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バレンタインと言えば思い出されるあの記憶。

今年もやってきました。バレンタイン🍫。

小さな頃から唯一嫌いな食べ物が『チョコレート』だった僕は、毎年2月14日が苦痛でなりませんでした。

✔︎ そもそも全然もらえない
✔︎ もらっても食べられない
✔︎ 嫌がらせ義理チョコが届く

これぞ世に言う『バレンタインの三重苦』でございます。チョコレートの匂いすらも嫌いだったので、バレンタイン当日に学校中で漂う香りで僕の心はベトベトに淀んでました。


そんな僕でも、印象的なバレンタインの思い出がいくつかありまして

今日はそんな淡い思い出を 小説風 に書いていこうと思います。


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届かないメールアドレスの先

小学校最後のドッヂボール公式大会。本気でやっていたからこそ、最後の大会に懸ける想いは強かった。

予選をトップ通過して、決勝トーナメントに向けて意気揚々と待機スペースで昼食のおにぎりをかじっている時だった。突然他のチームの男子が僕らの前にやってきた。

「岡田くん、いますか?」

当時流行ってたV6のメンバーの名前かのように呼ばれた言葉が、空気の振動とともに耳に届く。一瞬、自分のことだとは気づけず、3秒ほど間をあけて返事をする。

「あっ…、僕ですけど…」

相手の顔に見覚えはなかった。ということは対戦したチームの人ではない。試合に負けた逆恨みで果たし状を持ってこられたわけではなさそうだ。

「うちの女子が岡田くんに渡してくれって」

周りにいた同じチームの仲間たちから歓声が上がる。その男子が差し出した手には、明らかにチョコレートの入った袋が握られている。

「えっ…、あぁ、、、ありがとう」

ちゃんと渡したからな!と言い残し自分たちの待機スペースに戻る後ろ姿を見ながら、僕は身体中の体温が急上昇していっているのを感じた。試合中より多いんじゃないかというほどの背汗が流れてた。

チョコレートをもらうこと自体が初めての経験だった。しかも、それが大勢の友達や自分の親の見ているところで、となれば舞い上がってしまうのも仕方がない。

「おい、チョコ食べれんのにどうするだ〜?」

同じ小学校に通う友達はみな、僕がチョコレートを食べられないことを知っている。公衆の面前でチョコをもらうという一大イベントを前に、冷静な判断が出来なくなっていた僕は、この場面で最も言ってはいけない最悪の言葉を発してしまった。

「食べたい?
あげるよ、全然。食べて食べて」

きっと、僕にチョコを渡した女の子は遠くからその様子を見ていたはずだ。自分が想いを込めて用意したチョコを、すぐに友達に渡してしまった姿を見て、どんな気持ちになっただろうか。今なら容易に想像できる。

「みんなの前で渡す方が悪い」
「直接渡さないなんて想いがない」
「そもそもチョコ嫌いにチョコを渡すなよ」

当時はそんな自分よがりな考えで自分の行動を正当化してたけど、きっとその子は違う学校に通う僕に想いを伝えようと、最大限の勇気を振り絞っていたんだと思う。僕はそんな想いを無下にした。最悪の男だ。

そのチョコレートには手紙が同封されていた。

◯◯小学校の▲▲です。バレーボールの大会で岡田くんの姿を見て好きになりました。もしよければメールアドレスに返事をください。

小学6年生の岡田少年は、ドッチボールだけでなくバレーボールや陸上で県大会上位に入るほどのスポーツ万能少年。そんな姿を見て違う学校なのに好きになってくれた。なんて幸せなことだろうか。

