北陸特急乗り納めの旅⑤スーパー雷鳥(サンダーバード)復活!神戸から北方貨物線経由で金沢へ約4時間30分の旅
特別な1日
4年に一度だけ訪れる2月29日木曜日にクラブツーリズム鉄道部が特別なツアーを開催した。それも681系または683系を使ってJR西日本から経営移管される前の北陸本線(敦賀~金沢)を乗り尽すツアーである。平日ながら発売が開始された2023年12月29日からほどなくしてキャンセル待ちが発生した。筆者も平日ながらこのツアーに参加した。
このツアーは当初、七尾線の和倉温泉まで直通する壮大なプランであったが、元日の能登半島地震により七尾線が臨時ダイヤで運行していることもあり、臨時列車の入線が困難なことから金沢駅までの運行となった。
スーパー雷鳥(サンダーバード)の復活
このサブタイトルにお気づきに方もいると思う。かつて神戸駅を始発とする北陸特急の存在である。1989年から2001年までスーパー雷鳥号の一部が神戸駅を始終着としていた。今回のツアーは筆者が思うに「スーパー雷鳥」を彷彿とさせるダイヤとなる、そんな期待を膨らませながら神戸駅へと向かった。
その期待通り列車名はスーパー雷鳥サンダーバード51号(列車番号は神戸から京都9060M、京都から金沢9061M)とされた。
この列車名は681系の誕生からしばらくして、485系のスーパー雷鳥と区別するため、1995年4月20日のダイヤ改正で登場し、スーパー雷鳥(サンダーバード)と表記された。スーパー雷鳥の中でも681系使用列車はさらなる速達化が図られた。
神戸駅1番のりばから
神戸駅の1番のりばは、平日朝の時間帯に使用される専用ホームである。平日朝ラッシュ時以降は閉鎖され、使用頻度が限られたホームである。平日の朝ラッシュ時間帯に新快速と快速列車が同駅で待避し、2番のりばから発車する新快速が先を行くダイヤが設定されている。
列車は9:10に入線した。この日使用されたのは681系3両編成V12編成で、この日のために非貫通編成(連結器の無い先頭車)を金沢向きに設定された。実は北陸新幹線開通前は非貫通編成が先頭となっていた。また、車体は旧サンダーバード塗色で、主催したクラブツーリズム鉄道部関係者が可能な限り登場時を再現することに努めたと言える。
列車は9:22に発車した。
2番のりばからの本線に合流する。これほどゆっくりと神戸駅を発車する列車に乗車したのは初の経験である。
列車は元町駅、三ノ宮駅を通過する。定期列車で三ノ宮を通過するのは下りのサンライズ瀬戸・出雲のみであり、これまた貴重である。
北方貨物線を通る特別ルート
この列車は特別なルートを走行する。その一つが北方貨物線を走行することである。
尼崎駅を9:42に通過し、神崎川を渡るとJR東西線は地下へ潜り加島駅に到る。JR神戸線にホームは設置されていない。阪神高速池田線の高架をくぐると、塚本信号場で転線し、いよいよ北方貨物線に入る。右側からは塚本駅から分かれた線路と合流する。
山陽新幹線と並行しながら、程なくして車両基地が見えてきた。旧宮原総合車両所で現在は大阪駅発着の回送列車が停泊している。サンダーバード号もこの場所で停泊し折り返しいる。長距離列車の休養場所とも言える。
列車は停泊する車両を横目に9:48通過し、新幹線高架下に入り左カーブに差し掛かったところで新大阪駅おおさか東線ホームを横目に通過している。このまま貨物線の線路を吹田貨物駅まで走行する。貨物列車など旅客輸送がない列車が貨物線を走行するのはかなりレアである。
吹田貨物駅を走行
吹田貨物西に9:53到着、9:55に発車した。貨物駅にはJR貨物乗務員詰所があり、その場所に鉄道神社がある。
貨物線を旅客列車が走行するのは極めて珍しいが、今まさにその珍しい体験をしている。
千里丘駅の先まで貨物線をゆっくりと走行し、本線と合流した。合流して茨木駅、JR総持寺駅を通過。摂津富田駅を通過してすぐに明治の巨大チョコレートパネルが見えると、高槻を通過した。
山崎10:10に通過し、京都10:18に0番のりばに到着した。
乗務員交代後10:22に発車した。
湖西線、北陸本線を走る
山科を通過して長等山トンネルを抜けると10:30を大津京を通過した。
堅田10:392番のりばに到着し、時間調整のため10:47まで停車する。
ホームのない1番線
湖西線を高速で駆け抜け、近江今津には11:08、ホームのない1番線に入線した。
ホームのない線路に入るのも特別列車ならではである。
