礎にもなるのです。
ここに参考になる11の問いがあります。もし答えられないようであれば、ターゲットユーザーにインタビューしてみたり、観察してみたりしましょう。
キーワードで理想のユーザー(または既存ユーザー)を表しましょう
1.彼らはどこに住んでいますか?また年収は?
2.職業は何でしょうか?
3.年齢やジェンダー、家族構成は?
4.教育水準やデジタルリテラシーのレベルは?
5.毎日の流れは?
6.彼らの望みはなんでしょう?
7.憧れている人はどんな人でしょうか?
8.誰の話を信頼して聞くでしょう?
9.誇りや自慢に思っていることは?
10.何を失うことを恐れているでしょうか?
11.最大の心配は?
ユーザーへの理解が深まったらターゲットになる行動を決めます。結果や気持ち・感情ではなくあくまでも「行動」にフォーカスします。
例えば「松田君は選挙CMを見て、政治への関心が高まった」(Outcome)ではなく「松田くんは選挙CMを見て、投票に行く」(Behavior)でなければいけません。
あいまいな表現も避けましょう。「会議を活性化させる」ではなく「社員が会議で、他人の意見に賛成か反対か、折衷案があるか発言させる」のように具体的に決めます。
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ターゲットとなる行動にどんな手順でユーザーはたどり着くのか?小さいステップに細かく分けて文章に落としていきます。カスタマージャーニーマップなど使ってみるのもいいでしょう。ただし、ここでは感情ではなく、ユーザーが取る行動を具体的な文章で書くことを忘れないでください。
マップができたら「摩擦の素」を探します。摩擦の素とは料理を美味しくする素ではありません。主に「決断すること」「複雑で複数の選択肢」から成り立ちます。ユーザーにとって判断の必要がある、またはどこをクリックするか選ぶ必要がある、立ち止まって考える必要がある時、「摩擦の素」は生まれます。使い方によってはユーザーの動きを遅らせたり、逆に望ましい方向に向かわせることもできるのが特徴です。マップに書いたユーザーの行動を改めて見て、こう問いかけてみましょう。
どれくらいの努力がユーザーにとって必要だろうか?
それぞれの行動はユーザーにとって緊急性があると感じられるだろうか?
どんな「摩擦の素」をユーザーは超えなければいけないか?
「摩擦の素」の力は想像以上にユーザーに影響します。小さなチェックボックスですらユーザーには摩擦となるのです。(Terms&Conditionのチェックボックスをクリックし忘れてサインアップができなかった経験は誰しもあるはずです)
では、どうやって「摩擦の素」を見つけるのでしょうか?上手に見つけるには行動と行動の「間」に注目することです。例えばオンライン英会話を始めた会員は最初の1週間、会員の約90%が使うが2週間経つと約50%に減ってしまう。この場合、最初の1週間の行動と翌週の行動の「間」になんらかの摩擦の素が潜んでいます。
マップをもう一度振り返り、最も摩擦の素がありそうな5つの行動を選びます。ユーザーはどんな摩擦の素に出会いそうか、それぞれの行動に対して書き出してみます。
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実際に人が自律的に行動を起こすためには「目標意図(goal intention)」と「実行意図(implementation intention)」に分けて考える事ができます。目標意図とは、自分が成し遂げたい目標のこと(私は英語を話せるようになりたい)。実行意図とは、目標を達成するための行動をいつ、どこで、どのようにとるかを事前に決めているものです(通勤時に英単語を10個覚える)。
どちらかが欠けていると目標達成率は低く、2つがしっかり設定されていると最も目標達成率が高くなります。年始の書き初めで書いた目標が「目標意図」、しかし「実行意図」は立てていない人がほとんどではないでしょうか?
この実行意図には公式があり「もし〇〇な状況になったら、□□する」と表すことができます。ユーザーが障害や摩擦の素にぶつかった時、どんな行動をしているでしょうか?改善策をいきなり考えるのではなく、ユーザーが本来の目的(目標意図)を実現するために取っている行動を明確にしておきます。
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次号では人が動く6原則をもとにプロダクトやサービスにおけるインセンティブの設計を解説します。
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