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一日の内、何度も死んで何度も生き返る
私は、一日の内で何度も死んだり生き返ったりします。せわしない一日です。利用者の中に、昭和のドタバタコメディのようなやり取りが好きな人が何人かいます。その利用者に何度も殺されます。何発も銃弾をくらい、何度もメッタ斬りにされます。無残な毎日です。しかし、楽しい毎日です。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人の本部は、日中活動事業所に併設をしています。そのため、毎日、利用者の皆さんが私のところに顔を出してくれます。その中のある男性利用者が、毎朝、私に銃弾を何発も打ち込みます。
私は、毎朝、撃たれる
彼は、広告の紙とセロハンテープで銃を作ります。まず、広告で細い筒を何本も作り、それを組み合わせます。そのため、日中活動の工賃が入ると近所の100円ショップでセロハンテープをたくさん買います。できあがりは、こんな感じです。
私は、毎朝、この銃で撃たれます。
私が、パソコンに向かっていると離れたところから私に銃を向けて「バーン」と言います。私が、わざと気づかないフリをしていると、一歩づつ近づいて来て、私を撃ちます。それでも私が知らんふりしていると、私の前まで来て怒ります。
利用者「髙橋くん、早くー」
私「何がー?」
利用者「死ぬのー」
私「やだぁー仕事してるの」
利用者「いいから、ほらっ、早く―」
仕方ないので私は、パソコンの前でやられたフリをしてひれ伏します。しかし、いつまでもひれ伏しているとまた怒られます。
利用者「髙橋くーん、早くー」
私「何がー?」
利用者「起きて!」
言われたとおりに体を起こすと、また撃たれます。作業担当の支援者が呼びに来るまでこのドラマは続きます。
また、侍が好きな男性の利用者がいます。彼は、すれ違いざまに手刀で斬りつけてきます。突然「バサッ」と言って手刀をふりおろします。私が「やられた~」と言って、膝からくずれ落ちると「イッヒッヒー」と笑います。そこで、私が彼のスキをついて「バサッ」と切り返すと、彼は、急に真面目な顔でこう言います。
「ありません」
私が「もう、わがままなんだから~」と言うとケタケタと笑いながら、また斬りつけて来ます。
遊んでもらえる幸せ
彼にとって、斬りやすい人とそうでない人がいます。最初に紹介をした、広告で銃を作る彼も同じです。だれかれかまわず、銃を向けるわけではありません。撃たれてもしぶとく生き返る人を選んでいるのかもしれません。毎日、銃で撃たれて、手刀で斬られています。それでも相手にしてもらえるというのは幸せです。
私は、相手にしてもらえるのなら何度、撃たれても、斬られても生き返ります。
連続投稿1000日まで、あと11日。