サンダーバード15号を待避し、11:30に近江今津を発車した。近江中庄、マキノ、永原と通過する。マキノから近江塩津間は駅間の殆どがトンネルで結ばれ、再び高速運転を行う。琵琶湖の北端が見え、米原方からの北陸本線と合流し、近江塩津3番のりばに停車した。
北陸ロマンの車内メロディーが2度流れる
近江塩津駅での停車中にサンダーバード号で使用される北陸ロマンの車内メロディーが2度流れた。
遅延が奇跡を生み出す
サンダーバード17号に道を譲った。先を行くサンダーバード17号が4分遅れのため、当初の出発時刻から4分遅れることとなり、近江塩津11:58の発車となった。しかし、この遅れがこの列車に1つの奇跡をもたらす。それは後ほど明らかになる。
近江塩津3番のりばは北陸本線のホームである。
同駅発車後、湖西線の線路と合流して、滋賀県と福井県の県境を含む新深坂トンネルを走行する。トンネルを出ると新疋田を通過し、鳩原峠を下っていくが、遅れているサンダーバード17号のすぐ後ろを走っており、速度を落としながら敦賀へと向かった。敦賀には12:10到着。
乗務員が交代し、12:12に敦賀を発車した。
敦賀を発車してしばらくすると、北陸自動車道の高架手前でデッドセクションが設置され、電源切替区間を通過する。切替区間を過ぎると北陸トンネルへと進入する。この北陸トンネル内でとあるイベントが行われた。トンネル内の一部で車内照明を落とし、減光走行を行った。荷棚下の明かりを消して約5分走行した。
北陸トンネルを出て短いトンネルを1つ抜けた先に南今庄駅がある。この先南条を通過するまで高い山の間を走る。杉津峠を超えてきた北陸自動車道とも何度か交差する。
今庄駅を通過すると、列車は徐々に速度を上げる。武生を12:32、鯖江を12:36に通過するが、所定より2分程度の遅れまで短縮されていた。遅れを回復するべく当初のプランにはなかった高速運転が急遽実現した。全くの予想外で、この先直線区間が続くこともあり、高速爆音を楽しむ事ができた。
そのおかげもあったのか福井にはほぼ定刻12:44に到着した。
力強い走り
芦原温泉までも直線区間続くため、定期列車も含めてこのあたりでは高速運転である。
芦原温泉12:56に通過し、牛ノ谷峠を超えて福井県から石川県に入り大聖寺を通過すると、北陸新幹線の高架をくぐり加賀温泉13:07に到着した。
13:30までの停車時間を利用して簡単なイベントが行われた。大阪車掌区特製のサンダーバードラストラン記念カードである。数量限定のため、参加者によるジャンケンで勝利した者がカードをゲットできるものであった。筆者は運良く勝利することができたため、画像の通りカードをいただいた。金沢、和倉温泉のラストランを記念したもので貴重な記念品をいただいた。
しらさぎ号を待避した後、加賀温泉を出発し北陸本線をひた走る。小松をゆっくりとした速度で13:39に通過する。
小松駅には北陸新幹線が発着する。
美川駅の手前で手取川を渡る。車窓右手には白山連峰が見えた。冬の北陸は曇り空の日が多くなりがちだが、この日は晴れ間も見え、3,000メートル級の山並みの頂上付近は雪化粧していた。
あっという間の4時間半
加賀笠間駅手前から北陸新幹線と並走する。ここで車掌氏からお別れの挨拶がなされた。クラブツーリズム鉄道部が投稿したXに動画が貼付されているのでぜひともお聞きいただきたい。お別れの放送を聞きながら、加賀百万石の城下町金沢には13:58、7番のりばに到着した。
回送列車となり14:07、金沢駅のホームを後にした。
七尾線には直通できなかったが、特別な時間旅行となった
通常ダイヤでは間違いなく実現できないルートでの旅であった。この特別列車に乗務されたJR西日本の長尾車掌はこの道40年のベテラン車掌で、今回は車内放送はもちろんのこと、丁寧かつわかりやすい沿線案内が心にしみた。普段見ている当たり前の風景がアナウンス一つで新たな発見があったりと心に残る時間旅行であった。長尾氏は今年の7月で退職されるようで、貴重な放送を聞くことができた。
アナウンス前の北陸ロマンの車内メロディーが旅情を掻き立て、4時間半に及ぶ旅を盛り立ててくれた。企画に携われたクラブツーリズム鉄道部の皆様方に心から感謝御礼を申し上げたい。
北陸特急の運行も残すところあと2週間を切ったが、残りわずかの特急列車を堪能することにしよう。
おまけ
最後に加賀温泉駅停車中に収録した北陸ロマンの車内メロディーをどうぞ。
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