ちょっと贅沢な鉄道旅 ハイグレード車両「なごみ(和)」で上野から東北本線経由で利府(宮城県)へ
在来線の長距離列車は数を大きく減らし、今では東北、山陰、九州を除き姿を消している。かつては大都市から地方都市へ全国津々浦々を運行した長距離列車は新幹線や航空機、高速バスにその役割を譲っている。
貨物線の旅でお馴染みのクラブツーリズム鉄道部は、E655系ハイグレード車両「なごみ(和)」を使用して上野から仙台を経由して利府まで在来線で行くツアーを2024年12月7日に開催し同ツアーに参加した。東北本線を経由し北へ向かった。
旅のポイント
①全車グリーン車のE655系「なごみ(和)」でゆったりおくつろぎください
②那須塩原駅・福島駅・仙台駅ではドアが開きます
③クラブツーリズム鉄道部員が同行いたします
鉄道が大好き!鉄道の知識が豊富なクラブツーリズムのスタッフが皆様をお迎えします。
※体調不良により変更となる場合がございます。
④台紙付きクラブツーリズム鉄道部オリジナル硬券セット付き
臨時特急ひばり51号
この日の列車名は特急ひばり51号。東北新幹線が開通するまで上野ー仙台間を1時間に1~2本の高頻度で運転された主力特急列車である。当時は上野ー仙台間を4~5時間で結んだエース特急と言って良い。今回は特急ひばり号に思いを馳せながら上野から北へ仙台を超え、東北本線の支線である利府線・利府まで7時間30分かけて進んでいく。
1人3席使用可能、贅沢な旅が実現!
この日のツアーは申込者が少なく席に余裕があったため、1列3席の使用が許された。クラブツーリズム鉄道部のツアーでこのようなことは珍しいのかもしれないが、余裕があるからこそ存分に満喫してほしいということなのかもしれない。右に左に席を移動しながら流れゆく車窓を満喫させてもらった。
朝日の差し込む上野駅
休日早朝の上野駅の地平ホーム。かつてはここから東日本各地へと長距離列車が発車していたホームであるが、現在の地平ホームは閑散としており、かつての賑わいは感じられない。現在でも宇都宮線、高崎線、常磐線の一部始発列車が地平ホームを使用している。乗車するE655系なごみは上野駅13番線に入線した。濃紫色の上品な車体がホームに入線すると一気に旅の豪華さを感じられる。全車グリーン車指定席の5両編成で、この日は4号車に乗車した。
上野→那須塩原
上野駅7:45定刻に発車した。発車すると高架ホームからの線路と合流し、山手線、京浜東北線、常磐線と日暮里まで並走する。地平ホームから発車した線路は尾久車両センターへの回送線に直通できるため、東北本線は実質複々線となる。日暮里駅には東北本線は停車しないためホームは設けられていないが、この駅で常磐線と別れる。この先岩沼駅で再び常磐線と合流する。また地下からは東北新幹線が現れ、この辺りは鉄道ビュースポットとなる。高架ホームからの線路と合流し尾久駅を通過する。車窓左手には尾久車両センが見え、通勤電車のほか、カシオペアの客車など様々な車両が留置されていることを確認できる。尾久駅付近からは確認できないが東京新幹線車両センターも位置している。山手・京浜東北線であれば田端駅付近に当たる。王子駅の手前で京浜東北線と東北貨物線(湘南新宿ライン)と並走しやがて池袋からの埼京線と合流し赤羽を通過する。
赤羽を通過し荒川を渡ると埼玉県に入り川口、西川口、蕨、南浦和と京浜東北線の各駅を通過する。東北本線は浦和とさいたま新都心を除き列車が停車しない。さいたま新都心駅の左手には大宮貨物駅が位置している。貨物駅を眺めながら大宮駅で運転停車する。大宮を出発すると高崎線と別れ一気に北へと進路をとる。大宮までの密集した住宅とは異なり、車窓が開け徐々に首都圏を離れていくことが実感できる。宇都宮までは前後に普通列車が運転しているため時間調整しながら低速で運転する。豪華特急車両らしくない走りではあるが、臨時列車ということもありその点はやむを得ない。栗橋駅の先で利根川を渡ると茨城県に入る。次の古河駅は茨城県に位置しているが、すぐに栃木県に入る。
東北新幹線と日光線の接続駅宇都宮も通過する。かつての特急列車も小山は通過することがあっても宇都宮には大半が停車していた。列車は大宮を発車してから運転停車なしで那須塩原まで走行した。那須塩原8番線には10:10に到着し最初の扉開放が行われた。
那須塩原→福島 東北本線を北へ!
