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温泉旅館のブランディングを考える
日本を代表する温泉旅館である「加賀屋」の再開が発表された。
能登半島地震によって和倉温泉全体が壊滅的な被害で、
加賀屋を名立たる温泉旅館が営業不能に陥ってから、1年を過ぎてからの発表だ。
温泉文化を支援したい私にとっては、非常に喜ばしい事ですが、業界を牽引して来た「加賀屋」がどんな施設でどんなサービスを提供するのか楽しみです。
「加賀屋」は、言わずと知れた日本を代表する温泉旅館のひとつで、業界の発展に大きく寄与してきた旅館であることは周知のことですが、実際に温泉旅館のブランディングを考えたときに、その要素は何なのかを考えたことがありました。
(以下は、2015年の秋、加賀屋別邸という位置づけで新しいサービススタイルの「松乃碧」をオープンさせたときの投稿に追記したものです。)
「加賀屋別邸 松乃碧」は、以前「銀水閣」という屋号の温泉旅館で、廃業して数年たった施設を新たにオールインクルーシブのサービスモデルを導入して再生させた旅館だ。
オールインクルーシブは、宿泊料金の中に、館内で提供されるサービスあらゆるサービスが含まれており、その分価格は5万~で、当時の一般相場から考えれば3倍近くの料金だ。
当然、それに見合うサービスを期待する事になるかと思うし、これまでずっと日本一の温泉旅館と言う看板を背負ってきた「加賀屋」という屋号を冠にして、オープンさせると言うのは、かなり大きなチャレンジだったと思う。
そこで、「加賀屋」というブランドを考えてみる。
まず、多くの人がそのブランド要素として真っ先に思い浮かぶのが、
「日本一」
ということでしょう。
しかしこの日本一というのは、
業界紙が毎年開催しているランキングイベントで、
業界プロたちが、日本のホテルや旅館をいろんな視点で選び、
ランキング付けをしているもので、
加賀屋は、毎年当たり前のように総合1位を獲得していると言う事である。
これはすなわち、
「プロたちを唸らせるサービスをいっぱい持っている」
ということに過ぎない。
そこでこの「プロ」と言うのがくせ者で、
一年に一回くらいしか温泉旅館にご縁のない私たち一般庶民にとっては、
「プロ=専門家」という目線となり、
「プロが選ぶ」=「本物」=「失敗しない」
という安心感につながっている。
これが「加賀屋」が持っているブランド要素です。
自分もそうだがこう思う背景にあるのは、
「温泉旅館での不快な想いをした経験」
「しょぼい内容で高額な料金を請求された経験」
ではないだろうか。
しかし、「失敗しない」というブランド要素とは別に、
忘れてはならない要素がやはりあるのである。
「宿泊サービスの価値」は分解して言えば、「滞在する空間の体験が、自分の期待どおりのものか、そして金額の対価として納得できるか」という事だろう。
しかし、実際にはこれだけではないのが現実で、宿泊した利用者のベネフィットが他の旅館とは違ってくるのだ。