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東京実業VS目白研心 2021年東東京大会2回戦

7月10日(土) 球場:江戸川区球場

2年ぶりに開催された「夏の風物詩」全国高等学校野球選手権大会地方大会、いわゆる甲子園への道。東東京大会2回戦で実現した新旧“大物食い”対決に注目してみた。多摩川河川敷沿いに専用グランドを持つ東京実業は、1996年夏に前年全国制覇の帝京を4回戦で下し大番狂わせを演じた。2019年には前評判を覆し東亜学園を初戦で撃破するなど、上位進出を幾度も果たす。監督はかつて桜美林を選抜出場に導いた後、東京実業を率いて約40年の山下秀徳監督。東京を代表する監督である。一方目白研心は新宿キャンパスでの練習が週1回、平日は主に外部施設を利用と決して恵まれた環境ではない。しかし2018年秋、その年の夏の甲子園で4強入りした日大三を破ったジャイアントキリングは記憶に新しい。指揮官は自主性を求める鈴木淳史監督。新潟明訓で甲子園に出場、大会第一号本塁打を放つ貴重な経験の持ち主。大学卒業後は日本航空でコーチを務め、目白研心の監督に就任。ベテランと若手の監督の采配にも注目した。

試合はセンタからホームに緩やかな風が吹く中、応援席がほぼ満席の目白研心の先攻で試合が始まった。先頭の有田がショートのエラーで出塁。相手が与えた「流れ」を掴めればと思った瞬間の1塁牽制、タッチを掻い潜ったように見えたが判定はアウト。このジャッジはその後の目白研心の攻撃のリズムに大きな影響を及ぼすことになった。2回には先頭打者がヒットで出塁するも盗塁死、3、4回はスコアリングポジションにランナーを進めるも1本が出ず。四球や死球が絡んだだけにこれを生かさなければ「流れ」は相手に移ってしまう展開。見方を変えればサイドハンド気味から投げる東京実業先発加藤の打者によってプレートの踏み位置を変え、内外角をうまく使った巧みなピッチングを褒めるべき。一方東京実打線は相手先発左腕大川に4回までに5奪三振と、一人のランナーも出せず完璧に抑えられる。しかしイニングを追うごとに暑くなり始め、雄叫び上げ出した力投型大川のスタミナが心配になった。

試合が動き出したのは5回。目白研心は1死後9番富田がライト前にヒットで出塁、盗塁後に2番中村がライトへのツーベースヒットを放ち先制する。東京実は2死からショートのエラーで初めてランナーを出すも7つ目の三振を喫す。6回、目白研心は先頭打者が出塁すること4度目、犠打で送りセカンドにランナーをおくも後続が倒れ無得点。先制したもののまだ「流れ」に乗れず、主導権を握れない中、先発大川がその裏に死球に四球と制球に乱れが生じ始めた。最後は8つ目の三振を奪いピンチを脱したが、スタミナの消耗は明らか。ブルペンにはエース安保の姿が…そして試合が大きく動き出した。

7回、9番永井が四球を選び、富田がしっかり送り、迎えたバッターは1番有田。実は試合が始まってからこのチームのキーマンと見ていたが、ここでセンター方向へのタイムリーツーベースを放ち、四球からのチャンスで貴重な追加点を挙げる。続いた好機で試合を決めきれず、「流れ」は東京実業へ。その裏、ここまでノーヒットピッチングの大川だったが先頭十鳥にセンター前にチーム初ヒットを許し、続く打者には死球出したところで降板。エース安保が登板も内野にこの試合2つ目の失策が出て無死満塁。ここで目白研心はこの試合最初の守備のタイムを取る。東京実業は1死満塁からのライトフライでタッチアップが出来ずに無得点に終わり「流れ」を手放したかに思えた。しかし、それ以上に心配だったのはリリーフした安保、180㌢を超える大型左腕だが下半身が上手に使えず、スピードも球威も今ひとつ、制球力も安定していない。8回、目白研心はピンチを凌いだ直後4番からの攻撃であったが外野にフライを3つ上げ、“手番”を相手に渡してしまった。この場面は守備から攻撃へのリズムを断つために得点出来ずとも守備でプレッシャーを与える仕掛けを何かしら見せて欲しかった。その裏、1番濱中がライトへのヒットで出塁後にスチールを決め、続く上武が四球を選ぶ。審判団がインフィールドフライ状況であることをサインで確認後、ここまで2三振の3番神谷がレフトへタイムリーを放つ。これまで大川のストレートと変化球に全くタイミングが合っておらず、ベンチとしては送る戦術もあったかに思えたが強硬策に。ストライクは簡単に取らず、内外に緩急を織り交ぜ、打ち気をそらす慎重な配球が求められる場面だった。1死後向井のセカンドゴロが失策となり同点、さらに飯田の犠飛で試合をひっくり返した。逆転されて迎えた9回、目白研心の攻撃は下位打線から。7番玉山がレフトへのヒットで出塁、ここで東京実業は2つ目の失策を犯し、逆転のランナーが出る。1塁側に犠打を決め、1死2、3塁に。ここで東京実業内野陣は前進守備を取らない大胆な采配。1番有田は死球となり1死満塁と攻め立てる。しかし、ここで2番手高梨が2者連続三振に切って取り、新旧“大物食い”対決は3安打の東京実業が8安打を放った目白研心との接戦を制した。終盤に「流れ」が二転三転するゲームだったが、序盤から中盤は劣勢の中、失点を最少で止め、終盤に相手の攻撃が一瞬緩んだ隙を逃さず逆転した東京実業。日頃からどんな状況になってもあきらめない強い気持ち、踏ん張る力を大切にする山下監督の指導が生きた試合であったように感じた。一方、目白研心はベンチとスタンドの「一体感」と「繋がり」があり、試合終了後に学校関係者が「次はお前達の番だぞ!」と投げかけた言葉に次世代の選手が目力強く応えたのが印象的。近い将来、飛躍が期待できる学校になると思えた。

目白研心 000 010 100= 2  H:8 B:4 E:3
東京実業 000 000 00*= 3  H:3 B:4 E:2

(可里 了)


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