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『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』('20)感想

《2021年1月23日(土曜)》
今日は雨で出かけられないので家で子供と一緒に本を読んだりアニメを観ていた。

昨年末に子を連れて観に行った『劇場版ポケットモンスター ココ』。映画館の物販で買った本を子と読む。サントラは映画を観に行った日から子のiPhoneに入れてあり、子は自転車後部座席でよく聴いている。

本を読み、そのストーリーの進行にあわせて「その場面で流れていた音楽」を子は口ずさむ。記憶力に驚く。かかる制作コストは別にして「映画の半分は音」だなとあらためて思う。


その後に、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』('20/監督:田口智久)を一緒に観た。観る作品のチョイスは子に一任している。

【ご注意を:以下、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』ラストまでの内容に触れています】

少し混み入った説明になるが、ちょうど今、デジモンの新作テレビシリーズ8作目『デジモンアドベンチャー:』が放送されていて、子は毎回楽しみに観ている。その8作目は99年放送のテレビシリーズ「1作目」の時代背景を東京オリンピックが終わった2020年8月以降にしたリブート作品なのだ。で、今日観た『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』は、「99年版の1作目」の主人公たちがあれから年月が経ち成長した姿を描いた作品で、登場するキャラクターに馴染みがあるのだ。子が気に入って何度も繰り返し観ている名作『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』('00年/監督:細田守)もシリーズ1作目をベースにした劇場作品だ。

しかし、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』。こ、これはエグい。良い意味でエグい。子供でなくなったらデジモンと別れなくてはならないという作品内ルールが明確に語られてから以降の展開が凄い。

思春期の最後尾の年齢に達したが未だデジモンがパートナーとして傍にいる、かつて初代シリーズで・主人公で・子供だった、太一とヤマト。‪


本作で登場するゲストキャラクターのメノア(松岡茉優の鬼気迫る演技が素晴らしい)は、14歳で飛び級して大学生になった際にパートナーのデジモンを失った過去を持つ。メノアは喪失感を埋めようと、「選ばれしこどもたち」(デジタルワールドを救うために召喚される主人公たちの通称)が永遠にその姿でいられるための「ネバーランド」をつくろうとする。かつてメノアのパートナーだったデジモン・モルフォモンは蝶をモチーフにしたデザインで、メノアは大人になっても蝶の髪飾りをつけたままだ。

蝶。そう、この映画では冒頭で初代TVシリーズのOP主題歌だった故・和田光司の名曲 「Butter-Fly」 がTVサイズで流れるのだ。

太一のパートナーであるアグモンが進化したウォーグレイモンと、ヤマトのパートナーであるガブモンが進化したメタルガルルモン、その二体が合体した最強形態のオメガモンですら歯が立たない敵が登場する。子はオメガモンが初登場して大活躍する「ぼくらのウォーゲーム」が大好きなので、そのことにショックを受ける。

しかし、何もかも通用しない強敵の前で、アグモンとガブモンは、最後の姿へと変化する。それまで2〜3頭身にデフォルメされたキャラクターだったデザイン上の頭身がグッと上がる。子供時代の終わり。その姿を見た子が「大人のときのウォーグレイモンやん、それでこっちは大人のときのメタルガルルモン」とデザイン上の意図をはっきり読みとっていて驚いてしまった。それほど本作の演出意図と感情の導線が見事だということだ。本作を子と一緒に観ていて気がつかされたことはいくつもあるけれど、なかでも「iPhoneが出てる!」と子が指摘したのには驚かされた。‬そこ、気づくのか!と。「ぼくらのウォーゲーム」にはスマフォは出てなかったからね。

「かき氷が食べたい」「おまえメロン味でよかったよな」「太一おっきくなったね」「おまえは変わらないな」「ねえ明日はどうするの?」「明日のことはわからないな……そうだ、明日一緒に……」。そんな何気ない会話を最後に太一とヤマトの前から消えるデジモンたち。青空に映えそうな夏の積乱雲はもう暮れかかった夕焼けの中に暗く沈んでゆく。それを観た子は「太一もヤマトも完全に大人になったってことやな」と言う。

細田守監督の二作『デジモンアドベンチャー』『ぼくらのウォーゲーム』を中心に、様々な場面で過去作へのオマージュ——私は「笛を吹く」ところで涙ぐんでしまった——が明確に持ち込まれており、劇場スクリーンに映えるであろう美しいレイアウト、劇場作品のリッチさに相応しいエフェクト(エフェクト作画監督:橋本敬史!)と画面構成も素晴らしい。 

日本の児童向け玩具関連アニメの極北のような、いわばシン・デジモンのような本作が、当初はシン・エヴァンゲリオンの公開予定と同年公開だった。なにせデジモンは97年「シト新生」の三ヶ月後に発売された携帯ゲームが元になっている(アニメ化は99年)。

本作を評するのにレトリックを弄することが許されるのなら、まるで「東映アニメーションによるエヴァへの回答」かのようでもあり、終わらせることでしか永遠は始まらないという意味では、名作『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』を彷彿とさせた。

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