Adler Festo 講演より/態度について考える
09月21日、早稲田大学で開催された「第5回アドラーフェスト」にて行われた向後先生の講演をふりかえり、実際の支援場面と結びつけて考えます。
今回の講演のタイトルは「“態度”をアドラー心理学から捉えてみた」でした。講演では態度技能の定義について説明があったのち、態度のメカニズムについてお話がありました。態度のメカニズムは、外界で起きた事象を感覚として内界(自分の内)に取り込む際、まず自分の信念に基づいて注意をコントロールします。聞こえる音の中から聞きたいことに耳を向け、見える物の中から見たい物を見るということです。この話を聞き、感じたことは自閉症と呼ばれる障害のある人のことです。
自閉症と呼ばれる人は、一度にあらゆる情報が飛び込んできて、それを取捨選択することができず、パニック状態に陥ることがあるといいます。たとえば、ショッピングモールの入り口に立ち、そこで聞こえる音をボイスレコーダーで録音します。それを再生すると騒音にしか聞こえません。そこで響いているすべての音がそのままの音量で聞こえてきます。自閉症と呼ばれる人の中には音がそのように聞こえる人がいます。しかし、障害がなければ、ショッピングモールの入り口に立った時、必要な情報だけを選んで聞き取ることができます。
また、態度のメカニズムでは、自分の信念に反する情報に対して、ネガティブな感情を発動させ、それに体が反応し対処行動に出ると言います。
自閉症と呼ばれる人の中には人混みで突然大きな声を出したり、人混みを駆け抜けたり、耳をふさいで動かなくなることがあります。
態度のメカニズムになぞって考えると、一度に大量の音が自分の体の中に飛び込んで来て、その音をコントロールすることができず、自分の信念に照らし合わせることもできず、感情が爆発して行動に出てしまったと言えます。その行動を支援者は「パニック」と言います。
支援者たちは利用者がパニック状態に陥ると、その場で落ち着かせようとなだめます。しかしそれは支援者にとっての対処行動であり、利用者にとっては、ただただがまんを強いられているだけということになります。そのような聴覚過敏の人用にイヤーマフというヘッドホンがあり常用している人がいます。また同様に視覚過敏の人もいます。そういう人たちはサングラスを常用しています。
昔の支援はすべてにおいて一般に近づけることが正しい支援でした。しかし、科学的にその行動のメカニズムが説明できる現代においては、正しくその障害の仕組みを理解して対応することができます。
態度のメカニズム、この仕組みを意識することは大事なことです。