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月日で家族は変わる

昨日のnoteに、「金曜日になると利用者が、今日はどこのに帰るのか気になり始める」と書きました。昨日のnoteは、実家に帰省することを楽しみにしている利用者の話でした。しかし、中には帰省を嫌がる利用者もいます。ただし時間が経つと人も家族も変わります。今日はそんな利用者と家族の話です。

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人の事業所の中にグループホームがあります。そこでは障がいのある人が支援者と一緒に共同生活を送っています。私の法人のグループホームでは30代から60代の6人が一つ屋根の下で暮らしています。

本人:実家に帰りたくない

その中で、比較的若い世代の男性利用者は、実家に帰るよりグループホームに残った方がいいと言います。仲間同士で騒いでいる方が楽しいようです。しかし、家族としては、帰って来て欲しいと願っています。

以前、金曜日の夕方に利用者から電話がかかってきました。

「髙橋さーん、明日、家に帰ることになっているんだけどさぁ、風邪気味だから帰らなくてもいいかなぁ。母ちゃんに風邪うつすといけないから帰らなくてもいいかなぁ。」

私は「わかった、お大事に。」と言って電話を切りました。するとしばらくして、その利用者のお母さんから電話がかかってきました。

母:帰ってきて欲しい

電話から聞こえるお母さんの声は、怒っているけれど悲しげでした。お母さんは、こんなふうに言いました。

「今、うちの子から電話がかかってきたんだけど、髙橋さんが家に帰らなくていいって言ったから帰らないって言うんですよ、どういうことですか。」
「私はね、明日、あの子が帰って来るっていうから、今日は買い物に行って来たんですよ、それなのに帰って来ないって…。」

お母さんは泣き出してしまいました。私は、「帰らなくていい」とは言っていません。それでもそこまで深く考えずに返事をしていました。「家族」というものを考えていませんでした。反省です。

親子は変わる

しかし、この親子も数年すると関係が変わって来ました。このコロナ禍で帰省を自粛していたとき、この利用者は「母ちゃんのことが心配だから」と毎日、お母さんに電話をしていました。偶然、その電話を聞いてしまいました。

「母ちゃん、変わったことなかった?俺はね、今日の熱は36.3℃だから、元気だから、心配しなくていいから。」

月日が経って親子が変わった

他にも、家族関係に課題があり、グループホームに入居した人がいます。その人は、絶対に帰省をしませんでした。家族が厳しすぎて辛かったようです。支援をあまり必要としない人の中には、家族からの期待に応えられず、疲れてしまう人がいます。その人も、そんな理由で帰省を拒んでいました。

しかし、それから数年後、家族に病気が出たことで実家に帰るようになりました。休みになると実家に帰り、家の手伝いをして夕方にグループホームに戻って来てくれます。

月日が経って自然と親子関係が変わっていきました。介入した方が良い場合、介入しない方が良い場合、その判断は難しいです。私は、利用者本人の可能性を信じること、家族に定期的に電話をして関係を維持しておくこと、そこを心がけています。必要なとき、すぐに介入するためにはそれが必要です。

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