2003年2月。そのときの僕には「メールアドレス」の言葉の意味がわからなかった。

かろうじて母親がパソコン用のアドレスを持っていて「返事をしたら?」と言ってくれていたけれど、僕は「ハイカラな奴は好かん」とメールを送ることをしなかった。

もしタイムマシンがあるならば、あの頃に戻って「ありがとう」とLINEしたい。


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キスはいつも甘苦いチョコの味

その日は部活がオフだった。部活の同級生と「今日の放課後は教室で勉強しようぜ」と約束しつつ食堂でカツ丼を食べているとき、廊下から手招きする姿が見えた。

僕の所属するバレー部には女性マネージャーが3名いた。高校2年生の先輩2人と、同級生に1人。僕はその同級生マネージャーのことが好きだった。

食堂にいた僕を呼んだのはマネージャーたちは3人並んで「はい!」とそれぞれ袋を差し出してきた。みんな僕がチョコ嫌いなことを知っているはずなので「チョコ以外のお菓子をわざわざ用意してくれたのか!優しい人たちや…」と感動して受け取ると、中身は全部チョコ。チョコチョコチョコ。

「あっ……、そうだった…。
忘れてたよ、ごめん。」

僕のなんとも言えない表情に気づいた全員が同じ反応を示す。

部員全員に対して同じものとは言え、それぞれ自分なりのチョコを作ってくれていた。ただただその優しさだけで幸せなはずなのに、チョコが食べられない僕の顔はこわばったままだった。

「妹さんにプレゼントしてあげて!」

優しく先輩マネージャーが声をフォローしてくれる。だけど、僕の胸は痛んだままだ。チョコ嫌いで産まれてきてごめんなさい。ほんとごめんなさい。

放課後。部活の同級生と勉強をしながら話すのは、やはりチョコレートについて。僕の好きな相手を知っている彼は、僕にこう告げた。

「チョコはもちろん食べるでしょ?」

彼の目は本気だった。好きな人からもらった手作りチョコを食べないなんて、そんな奴は男じゃねぇ。そう訴えてくる見えない迫力に負けた僕は、こう言った。

「そっ、、そりゃそうだ。
食べるに決まってる。
食べるに決まってるだろ」

この言葉をゴングに、30分間にわたる僕の闘いが始まった。

一口サイズの生チョコ。普通なら10秒もあれば食べ切れるその塊を、僕は口に運ぶ。一気に飲み込んでしまおうと試みるが、喉が侵入を拒否する。飲み込めない、飲み込めない。

だったら液体と一緒に流し込め。そう思って水を含んでみるものの、喉は液体だけを綺麗に通過させ、口の中には固体のチョコレートが残ったままだ。

人体の神秘をこんなところで発揮させなくてもいいのに。人間とはなんと愚かな生き物だろうか。

というかなぜ溶けない? 冷静に振り返ってみると意味がわからず混乱する。

チョコって28度ぐらいで溶け始めるんですよね?
生チョコって普通のチョコより溶けやすいんじゃなかったですっけ?
僕の口内温度って冷蔵庫並みに低いんですか?

いつもどうやって食べ物を飲み込んでいたのかわからないぜベイベー。

僕は涙を流してた。たった一口サイズの生チョコを食べることがこんなにも難しいことなんて知らなかった。

30分間の格闘の末、口の中のチョコレートは溶けて無くなっていた。味の記憶はない。だけれども、チョコを作ってくれたマネージャーへの感謝と、食べろと言ってくれた友人の優しさだけは、いまでも強く覚えてる。


それから9ヶ月後、その同級生マネージャーと付き合うことになった。

翌年のバレンタインに貰った「巨大プリン」よりも、付き合う前の「生チョコ」の方が印象に残っていることを、彼女は今もまだ知らない。


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というわけで、今日はいつもと全く違うテイストで書いてみました。

ちなみに、チョコレート嫌いは無事に克服しています。28歳のいま、普通にチョコが食べられるようになった話は以下のブログに書いているので良ければ読んでみてください。


今日の記事は以上です。
素敵なバレンタインを過ごした方はぜひコメントでエピソードを教えてください。

では、またあした〜!

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りょうかん
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