
障害福祉サービスとキャッシュレス化
社会はキャッシュレス化が進んでいます。私の働く分野、障害福祉サービスとキャッシュレス化について考えたことを書きます。
法人が業務委託をしている税理士事務所から機関紙が届きました。その中のに「“お賽銭”“お年玉”までキャッシュレス」というコラムがありました。
記事によれば、神社のお賽銭箱の脇にQRコードが掲示され、それを読み取ることでお賽銭が支払われるという仕組みで、外国人観光客に人気とのことです。また、お年玉は、おじいちゃんおばあちゃんが遠く離れた孫にQRコードを送ることでお年玉をあげられます。
記事を読んだときは、なんだか風情がないなぁ…、と思いました。しかし、これは私の中の勝手なストーリーです。お賽銭がキャッシュレス化されたからと言って、神様の価値が下がるわけではありません。我が家は、毎年、お賽銭箱の前で小銭がないと騒ぎます。また、お年玉をQRコードで渡されても、お金の価値も変わらないし、おじいちゃんおばあちゃんとの関係も変わりません。反対に、おじいちゃんおばあちゃんがスマホを使えるならば、テレビ電話で孫と会話をすることができ、かえって嬉しいかもしれません。
私たちは、自分たちで勝手に作った物語の中で生きています。その物語の中にないことが起きると嫌悪感を抱きます。
昨年、消費税が上がる前、レジ買い替えのダイレクトメールが来ました。障がいのある人が働く売店のレジをキャッシュレス化しませんか、という内容のメールでした。それを読んだときは、利用者がお客様から現金を受け取り、お釣銭を返すという一連の動きもプログラムの一つなんだけどなぁ、などと思っていました。しかし、その理論も私の経験に基づく、私の物語でした。
障がいのある人が働く売店のレジでは、接客は利用者が行います。しかし、レジ打ちは支援者であったり、支援者と利用者一緒になって行うことがあります。もし、それがキャッシュレス化されていたら、支援者は必要ありません。利用者だけで売店をまわすことができます。この方が可能性がたくさんあるということに気がつきました。
すでに駅の売店では、人を介さないで買い物ができます。お金の計算が苦手な利用者も店番ができます。支援者が考える、「自立」は時代とともに変化しなければいけません。
今から30年前、私はとある障害者入所施設で実習をさせていただきました。当時その施設では、自立訓練という名のもとに、利用者が横に並んで洗濯板を使って洗濯をしていたのを見て驚きました。全自動洗濯機があたりまえの時代です。支援者は、自立とか訓練という題目の前で化石になっていました。
これからの支援はIT技術を積極的に取り入れていかなければいけないと思います。