実家でのできごとには口を出せません
「職員からも厳しく言ってください」、グループホームの支援者が、利用者のご家族から言われて困ることがあります。実家への帰省の最中になにかあるとこのようなお願いが連絡帳に書かれてきます。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。事業所の中にグループホームといい、障がいのある人が支援者と一緒に共同生活をしているところがあります。利用者の多くは、月2回程度、実家に帰省します。しかし、利用者の中にはお盆や年末年始にしか実家に帰省できない人がいます。ご両親が高齢で帰省の受け入れが難しく、兄弟姉妹や親戚の協力がないと帰省できない人たちです。
帰省が嬉しすぎてはめをはずしてしまう利用者
グループホームで生活されている人たちは、帰省を楽しみにしています。その分、帰省明けのグループホームは、利用者の機嫌が悪く、たいへんだという報告があります。それだけ帰省が楽しみだということです。また、そのため利用者の中には、帰省の最中に気持ちが昂りすぎたり、わがままが強く出てしまい、家族が対応に苦慮することがあります。そんなとき、連絡帳に家族からお願いごとが書かれることがあります。その一つが、冒頭の言葉です。
「職員からも厳しく言ってください、これじゃ、もう帰省は難しいです」そんなふうに書かれてしまうこともあります。グループホームでは我慢していることが、実家で爆発したのかもしれません。家族も大変だったし、それによって本人も辛い思いをしたことと思います。
頼まれてもの支援者にはできないこと
家族のお気持ちもわかります。ただし、グループホームの支援者にもできることとできないことがあります。グループホームで起きたことについては、きちんと本人と解決をしなければいけません。しかし、家庭でのことにまでは口を出すことができません。
利用者本人に対して、「家でなんかやったんだって?」と詮索することや、「家で何やったの?」と尋問することはできません。また「もう家に帰れないよ」とおどかすこともできません。本人と支援者の関係が悪くなります。
グループホームの支援者は、夕方から翌朝までの勤務になり、常に利用者が一緒にいます。そのため、家族と深い話をすることができません。家族に「帰省中に何かあったんですか?」と聞いているところを本人に見られたらたいへんです。また、そこで長電話になってしまうと他の利用者への支援に影響します。そのためそういう仕事は、私のところにまわってきます。
まるくおさめる
私は、家族に電話をして帰省のお礼を伝えます。そのときに帰省中の様子をうかがいます。そのあとでグループホームを訪問し、何かのついでにさりげなく利用者本人と話をします。「最近、家に帰ってるの?」「お母さん、元気?」「お母さんとうまくいってる?」利用者によっては、その流れで家でのできごとを話してくれる人もいます。
そんなときは、「そうか、それはたいへんだったね。お母さんは大丈夫だった?今度は、気をつけた方がいいね。」それぐらいで話を終わらせます。
気をつけなければいけないことは、支援者がこの出来事を引きずってしまうことです。利用者本人も家族も忘れているのに支援者が気にしすぎて、次に帰省をするとき、利用者本人に注意をしたりします。それは絶対にしてはいけません。
お盆休みが終わります。グループホームの入居者が帰って来ます。
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