那須塩原を発車し東北新幹線と並走を続けると宇都宮線の終点・黒磯に到着する。黒磯では乗務員交代のための運転停車となった。東北本線・上野ー黒磯間は宇都宮線の愛称が付けられ、旅客案内上も宇都宮線として案内される。黒磯駅1番線には貴賓室へとつながる少し豪華な扉がある。東北新幹線が開通するまで那須御用邸への玄関口として黒磯駅が使用されていた。現在では那須塩原駅が使用されるため現在は使用されることは少ないと思われる。
黒磯駅でもう一つ忘れてはならないのが交直切替である。2017年ごろまで黒磯駅構内に電源切替区間が設けられ、黒磯を境に北側が交流電化、南側が直流電化区間となっており、長いホームが特徴であった。特に貨物列車や寝台特急などの機関車牽引列車は黒磯駅で機関車の付け替えも行われていた。電車においても交流・直流両方に対応できる列車であっても黒磯に停車し電源の切り替えを行っていた。また、福島方面からの普通列車は交流電源対応車両であったため、黒磯での折り返しとなっていた。
2017年秋のダイヤ改正で電源切替地点が黒磯駅の北側に移転したため、列車の運行体系が変化し、交流、直流両方に対応できる車両のみの運行となり、黒磯ー新白河間はE531系が使用されている。交流対応車は新白河駅で全て折り返しとなっている。なお、今回乗車したE655系なごみも交直両方に対応しているので直通運転が可能となっている。
黒磯を発車すると早速、交直切替区間(デッドセクション)を通過する。那珂川の鉄橋を渡る手前で直流から交流へ切り替わる。切替区間は電気が通電していないため、死電区間(デッドセクション)と呼ばれ非常電源のみで走行し、車内空調もすべて止まる。国鉄型車両では車内の明かりが消えることからちょっとしたイベントでもあった。デッドセクションを通過すると、一気に東北地方を感じさせる車窓へと変化していく。長距離列車ならではと言っても良いだろう。栃木県から福島県の県境は白河越えと呼ばれ、関東地方と東北地方の境にも当たる。かつて白河の関と呼ばれた関所も存在したエリアに入ってきた。およそ20分で新白河へと到達し次の白河で運転停車した。新白河は東北新幹線が停車する駅であるが、ここは福島県西郷村にあたり、白河駅が白河市に位置する。
白河を発車すると左に白河城の天守閣が確認できる。この先も東北本線を北へと走りづける。90㎞/h前後の比較的のんびりとしたスピードが心地よく矢吹、須賀川の小都市を通過していく。やがて阿武隈川と並行する区間を走行していく。
安積永盛で水戸からの水郡線と合流し、広大な郡山貨物ターミナル駅を通過すると郡山車両センターが右手に見え再び東北新幹線と合流すると福島県の主要都市郡山に到着する。
郡山は運転停車のみで乗務員の交代が行われた。駅構内には貨物けん引の機関車や石油を運搬するタンクローリー貨車が留置している。郡山駅の北側にはオイルターミナルが位置しており関東地方から東北方面への石油の輸送拠点にもあたる。郡山駅は磐越西線、磐越東線の接続駅でもある。西は会津若松、新津方面、東はいわきへとつながる。
郡山を発車すると福島までの35分間ノンストップで走行する。東北新幹線のやまびこ号で所要時間15分およそ倍以上の時間をかける。90㎞/h前後の走りとジョイント音が心地よくあっという間に時間が過ぎてしまう。
金谷川から南福島までは峠を越えると同時に上下線が別線で敷設されており、上りと下りで車窓が異なるのも面白い。特に南福島駅手前では福島市街が一望でき圧巻の車窓である。上下線の間からは福島トンネルを出た東北新幹線や東北自動車道と並走する。
左手には安達太良山の一部も確認できた。福島駅3番線には12:12に到着し8分間停車した。福島駅で2度目の扉開放が行われた。
福島→利府、レアな利府線への入線
