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本名ですごす一日

毎年1月3日は、母方の祖母の命日に合わせて親戚が顔を合わせます。私にとっては一年で一度だけ、ほぼ一日、本名で過ごす一日になります。この日は、日ごろ、呼ばれていない呼び名で呼ばれます。私は、本名で呼ばれることに慣れていないので、自分の本名に意識を向けていないと、呼ばれても応えることができません。疲れる一日です。

私は、一般的には「髙橋良壽」と書いて「たかはしりょうじゅ」と呼ばれています。しかし、これは芸名です。本名は「たかはしよしひさ」と言います。

今日はまず、親父の墓に行き、それから祖母の墓、そのあと、お袋の兄貴が入居している特別養護老人ホームに行きました。お袋が88歳、兄貴が90歳です。二人とも足が悪く、車いすです。しかし、しゃべりは達者です。ただし、話の内容はいつも同じ話の繰り返しです。

二人の会話は、次の4つです。
 ・アメリカにいる妹の近況
 ・孫(私の娘たち)の成長
 ・病気の話
 ・ホームの食事がまずい
今日も、この4つの話を二人で楽しそうに繰り返していました。しかし、お昼も過ぎてしまったので、3周目の途中で帰って来ました。

この話の合間に急に「よしひさ、最近はどうだ?」と、声をかけられます。私は、気を抜いて他のことを考えていました。あわてて娘が「お父さん呼ばれているよ」と教えてくれました。

同様に一年に一回しか会わないいとこは、私のことを「よっちゃん」とか「よしくん」と呼びます。普段、呼ばれない呼び方で呼ばれるとなんだか恥ずかしいです。

お袋と二人で会話をしているときは、名前を呼びません。またこれで、私の本名は一年間、封印です。

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