似たもの親子
特別養護老人ホームに入居するお袋に会えなくなって1ヶ月が経ちました。今はどこの老人ホームも面会が禁止されています。仕方がないので、週に一度、食べ物を届けに行っています。お袋は、極端な偏食です。
私は子ども頃、好き嫌いが多くて大変でした。最近は、私自身で改善したことと、社会が柔軟になったこともありほとんど苦労しません。しかし、小学校のころは、給食が食べられずに泣いていました。またそれだけでなく、ときどきお袋は学校に呼ばれて私と一緒に注意されていました。
特に小学校5年と6年の担任の先生は厳しく、給食を残すことを許しませんでした。そもそも私は、その先生とは相性があわなかったので、無理して給食を食べることをせずあえて反抗をしていました。
まず、嫌いな給食のときは、嫌いなものをいろいろな所に隠しました。しかしつめがあまく、しばらくするとそれが腐敗してみつかります。そのたびお袋は学校に呼び出されていました。
また、私がどこかに隠すことを予測した先生は、私の嫌いなものが給食で出ると私の横に張り付いていました。私は、きつく口を閉じてじっとしていました。すると先生が無理やり口を開けて嫌いなものを口に入れました。仕方がないので、私は、口に入れられたものを先生の手の上にもどしました。また、お袋は学校に呼び出されました。
そんなときお袋は「そのときがくれば食べるでしょう」と流してくれていました。
そのお袋が特別養護老人ホームに入居して、極端な偏食だということを初めて知りました。特別養護老人ホームを利用していると、定期的に支援計画の更新がありその都度、家族にも説明がなされます。私のお袋は、意思がはっきりしているので、家族への説明は必要ありません。それでも、その都度、呼び出されます。
そこで必ず、ホームから言われることは、偏食がひどくご飯を食べないときがあり心配だということです。栄養価が偏って健康に悪いから、私からもお袋にそのように伝えてくれと頼まれます。しかし、この私がそんなこと言えません。
私にできることは、お袋が食べたい物をただ届けるだけです。
似たもの親子でした。
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