E655系なごみで行く特急ひばり号の旅はすでに行程の半分を終えている。福島駅での扉開放が終わると仙台で3回目の扉開放が行われる。次の仙台まで岩沼での運転停車を除き通過運転となる。福島を発車すると左手には山形新幹線からの東北新幹線へと繋がる2本目のアプローチ線が確認できた。すでに工事は大詰めを迎えており、2026年頃から使用開始となる見込みである。2本目のアプローチ線が完成すると、東北新幹線の運行上支障となっていた福島駅での上り新幹線の下り線を経由してやまびこ号とつばさ号の連結が行われていたのが、上り線ホームでの連結が可能となり、より柔軟にダイヤの設定ができるものと思われる。
右手からは福島交通飯坂線としばらく並走する。その後東福島駅手前で阿武隈急行線の線路と別れる。阿武隈急行線はこの先槻木で接続するが、福島ー仙台間の最短距離は阿武隈急行線経由となるが、JRとは別会社であることや単線区間であること、運行本数が少ないことから実際にはローカル線として機能している。東福島駅を通過すると、伊達、桑折、藤田と直線区間が続く。藤田を通過すると、越河超えと呼ばれる難所を通過していく。
貝田駅の先で福島県から宮城県に入る。越河を通過すると山を下り白石を通過する。東北新幹線の白石蔵王駅は当駅から少し離れた場所に位置している。東北新幹線は福島から仙台手前まで直線区間となっており、その長さはおよそ25kmに及ぶ。
一方の東北本線は白石から先はカーブが連続する区間を走っている。大河原駅の先から白石川と並走する。船岡までの区間は春になると白石川の築堤いっぱいに桜の木が植えられており満開の桜を列車からも楽しめる絶景スポットとしても知られる。槻木の手前で左にカーブすると阿武隈急行線と合流する。槻木駅は中線に阿武隈急行線のりばが設けられている。大きく右にカーブして直線を進むと山間の形式から広い平野に出ると右手から常磐線の単線線路が現れる。東京日暮里で別れた線路と合流すると岩沼駅4番線に到着し12分の運転停車となった。
岩沼を発車するとここから先は仙台都市圏に突入する。東北本線のほか常磐線や名取から先は仙台空港アクセス線の列車が運行されるため運転本数が増加する。仙台まで低速運転と信号待ちが連続する。
長町を通過すると広瀬川手前から宮城野貨物線と別れる。仙台駅を経由せず東仙台まで続く貨物線で途中に貨物ターミナル駅が存在する。仙台駅7番線には13:37に到着した。7番線は通常は仙山線の列車が発車するホームである。
20分ほど停車し、13:57に仙台を発車した。東仙台を通過し岩切駅で運転停車した。岩切駅では利府行きの1番線に到着した。
岩切を発車するとこの先は利府線を走行する。E655系なごみが利府線を走行するのは極めて稀であり貴重な乗車体験となる。利府線は単線で途中に新利府駅が設置されている。左手から新幹線総合車両センターへと繋がる回送線と広大な車両基地が望める。新利府駅は新幹線総合車両センターへの最寄り駅となる。一面一線のホームをゆっくりとした速度で通過した。新利府からおよそ3分で終点の利府に到着した。上野から7時間半の豪華な長旅が終了した。岩切から利府までの車窓を動画に纏めたので合わせてご覧いただきたい。
特別な時間(7時間半)は思ったよりも短い
上野から東北本線経由で仙台を超え利府までのちょっと贅沢な旅を楽しませてもらった。全席グリーン車指定席の幅広な座席に身を委ねると流れ行く車窓と走行音が心地よく充実した時間を過ごすことができた。7時間半は振り返ればあっという間に過ぎていった。新幹線でも在来線の乗り継ぎてもない旅を提供いただいたクラブツーリズム鉄道部の皆さん、ありがとうございました。
翌日もE655系なごみの旅が続く。利府から常磐線経由で上野までの旅である。今は無き特急スーパーひたち号に思いを馳せる旅にも参加したのでお楽しみに!