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「自分のことは自分でしましょう」もだいじだけどね…
今日の給食は、メンチカツフライでした。給食で揚げ物が出るたび思い出すことがあります。フライにかけるソースをめぐるできごとです。
ソースをめぐる物語
私は、障がいのある人が利用する事業を経営しています。利用者の皆さんと一緒に食事をしているときのことです。その日もソースが必要なメニューでした。しかし、ソースは私から離れた所に置いてありました。私が「ソースを取ってください」と言うと、誰かしらが取ってくれました。
しかし、利用者が「ソースを取ってください」と言うと、別の支援者から「自分で取れるでしょう」と言われることがあります。この違いは、なんでしょうか。
暗黙のルール
障害福祉サービスを提供する事業所では「自分のことは自分でしましょう」という暗黙のルールが存在します。それが自立だと勘違いをしている支援者もいます。
また、利用者が自分で実行した結果、失敗をして注意されることもあります。その利用者が、一人で実行をすると失敗する率が高いということは、日ごろのやりとりからわかっていることです。本来は、そこを予測して上手に介入しなければいけません。
支援は、自分のことを自分やらせるだけではありません。自分の課題を自分で解決する、もしくは解決しようとする勇気を支えることです。
よけいなことをしなくていいから
また利用者が、他の利用者の手伝いをすることを嫌がる支援者がいます。手伝いをしようとした利用者に対して「いいのあなたは」とか「よけいなことしなくていいから」などと口にします。これでは利用者が持つ貢献感をだいなしです。その反面、支援者からは調子よく頼みごとをすることがあります。勝手です。
以前は私も「よけいなことはしなくていいから」をよく使っていました。たとえばこんな感じです。
「人のことはいいから…」
事業所で旅行に行ったときのことです。私は3人の利用者と一緒に温泉に入っていました。一人の利用者は、ほとんど支援の必要がない人でした。また一人は、常に横について支えていなければいけない人でした。もう一人は、半分ぐらい支援が必要な人でした。その人は、世話好きな人でした。
一緒に温泉に入っていても、自分のことより、他の利用者の世話をやこうとしました。そのとき私は、その利用者に言いました。
「人のことはいいから、先に自分のことをしてください」
そのころの私には、その利用者の貢献感に気づくことができませんでした。そんなことがたくさんありました。今は、申し訳ないことをしたと反省しています。
貢献感を大切に
支援者と利用者の境界線をはっきりさせようとすると、利用者の貢献的な行動がおせっかいに思えてきます。自分のことを自分ですることはだいじなことです。しかし、人の手伝いをしてからでも遅くありません。貢献感を否定されると自分のことを自分で解決しようとする気持ちすら失われます。
やっと利用者の貢献感に応えて「ありがとう」と言えるようになりました。また反対に、利用者の貢献感に甘えすぎています。一番自分のことを自分でできていないのは私のようです。